婚外恋愛の行方
不倫の魅力って何でしょう? している人が多いからには、独身者同士の恋愛とは違う何かがありそうです。
不倫といえば、前回は不倫小説「東京タワー」(江國 香織) 中の名言「恋はするものじゃなく、落ちるもの」について書きました。
婚活アプリにしても、たいていの人は恋に「落ちたくて」使うのでしょうけれど、アプリは恋を「してください」とお膳立てされたシステム。
結婚「する」という目的に沿った場である以上、恋に「落ちる」のは難しいかもしれません。
その点、結婚後の男女は、そうした「する」現実からは解放されます。初めて「落ちる」ことに身を委ねて、恋を堪能できるのかもしれません。
「落ちる」ならぬ「堕ちる」といえば、スキャンダラスな例外を意味する「ダブル不倫」という言葉があります。でも恋愛は、男女のステータスが均衡なのがデフォルトのはず。「ローマの休日」が不朽の名作なのは、不釣り合いゆえにですから。
「既婚者と独身者」のように均衡が崩れているほうを例外として「シングル不倫」と呼ぶべきだと、私は思うのですが……。その不均衡こそが不倫の魅力であるとは、よく言われますね。「無理だと思うと余計に燃え上がる」って。
恋愛は魂が呼び合うものだから、不均衡で燃えるのはフェイクのようでもありますが……。無理だから燃えているのか、本当に求められているのかがわからないところにも、また燃えてしまうのでしょう。
ところで、日本はキリスト教国でないのに、不倫に厳しいのはどうしてでしょう。有名人の不倫バッシング報道は、アメリカよりシビアな印象で驚きます。私は「姦淫は罪」と聞かされて育ったクリスチャンだから、余計に日本の状況が不思議。
ちょっと前のキャリア女性向け月刊誌のアンケートでは、既婚女性の不倫経験率は40%ほど。正直にアンケートに答える人は全員でなさそうなことを考慮すれば、ざっと2人に1人はしていることなのに……。
おそらく、男尊女卑の社会では不都合な統計なので、あまり広まらないのでしょう。ブレーキをかけるために厳しい報道をしていそう。
ところが、当事者の女性たちは臆することなく恋に邁進しているので、傍観者の私がハラハラするぐらいです。まあ今どきは、男性に一生の経済保証などないので、夫にバレたところで大した問題ではないのかも。
では、そんな既婚女性は、どうして恋に落ちるのでしょうか? ひとつには、心を支えてもらえるからだと思います。
妻はキャリアや人生のかなりの部分を、家庭のために犠牲にしています。でも夫は一般的にそうではありません。お互いの損得勘定がズレているので分かり合えない中、子育ての責任は多くの部分が女性にかかってきます。
この重圧は、誰かの支えなくしては耐えられないもの。例えば、妻の能力・適性や立場を理解している職場周りの男性などが、夫よりもよほど妻の支えの適任者になり得ます。
同様に、愛する男性の支えになりたいという願いも芽生えます。本来なら結婚相手とするべき支え合いを、別の相手としながら年月を過ごすのです。
心の支えというぐらいだから、プラトニック不倫が流行っているのも当然でしょうね。
一方、既婚男性の不倫を観察しているとふた通りあります。イケメン系のモテる男性は遊び。そうでない男性は最後の恋の可能性に賭けています。
また、独身男女が既婚者に惹かれるのは、既婚者の恋と共通で、恋に「落ちて」いると陶酔できるから……に加えて、罪悪感も媚薬なのかも。人のものを取っている意味では、スリルはあるかもしれません。
私は音楽事務所の元同僚の先輩マネージャーTさんから、「何回結婚しても、最初の結婚が1番いいよ」と常々言われていました。Tさんは3回の結婚が全て失敗。そのうちの1人の妻は有名歌手だったので、ちょっと説得力がありました。
ただ、周りを見渡せば、2回目や3回目の結婚で上手くいっている人もいますね。こればかりは人それぞれで、何回目がいいと決めるのは難しそうです。
アメリカでは2人に1人、日本では3人に1人が離婚する時代。アメリカでは、離婚の5年後までに84%の人が再婚しているそうです。
こちらのGottman ご夫妻博士は、多くのカップルのカウンセリングデータから「結婚を長続きさせるノーハウ」を研究されています。旦那さまの元の専門は数学のため、統計から導き出した効果実証済みのノーハウだそうです。(↓続かない関係の4つのサイン)
今後、何回も結婚する人々のデータが集まれば、その場合の成功ノーハウも研究されていくかもしれません。子どもの親権や共同子育て問題は、アメリカでは盛んな議論。私も娘が19歳(親権が問題になる年齢)の時に、次の結婚を見据えた離婚を考えたことがあります。
なので、多くの人が理想の結婚に行きつくために、今後の研究には期待したいところです。
最後に。不倫に「プラトニックかどうか」は、大して関係ないと思います。深い関係であってもなくても、結局恋は心の問題だから。
とはいえ、プラトニックであれば「恋愛と思っていたのに相手は欲情だった」という失望を排除できるのは確かです。
心理学博士・カウンセラーのTaraban氏によれば、男性は好きな女性を抱くことは難しいそうです。それは暴力だから。英語お好きな方、ぜひ聴いてみてください。(24:00あたり〜)
そうだとすれば、プラトニックでも不法行為とされることもあるのは、意外でもありません。
「あの人は私のことをどう思っているのか?」 ――未婚・既婚も男性・女性も関係なく、ふたりの行方を知りたいのが恋というもの。
ただし婚外恋愛の行方は、普通の恋愛よりも濃い霧の中にあるところがまた、容易に抜け出せない所以かもしれません。
(摩天楼の霧はニューヨークのシンボル。NYでの私の最初の共演者、元NYメトロ公式アーティストでギタリストのロンタイランことリュウタロウくんのオリジナル曲。)