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組織変革の"カベ"の乗り越え方

久しぶりのnoteです。
書きたいネタはたくさんあるので、ちょっとずつ書いていきます。

【マッキンゼー緊急提言】デジタル革命の本質:日本のリーダーへのメッセージ

この中で、マッキンゼーのようなコンサル会社には珍しく(失礼)「現場のリアル感が分かる一文」が載っていました。

日本企業におけるデジタル変革の状況を理解いただくために、ある伝統的な日本企業での事例をご紹介したい。この企業では、社長は生え抜きの60代で、幹部も同世代の生え抜きであり、共に会社のこれまでの成長を牽引してきた。業界を取り巻く環境変化を踏まえて、社長は、次の成長にはデジタルに大きく投資を振り向ける必要があると考えていた。
一方で、内部にデジタルをリードできる人材がいなかったため、海外でデジタル変革をリードしてきた実績のある40代の若きリーダーを採用し、社長直轄の新組織を立ち上げた。これで社長は会社が変わると信じていた。しかし実際は何も変わらなかった。新任のデジタルリーダーは、各事業部のトップから理解を得ることが出来なかった。多くの事業部のトップは、口ではデジタルの重要性を唱えつつも、実際は自分のこれまでの戦い方を変えようとせず、外部から来た若いデジタルリーダーの話に聞く耳を持たなかった。また、若いデジタルリーダーは、日本の組織を動かす組織のダイナミクスを理解していなかった。デジタルリーダーは、何らかの成果をあげるべく、まずは事業部が絡まない自分がコントロールできる範囲の取り組みを開始した。社内に適切なデジタル人材がいなかったため、外部のITベンダーに依頼をして、ITベンダーが持つソリューションを次々に導入した。結果は、ソリューションの導入は果たしたものの、ビジネスインパクトは全く生み出すことが出来なかった。社長は今後、どのようにデジタル変革を進めるべきか途方に暮れてしまった。

あー、分かる分かる。分かります(笑)
もうありとあらゆる組織で大なり小なり起こっている出来事です。

多くの事業部のトップは、口ではデジタルの重要性を唱えつつも、実際は自分のこれまでの戦い方を変えようとせず、外部から来た若いデジタルリーダーの話に聞く耳を持たなかった。また、若いデジタルリーダーは、日本の組織を動かす組織のダイナミクスを理解していなかった。

組織変革のカベの本質はココなんですね。メソッドだけでは乗り越えられないカベ。組織変革する時に、必ずこのカベが存在し、乗り越え方が分からない。だからみんな悩んでいます。
(このレポートも後半はメソッドになっているのが残念ですが)

ワークマンやカインズのすごいところ

もう少しリアル感が分かる記事がこちら。

今や快進撃を進めるワークマンさん。
仕掛け人の土屋哲雄さん(うーん、お会いしてみたい)が、組織変革を行われてきたようです。

そして、もう一つこちら。

カインズさん、大好きです(笑)。あの広大なフロア内をアプリを見ながら商品を検索できるとか、とても便利です。これも、組織変革の一つの事例なんじゃないかと。

この2社の記事で、僕が好きなところは、このようなところです。

 外部から入社した役員や役職者に対して、現場は「お手並み拝見」と斜に構えた態度を取りがちです。そこで実質的なCIOである土屋氏は、仕事中にスーツではなくワークマンの服を着るようにしました。更に自宅でもワークマンの服を着て自社商品の改善に努めて、現場からの理解を得ました(もっとも家族からは「その格好で外出するのはやめて」と不評だったようです)。

うわーそうそう。分かります。
変革に入って初日に感じる「お手並み拝見感」。まあ、周りは敵だらけなわけです(笑)

 ジレンマを取り除いて、一歩踏み出して挑戦していくために、一つ気をつけているのは、カタカナ英語を一切使わないようにしています。CRMなら「顧客管理」と言い換えるという感じに。(中略)売り場の人とエンジニアの間の言葉の溝を埋めることで、カルチャーの溝を埋め合わせていく。これは新しい組織を作っていく時にすごく大事なことなんだと思います。

これも大事ですねぇ。「変革をします」と大ナタを振るっても、結局最後は現場が動かなければ変革は進まない。現場目線って、とっても大事です。

”カベ”の正体は、何なのか?

