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『息もできない』 涙とくそったれ

2008年/韓国
原題:Breathless
監督:ヤン・イクチュン


「息もできない」
心にズシリと重たい作品。

幼い頃、父親の暴力によって母と妹を失った借金取りのサンフン。
暴力的な父、弟と暮らす女子高生ヨニ。

社会の底辺で生きる傷を負ったこの二人が偶然出会い、少しづつ心を通わせる。 そして、心を開ける相手がいない二人にとって、お互いの存在は闇に現れたかすかな光となっていく。

しかし、これは束の間の喜び。
負の連鎖は止まることなく、最後は悲しい結末を迎える。

作品中一番「ズシリ」とくるのは、サンフンが父親の自殺未遂を狂乱しながらも助けた夜、ヨニの前ではじめて涙をみせたシーン。

サンフンは体中に溜めていた感情を「涙」で吐き出す。

言葉はない。ただ、ただ、涙。

そしてそれを見守る静かにヨニ。

悲しみが涙と嗚咽となって体外に静かに放出される。


サンフンが日頃から激しい暴力や罵倒を繰り返すのは、それが彼の心叫びだから。

彼はそのやり方でしか、やりきれない感情の扱い方を知らない。
苦しくて悲しくて、でも自分でもどうしようもない。

サンフンが何度も発する「シバラマ~」という言葉の意味は「くそったれ」。

この哀しき心の叫び「シバラマ~」が耳に残る。

目をそむけたくなる負の連鎖を正面から描いた作品。
ほんとうに「息もできない」気持ちになる。

写真:まちかど

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(day25)
rewrite of 2011 

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