見出し画像

内部進学パニック‼︎

私の勤務校に併設されている
日本語学校では
コロナ禍前は
大卒者しか入学できない、という
超選別主義教師がやりやすい環境
だったのですが、

コロナ禍により
ビジネスのために
そんなことが言っていられなくなり
様々な学生が入学するようになりました。


この日本語学校で私は今年度
2年生は2クラス、教えています。

午前と午後を
1クラスずつ。

午後は中国人メインで
その中に優秀な
スリランカ人2名と
ミャンマー人2名、


それに
氷漬け級の親父ギャグをかます
バングラデシュ人が1名いますが
まあそれは置いておいて、
総じて問題のないクラスです。


早々に3名、外部への進学と
1名、就職が決まり、
2名の内部進学も決まりました。


進学、就職に関して
問題のないクラスのため、
担任の先生も授業中に時間をかけて
進学試験の対策指導をする
ということもなく、
日本語に専念できる
優秀なクラスなのですが......。


そんな中でも一番
優秀なミャンマー人のモーさん(仮名)は
内部進学(専門学校)を
希望しています。


モーさんは
お国の最難関大学を卒業し、
洋書で古典文学を読み、
英語と中国語がペッラペラ。

身長170cm以上、
細身の超絶美女で
彼氏は医者、という
ハイスペックな女の子なのですが

※なぜ、この学校に来た???
 そして一体なぜ、この専門学校へ
 行きたい???

日本語ゼロレベルで来日し、
12月のN3に高得点で合格、
N2でさえもう簡単
という超人です。


「モーさんは内部進学、
 合格しましたか?」

ある日、担任の先生に
尋ねると......

「モーさんの試験は
 2月なんですよ」


というお答えが。


「......は?????」


こちらは留学生専門の
学校です。

つまり生活困窮者も
たくさんいるので
卒業ギリギリまで学費を
払い続ける学生が多い
ために、


内部進学のテストも
11月から4回ほどかけて
毎月行っています。


つまり、学費の完済者から
受験資格が得られる
わけです。


優秀な学生というのは
大抵、やりくりにも長けているので
金払いも良く😆

11月初っ端の入試は
優秀な学生が受けるのが
常なのですが......


「えっ?どうして2月ですか?
 ま、まままさかモーさん、
 学費まだ未納とか.....???」


「違うのよう、みおいち先生。
 とっくに完済していますよ」


聞けばモーさん
真面目すぎてしまって、

11月は日本語能力試験(12月)の
勉強があるから見送り、

1月は内部進学のための
勉強をしたいから見送ったそうです。



ななな、なんとまあ。

モーさんほどの優秀者であれば
試験はN2レベルとは言え
受けてニッコリ笑っていれば受かる
簡単でしょうに。


用意周到。
素晴らしいですね。


午後クラスの進学問題は
これだけです。

※問題にさえなっていない。


ところが問題は
午前のクラス。


こちらは
パパ3名、ママ1名の
オトナクラスです。


親をやっている学生がいると
とても良いんですね。

若い学生を自発的に
まとめてくれるし、
勉学にも熱心です。


私もとても大事にしている
可愛いクラスなのですが、

優秀な学生とそうでない学生の差が
勇者ヒンメルとスポンジボブほどの

※どんな比べ方?
※ヒンメルはイケメンですが
 スポンジボブは憎めません。

超個性的クラスです。


11月の内部進学試験。

このクラスは例に漏れず
優秀者が受験し
合格しました。

面接、作文、筆記と
なかなかの難易度で
必死で準備して行きました。


余談ですが

「先生、ダメかも」

と嘆くのは
だいたいが優秀な学生です。



そして
1月の試験。


身長190cm超の
横にもガツンとした
見た目も中国系マフィア、

でも実は
心優しい社長令息が
受験しました。


彼はお姉様の言いつけで
学生をやっており、
つまり自分に意思がないことから
全く勉強せず、

担任が言っても
専任が言っても
エージェントが注意してもダメで

たぶん
こんにちは、と
さようなら、くらいしか
日本語が分かりません😆


普段はスマホの翻訳機能で
会話します😆

ひらがなはかろうじて読めます😆

面接でもまず
質問が分からないだろう、と
思っていたら


「令息(仮名)は不合格でした」

と、担任の先生。

「やっぱり。
 試験がめちゃくちゃでしたか?」

「いえ、それ以前に

 受験票を忘れたんですよ」



......おいコラ。
小学生レベルですか......。





「楊(仮名)は受かりました」

「えっ?楊さんが、どうして???