僕がご一緒する企業のすべては「組織課題が存在する。そして、それを変革したいというトップの声」から話が始まります。そして、入ってみるとかなりの複雑骨折している場合がほとんどです(笑)変革を進めるのにあたり”カベ”が存在するんですね。

その”カベ”本質は、冒頭に紹介したマッキンゼーの記事にあるこの点です。

多くの事業部のトップは、口ではデジタルの重要性を唱えつつも、実際は自分のこれまでの戦い方を変えようとせず、外部から来た若いデジタルリーダーの話に聞く耳を持たなかった。また、若いデジタルリーダーは、日本の組織を動かす組織のダイナミクスを理解していなかった。

「口だけで変わりたくないんじゃないか」とか「ゆでガエル」とか「思考停止」だとか、様々なご意見はあろうかと思いますが、僕の経験上「経営者も、現場も、変わりたいとは思っている」のは本心です。

でも「戦い方を変えようとしないのではなく、変え方が分からない」僕はそう思います。

失敗する変革リーダーは「メソッドや他社事例をフル活用してしまう」。でも、現場はそんな正論を言われても、と思うわけですね。メソッドや他社の成功事例を真似ても、「うちの会社のクセ」「うちの会社の流儀」「なくしてはいけないもの」が存在するので、難しいと思っている。そんな一般的なメソッドよりも「うちの会社の現場を動かせる具体的なオリジナルな答えが欲しい」。だから、メソッドありきのコンサルさんは、嫌われるわけです(笑)。

かくいう僕も、以前いた会社で経営者と現場のヒヤリングして拾い上げ、1か月半でまとめて組織課題の打ち手をパワーポイント80枚の資料にまとめて説明したことがあります。

「これって、教科書にしか見えないですよね」

これは、グサッと来ました。
僕なりに、現場を見つつ打ち手を打っていたつもりだったのですが、それでもこのセリフ。この時は、僕はまだ経営者や現場の長をを納得させられるだけのスキルがない。そう痛感してから「この会社流にはどうすればいいか」を徹底的に考えるクセをつけました。

組織変革の”カベ”の乗り越え方

さて、それでは、変革者で入った人は、この変革の”カベ”をどうやって打ち破るのでしょう。僕が経験した具体的な事例でお伝えしたいと思います。

<ケース①>自分のテリトリーを守りたがる部門長
●僕が経験した事例
人事の採用力がなく現場の営業部長が苛立ち、自ら人材エージェントの担当者とやりとりしていました。僕はそこに新任の人事責任者として入りました。その営業部長は明らかに僕の存在を鬱陶しいと思っているのがありあり。「君がいても採用は僕がやるから」と一言。その営業部長は、「自分が使いやすい部下」だけを採用し、優秀な部下を採用せず、その部門ではパワハラが横行していました。

●どうしたか
営業部長の人材エージェント訪問時に「カバン持ち」を3か月間やりました

●ポイント
変革者の存在に対して、反発する社員は必ずいます。でも、こちらも同じ土俵で正論を言っても、さらに心が離れるだけです。3か月間、カバン持ちをしながら道中色々な話をしました。反発する人は、必ず想いを持っています。反発する人を味方につけてしまえばこちらのもの。経営者が苦手にしている反発する人ほど、味方につけるためのコミュニケーション量を多くするべきだと思っています(経営者も助かるし、変革者の信頼にも繋がる)。
この時には、3か月後に「そろそろお任せしようかな」と、営業部長から話があり、無事に採用業務は人事に収まりました。
「鳴かぬなら、鳴くまで待とう作戦」

<ケース②>自分の好みで採用する経営者
●僕が経験した事例
採用要件の議論で「どのような人材を採用するか」を決めるとき、経営者はいつも「社内にいる人材」のレベルで議論が進んでしまい、冒険できず結果経営者の好みで採用が決まっていってしまっていました。いい人材がいても「うちには合わないのではないか」と、ネガティブコメントの嵐でした。
(これでは、同じような社員ばかりになり、知らないうちに組織の同質化が進んでしまい、さらに変革が遅れることになります)

●どうしたか
採用指示が出ていない人材の求人を出しました。
優秀な人材エージェントにお願いして、「経営者はコミットしていないけれど、今の組織ではこういう人材が必要なので、探してくれ」とお願いしました。
候補者が上がってきたとき「求人は出していないのだけれど、面白そうな人材が上がってきたので会ってくれないか?」とお願いします。経営者は渋々会いますが、経営者は、優秀な人材は、必ず評価できます。でもなぜできないのか。それは「見たことがないだけ」だからです。
結果どうなったか。そう、ビズリーチのCMのあれです。

