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「ビジュアル・シンカーの脳」を読んで(3)



物体視覚思考と空間視覚思考


視界の中でパターンや概念も見えちゃう『空間視覚思考』タイプ。周囲の情報を写真のようにビジュアルに取り込んでしまう『物体視覚思考』タイプ。

この2つのタイプからは次のような特性の人材が生まれやすい、とグランディンは述べています。
〇 空間視覚思考:発明に長けている
〇 物体視覚思考:それを仕組みや実装に落とし込むのが得意

私は素人なので、Visual Thinker(天才タイプ)Visual Thinker(職人タイプ)という風にザックリ捉えています。

前者は異能や天才の宝庫で、後者は細かい部分に気がつく、ひたむきな仕事に向いている人が多い、といったイメージです。

ただいずれのタイプも、天与の才能の副作用なのでしょうか、コミュニケーションが苦手だったり、周りの人と距離を置いたりする傾向があるそうです。

言葉の遅れなども顕著な例の一つです。

視覚思考が強い子どもは、病院に行くと自閉スペクトラム症(発達障害)学習障害と診断されるケースが少なくないようです。

私は、このあたりの研究について詳しいわけではありませんが、視覚思考と自閉スペクトラム症にはいろいろと共通点があるらしいです。

自閉スペクトラム症


少しグランディンの本から離れますが、「自閉スペクトラム症」について感じていることをお話します。

自閉症は英語で "Autism"(オーティズム)と言います。これはギリシャ語の"autos"(自分)から派生した単語だそうです。直訳すれば「自分主義」ってことですね。

「自閉」という和訳は、ちょっとミスリーディングかもしれません。

それと、スペクトラムというのは、虹色の光のようなグラデーションのある帯状を意味します。自閉スペクトラム症にはさまざまな症状があり、そのカバーする範囲は思った以上に広いため、これに当てはまる子どもは増えています。


自閉スペクトラム症の子はふるい落とされる



自閉スペクトラム症には遺伝的な要因もあると言われています。また、小さいうちから定型発達の子と違う言動を見せたりします。

また、物体視覚思考の子は、抽象的な概念の把握が難しいため、小学校高学年以降の数学についていけなくなります。

日本の場合、国家や民族の土台が集団社会なので、「言動がちょっとヘン」とか「言ってることが伝わらない」といったことで、仲間ができない、学校に行かなくなる、集団からはじかれるというように、自閉へのスパイラルが生まれやすい風土と思われます。

サポートは「目の前のできることから」


私たちのワークショップに通う自閉症っぽい子どもはみんな、「学びたい」という気持ちを強く持っています。それがプログラミングだったり、デジタルアートだったり、3Dモデリングだったり。

中には「小学生の算数からやり直したい」と真顔で言う中学生もいます。

その時、どうしたらそれを受け止めてあげられるでしょうか。

「教科書持ってきて」とか「よーし、じゃあワークブック出して」などと言ってしまいそうですね。でも、子どもにはやらなかった理由、できないワケがちゃんとあります。

その欲求を地道に実行に移し継続させてあげるには、一工夫も二工夫も必要です。

せっかくのやる気を大事に育て挫折させないために、その子の特性をきちんと理解する。その子に合ったテーマと教材を選んでカリキュラムを作る。上手くいかなかったら何度でも練り直す。

自閉スペクトラム症の子どもにとって「サポーターとの相性」は一番大事な要素であることは、言うまでもありません。

私たちは、こうした環境作りを毎日試行錯誤しながら進めています。

効果や進展は様々ですが、子どもたちが楽しみに来てくれる、やめずについてきてくれることが、何よりの励みと密かな自信になっています。


注)自閉スペクトラム症の部分は、グランディンとは関係のない個人的な感想です。

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