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35.OTTとリトルデーモンたち

チームつくばタイトル

第95回箱根駅伝で5区を走った翌日、補助員をしていた筑波大学の相馬崇史くん。
報道記事に、こんなコメントを付けた陸上ファンの方がいる。

6日の「OTT」とは、「オトナのタイムトライアル」というイベントの略称である。

OTTは、走ることが好きな方々が知恵を出し合って始めた、手作りのトラックタイムトライアルレースだ。主催者さんの人脈で、有名な陸上のトップアスリートさんや、大学の陸上部員さんにペースメーカーになってもらって走れるという、プレミアムな体験ができる。アットホームな雰囲気も好評を博し、2013年の発足以来、口コミで年々規模が大きくなってきた。
今や、陸上を応援する企業や本家?の日本陸上競技連盟をも巻き込んだ、一大『草の根』イベントになりつつある。

なぜ、OTTに筑波大学が参加するようになったのか。
そこには、筑波大学OBの津田修也(つだ・しゅうや)さんの存在があった。津田さんは、2013,2014年と日本学生陸上選手権(日本インカレ)3000m障害レースを連覇した「全カレ王者」である。

社会人となった現在は、トレラン(トレイルランニング=舗装路以外の山野等を走る競技)などにもチャレンジし、市民ランナーとして「走る楽しみ」を開拓し続けている。

長距離ランナーとして、箱根駅伝を走れる実力はあった、という。
けれど、陸上競技の長距離種目は駅伝やマラソンだけではない。

トラック競技でも最も「苦しい」と言われる3000m障害。
この世界でのトップを目指し、筑波大学を選んだ津田さんは、「サンショー」を専門としながらも、筑波大学の駅伝競技の火をつないでくださった一人である。

以前も述べたように、弘山監督が筑波大学のコーチに就任した2015年時点では、まだ「長距離走や駅伝競技を真剣に志す学生」の絶対数が少なかった。
箱根駅伝の予選会に出場するには、最低でも10人の「資格記録保有者」を揃えなければならない。他の中長距離種目のスペシャリストたちも協力して、筑波大学の駅伝競技を支えてきた。

OTTスタッフさんと親交があった関係で、もともと津田さんご本人がペースメーカーとしてOTTに参加されていた。
その後、津田さんのご紹介で、2017年から筑波大学の中長距離ブロックの学生さんたちも参加するようになった。
主催者さんのご厚意により、OTT当日にクラウドファンディングの紹介もさせていただいていたとのこと。
この活動をきっかけにクラファンの輪が一気に広がったことは間違いない。

何より素晴らしいのは、OTTへの参加を通して「走る楽しさ」「チャレンジする心」「応援したり、応援されたりする喜び」を、学生さんたちが再認識する場となったことだ。

第95回箱根駅伝の3日後、2019年1月6日に開催されたOTTでは、駅伝主将の池田くん、児玉くん(今年の箱根駅伝の10区ランナー)、杉山くん(同7区ランナー)の3人が参加していた。(相馬くんも参加予定だったらしいが、やはり箱根の疲労は相当あったと思う)

OTTに参加するような市民ランナーさんは、当然、陸上界の事情に詳しい。
箱根駅伝での相馬くん出場を祝い、次はチーム出場だ、筑波大学がんばれ、と声をかけてくださったに違いない。寄付をしてくれている方もいるだろう。
ボランティア参加した学生さんたちの満面の笑顔に、心が温まった。

OTTは、大勢のボランティアスタッフさんたちが「チーム」として機能しているから成り立っている。一人一人が自分の役割を自覚し、よりよいイベントにしようと自主的に関わっているからこそ、「みんなで何かを成し遂げる」達成感を感じられるのだ。
OTTがなぜ楽しいのか、そこから何かを感じてもらえたら。

私は、前回紹介した「暇だから」事件への思わぬ好反応で、少しばかり調子に乗っていた。
またまた玉砕覚悟で、このOTT記事にも思い切りネタを突っ込んだ。

リトルデーモンの意味は…ネットで検索してください(笑)。
(とっても熱心なファン、という意味です♪)

この投稿に、池田くんが「わらった」とコメントしてくれて、私は嬉しくなった。いろいろ期待をかけられて、辛いこともあるだろう。
笑ってもらえてよかった。

相馬くんが箱根駅伝に出場したことで、チーム出場の機運が一気に高まるはず。だがそれは、今よりさらに高い位置に自分達を持ち上げる必要がある、ということだ。
相馬くん一人だけではない。「チーム全員」を。

がんばれ、筑波のリトルデーモンたち。
がんばれ、駅伝主将。

祈りにも似た複雑な思いが、胸を駆け巡った。


>>36.筑波の吟遊詩人


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