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読書漫筆:吉田篤弘『なにごともなく、晴天。』
2024年も明けて1週間が経ちました。
遅ればせながら、今年もよろしくお願いいたします。
仕事始めの日、帰りしなに立ち寄った書店で吉野篤弘さんの『なにごともなく、晴天。』(中公文庫)を見つけて、そうだ、今年の1冊目はこれにしよう、と思った。
以前、同じく吉田篤弘さんの『それからはスープのことばかり考えて暮らした』を読んで、その作品に出てくる人たちの人柄の良さ、善性、彼らの過ごす淡々として穏やか
隻手の声が聞こえたら:竹内康浩・朴舜起『謎ときサリンジャー』
サリンジャーの小説について何か、単純な感想でも疑問でも、何かしら書いてみたいとずいぶん前から思っていた。
この記事の最初の下書きを書き始めたのが実は2020年の5月、つまりもう1年半ほど前のことだったのだが、途中で迷子になって手が止まり、そのまますっかり忘れていた。
それからまた今年の春先に『ナイン・ストーリー』を読み返し、この下書きを見返してそろそろ書き上げたほうがいい気がしたので
読"食"漫筆:吉田篤弘「それからはスープのことばかり考えて暮らした」
タイトルにひねりをきかせたように見えるがなんのことはない、堀江敏幸さんと角田光代さんの『私的読食録』の真似事である。
というか正確に言うと、『私的読食録』を読んで、そこに出てくる本を単に自分で味わいたくなったのだ。
吉田篤弘さんの『それからはスープのことばかり考えて暮らした』について書いてみる。
(以下、内容に関する記述を含む)
堀江さんはこの本についての「読食録」の中で、ある人の家
画家の魂:原田マハ『たゆたえども沈まず』
国立国際美術館で開催されている「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」のいちばん最後の展示室で、その花と対面した。
力強い筆致で重ねられた眩いばかりの黄色。背景にすっと引かれた青い線がその花をいっそう鮮やかに見せている気がする。ほとんど黄色一色の絵を見て、燃えているみたいだ、と思ったのはたぶんこれが初めてだ。
フィンセント・ファン・ゴッホの「ひまわり」だった。
美術や世界史の教科書でも何