 ......顔で???」



楊さんも中国と日本に
幾つも家と土地を持っている
超富裕層で
物腰さわやか、


非常に真面目で頭が良さそう

に見える

眼鏡くん
なのですが

全く勉強せず

日本語が全然分かりません😆


面接くらいは見た目で騙せる
何とかなるとして
筆記はまず無理だと思うのですが。


「楊は、お得意のアレでしょう」


あぁ。



楊さんには凄い特技があり

何とテストを
最初から最後まで全て
バレずにカンニングすることが
出来るのです。


100%、他力本願です。


見抜けなかったか。
さすが楊さん、忍者のようだ。

※作文、どうしたんだろう。




「ジョン(仮名)もダメでした」

ジョンさんは
ウズベキスタン人で、
飄々としたタイプの勉強嫌いです😆


ちなみにこのクラスには
ウズベキスタン人が4名。


うち1名は

授業中に
知らない日本人の女の子に
スマホアプリでナンパして
退学になりました😆


「あー。やっぱりテストが?」

この担任の先生は
日本語学校専属で
私がとても尊敬する
物腰柔らかで
20年近くの経験のある
先生なのですが、


このクラスの担任になってから

ギャースギャース
ゴジラのように吠えまくっています。


面白いかわいそうに。

「違います。
 ジョンはなんと!


 遅刻したんですって!」


ギャース‼︎

「前代未聞ですよ!」


ギャース‼︎

やっぱり面白いな、ウズベキスタン人。
担任に迷惑をかけてはいけません。



「マイケル(仮名)もダメでした」


「えっ?マイケルさんが???」



マイケルさんは
ウズベキスタン人の中で最も優秀、
漢字も書けるし
授業もよく聞いています。


誰だ面接官‼︎
一体どうして。


「それがねぇ、

面接の先生に
楯突いたらしくて」



「口が達者なのが
 裏目に出て

 ウズベク節が出ちゃった
 ようですよ」




......アイヨー、サーリー。

※しつこいようですが
 シンハラ語でoh,my moneyです。



そう言われて蘇るあの日。


このクラスでは内部進学の
面接練習も授業に組み込んで
いたのですが、

ある日、マイケルさんの
面接練習をしていたとき。


「失礼しまぁ〜す」

「マイケルさん!ここでお辞儀!」

「先生〜。
 私はムスリム(イスラム教徒)です。

 お辞儀できません」

「ここは日本です!
 いいからお辞儀!」

※ウズベキスタン人に
 ひるんではいけません。

「神さまが見ています〜」


「アッラーはお忙しいですから
 見ていませんよ!
 さっさとお辞儀‼︎‼︎」

「はいは〜い」

「はい、は一回‼︎」


こうやって何とか
面接官役の学生のところまで
連れて来た時、


「はいはい先生、元気〜?」


軽っ‼︎



な、なにそのノリ😱
どこで覚えた???

「丁寧に挨拶する!」

「うい〜っす!」

勝手に座るマイケルさん。

「言われてから座る!」


「足を組まない!」

「面接の先生の紙を
 勝手に取るなぁ
‼︎‼︎


ぜえぜえ。


※ちなみにウズベキスタンは
 識字率が日本より高く
 歴史や政治経済にも
 造詣が深い 
 知的な国家であります。



「あなたはどうして
 この学校を選びましたか?」

と、面接官役の学生の答えに


「ええ〜先生

 そんなの自分で
 考えてくださいよ」




......ゴルァぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎




も、もしかして
アレを本番でやったの?
マイケルさん。


そうしたら私の
せいじゃありませんか!


何てこったい、ヨヨヨ。



ちなみに。

内部進学の試験に
失敗したらどうなるかって?


はい。

合格するまで永遠に再試なんです。


来年度の専門学校の
1年生は
外部入試の倍率が3倍を
ゆうに超えている、と聞きましたが


こんなの入れちゃっていいの?
とは思っても、

そこはオトナの事情でして😆


そして。

担任と担当教師は
合格させるまで
対策し続けるんです。



史上最大に
失敗した学生は

5回試験を受けました。


ええ、
ウズベキスタン人です😆


※ウズベキスタン人は
 知的な国民性......の......はず......。



担任の先生いわく

「みおいち先生😭
 今回、3月まで引っ張るかも
 しれません😭」



ギャース‼︎


もしかして、私たち

春休み取れないの???

ありがとうございます!頂いたサポートは美しい日本語啓蒙活動の原動力(くまか薔薇か落雁)に使うかも?しれません。