●ポイント
経営者は「見たことのないもの」は評価できません。
成功体験のないものについて「できる」とは言えないのです。経営者は、組織の船長だし、舵取りを任せられている。本音では、怖くてしょうがない経営者もいるはずです。
特に、採用については、これまでの失敗事例が頭をよぎる。小さな企業であればなおさら人のリスクは大きくなるため、冒険できないことになります。
変革者は、経営者に「成功体験を積ませてあげる」ことが必要で、その成功体験を実行し、見せてあげなければなりません。

<ケース③>オーナー社長が強すぎて、社員が顔色を窺い意見を言わない
●僕が経験した事例

オーナー社長が常に現場を気にして、どんな仕事でも口を挟んでしまっていました。そのような中でも社長が「どう思う?」と社員に問いかけをします。でも、そんな口うるさいオーナー社長、社員はみな口を閉ざし「社長の仰せの通り」と、自らの意見を封印してしまっていました。そんな社員に社長はイラつき「うちの社員は自らの意見を言わない」と苦言を呈していました。

●どうしたか
社内横断プロジェクトを立ち上げ、社長をプロジェクトから外しました。
ルールを3つ作り、一つ目は、口うるさい社長の声が、プロジェクトメンバーに届かないようにすること。二つ目は、社長の声が届かない中で、メンバーである社員に自ら決めさせること。三つ目は、変革者自らがプロジェクトオーナーになり、プロジェクトの全責任を負うこと(そのためには、しっかりと社長の意思を握っておかねばなりません)を遂行しました。

●ポイント
経営者は、常にうまくいくか不安なのです。だから、口を出す。
それを解決するために必要なのは、一つ目は、経営者に「うまくいく」という安心感を与えること。プロジェクトを成功させることはもちろんですが、プロジェクト途中でも、経営者が求めている報告をしっかり行い、安心させてあげなければいけません。二つ目は、社員のセーフティネットを作ってあげること。どんな社員でも、自らの失敗や、経営者の意思に反することは怖いので、変革者は、自らでセーフティネットを作ってあげなければなりません。

これは、比較的経営者と社員の距離が近い企業での事例ですが、大企業では、リアル半沢直樹のような社内政治に巻き込まれて変革が進まない事例もあります。それはまた別で書こうと思います。

変革者は「舞台監督」

僕は、組織変革を行う変革者は、「舞台監督」に似ていると思っています。

演目は、決まっています。
でも、その舞台にどの役者を登場させて、どういう台詞を言わせるのか。立ち振る舞いはどのようにして、舞台全体がどういう状態に見えるように演出するのか。細部までしっかりと目論見をして、組み立てていく必要があります。

周囲を見渡し、状況を正しく理解し、それぞれの演者(社員)の役割を整理し、任命する(時として任命することを説得する)。そして、演者のポテンシャルによっては、台本を変えることも厭わない。でも、演目は決まっている。自らでその舞台のイメージを作り、それが実現できるように細部に渡りコーディネイトしていくことになります。

変革者ががやらねばならないことは、

①徹底的にこだわり、打ち手を山ほど打つこと
成功事例を作るためには、山ほど打ち手を打っていかねばなりません。失敗だと思ったら、引っ込める。成功事例ができるまで打ち手を止めないことです。野球で言えば、打率は低くても徹底的に打席に立つことです。ヒットやホームランが出るまで、打席に立ち続けることです。

②現場に降りること
冒頭に紹介したワークマンやカインズの事例でも、変革者は現場に降りることを忘れてはなりません。飲食店であれば、エプロンをしてお店に立ってみる。倉庫業であれば、一緒に倉庫で荷造りをしてみる。常に現場の社員と同じ目線で見ることを忘れないことだと思います。

経営者は、変革者がいても逃げられない

最後に、最も重要なことですが、どんな優秀な変革者を招き入れたとしても、それだけでは組織変革は絶対に起こりません。

冒頭のマッキンゼーのレポートの失敗事例の最大の原因は、経営者が変革者に丸投げし、自らの覚悟をもって変革者と並走しなかったことにあります。

●変革者が来たから、自分の時間が空くと思っている経営者
●着任して課題を伝えたら、自分の仕事は終わったと思っている経営者
●変革者からの報告を聞いて、感想を言うだけの経営者
●変革者がうまくいかない時、他の社員に「だめだな」と愚痴る経営者
●変革者が社内調整で困っている時、何もしない経営者

これは実際にうまくいかなかった事例ですが、そもそも組織変革は、経営者自身の最大級の重要な責務であることを忘れてしまう経営者が残念ながら多いのです。

組織変革を行うのなら、経営者自身の覚悟と、変革者や社員と自らも汗を流して並走する気概は、絶対にもっていて欲しいと思います。

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