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岡山蒜山 伝統工芸がま細工 プロジェクト 〈ZINE編〉 vol.2 (キャンペーン対象記事)

「みんデザ連続投稿キャンペーン」対象記事です。
https://note.com/minnanodesign/n/n6ff109e568be


こんにちは!
レベルフォーデザインでデザイナーをしている山下です。

「岡山の蒜山(ひるぜん)の伝統工芸がま細工プロジェクト」の第2弾です。

<第1弾はこちら!>


前回、がま細工を知ったきっかけ、興味をもった経緯などについてお話しましたが今回はがま細工振興会の方にお会いしに蒜山に行ってきたお話です。

5月。あいにく天気悪くどんより

私たちのためにがま細工振興会の数名の方が集まってくださいました。
今回はZINEを制作するにあたって最初にツアーで行っただけでは分からなかったことも多いので、もっと色々とお話をお聞きしたいと思い伺いました。

振興会顧問 多久間さん

みなさん作業中のなか、代表の多久間さんがたくさんお話してくださいました。

がま細工の歴史

がま細工の歴史は約700年と深く、南北朝時代に兵糧を運ぶための背負うかごが始まりと言われています。その後、雪国には必須の雪靴や蓑(みの)が各家庭でつくられ受け継がれてきました。がまは防水・保温性に優れているので、それが雪国の生活とマッチしていたのですね。

背負いかご

今では様々なサイズの鞄や草履、鍋敷など多種多様な製品が増え、最近では新しくサコッシュ型も加わり、時代の流れに沿って現在も変化し続けています。

また、がま細工は数十年使える、強くしっかりした作り。数年経つと革製品のように色が変わり味が出てきます。私が作業場に伺った時も10年以上前の鞄のお直しが届いていました。

たくさんある商品の一部

そして昔は必須だった雪靴は、つくりが複雑で再現できず今はもうつくれる方がいないみたいです。どんな良い技術も受け継いでいく人がいないと消えていってしまうのはもったいないと思いつつ、現代に必要のないものだと仕方がないのかなとも思ったり…。

現存している雪靴

がま細工制作の流れ

つくる工程は大まかなことは知っていましたが、もっと詳しい一連の流れをまとめた動画を見せて頂きました。

❶梅雨の季節にシナノキを伐採し裁断したあと、樹皮に裂け目を入れて剥がす。
それを川の中に約5ヶ月間浸けて腐らせる。

シナノキ

❷5ヶ月後腐らせたシナノキの繊維を剥がしながら洗い、
甘皮だけの状態にする。それを2〜3ヶ月干す。

❸1本ずつ手刈りしたがまを、川で洗い約4ヶ月干す。
乾燥したら、選別していく。

がまの植栽地にも行かせていただきました!

がまの植栽地

自然に生えたものと、休耕田に植えたものとで数カ所あります。休耕田に植えたものは柔らかく丈が短い。3年くらい経つと材料として適応できるようになります。

がまを洗っているきれいな川

❹乾いたシナノキを綯いて「紐」をつくる

割いたシナノキの繊維を、綯う作業

この綯う作業がとってもむずかしい…。これをマスターするだけで3年程かかるのだとか。

❺「こもげた(台)」と「つちのこ(紐を括っているもの)」を使い、編んでいく

木でできた織るための台が「こもげた」、紐を括っている茶色ものが「つちのこ」

全ての工程を合わせると約9ヶ月かかり、編む作業だけでも1つの鞄に1週間前後かかります。

この動画を見たとき本当に驚き、感銘を受けました。まさに「すごい…」の一言でした。編む作業自体も大変だとは思っていましたが、編むまでの準備段階でこんなに大変な作業があったとは全く知らず、「木の伐採から?!川でがまを洗って干す?!木の繊維を綯って紐つくる!?」と驚きの連続でした。

そしてもう1つの驚きは、元々“それぞれの家庭でつくっていた”ことが今でも受け継がれ、がまの伐採や川で洗う作業など全ての一連の作業を一人ひとりがそれぞれで行なっていることです。ご高齢の方もがま刈りをします(!)。「自分がつくるモノに必要なものは全て自分で準備する」。(もちろん手伝ってもらう場合もありますが)分担作業をイメージしていたので、これにはとても驚きました。そのこともあってか振興会の方は製品を見れば一つひとつ誰がつくったかが分かるそうです…!

実際につくらせてもらう

せっかくなので体験もさせていただきました!
本来は縄を綯うところからがスタートですが、なにせマスターするのに数年かかるので…。この「こもげた」と「つちのこ」に紐とがまをセットしてもらいました。

作業側からの様子。がまを差し込んで、紐と編んでいく。
しっかり紐を引っ張るのでこれが意外と力がいる作業。
実はがまには表裏があり(光沢が違う)その見分けも難しい…

完成!
初心者でもなんとかできた大きめのコースターです。少々ガタついております。

休憩においしいお抹茶をいただきました!


海外のがま細工と、日本のがま細工

作業場にこんなかごもありました。

これは海外でつくられているがま細工。蒜山のものはシンプルでとてもきれいで緻密ですが、海外のものは様々な編み方が組み合わされ見た目にも楽しいものになっています。日本の美しさと海外の美しさはやはり違うんだなと改めて思いました。

がま細工の現状

がま細工の後継者問題は、希望者はいるものの始めてみると途中で挫折してしまうこともあるそうで。まずは現在の後継者の方が一人前になってしっかりと受け継いだあと、後継者を増やしていくことを考えているようです。

1番の問題はがまやシナノキの資源不足が深刻なのではと思います。
がまも休耕田に植えてはいるものの全てがうまく育つわけではなく、しかも最初の2〜3年は使えない。シナノキは植えてから数十年かかるので長い目でみないといけません。今後資源不足が続けば代用品になる可能性もあるそうで、このまま続けて残していくには解決しないといけない問題が多いようです。

最後に

後継者の1人である杉本さんに、なぜがま細工の作り手になろうと思ったのか、決して平坦ではない環境のなかここまで時間と手間がかかる作業を続けてこられている理由は何なのか聞いてみました。

「実は最初はあまり興味なかったけど、あの工程の動画を見たら惹かれたというか。工程が素晴らしいよね。最初は続けられるか不安だったけど、出来上がったものを見るとそれまでの大変さも軽減されるし、大変さがあってこそ不恰好でも達成感があるし、簡単にできる作業は楽しくない気がする。

このお話を聞いて、“なにかをつくる”ことが同じなデザイナーとしては、少し分かるなぁと生意気ながら思いました。がま細工がこんなに大変な作業があった上で出来上がっているとは想像以上でしたが、だからこそきれいで緻密な伝統工芸品のがま細工が出来上がっているのだなと思います。
そして、杉本さんの仰った通り工程が素晴らしい。というか、すごすぎる。
このことを買った人や見た人が知らないのはもったいない、これは伝えていくべき、もっと知ってもらうべき…!と強く思いました。
その動画を多くの人に見てもらいたいですが、それは難しいのでグラフィックデザイナーとして、ZINEで、微力ながら少しでも伝えていき貢献できたらいいなと思います。

「みんなでおしゃべりしながらつくって、いいボケ防止よ!」と笑いながら作業されていたのがとても楽しそうで印象的でした。
みなさまありがとうございました!


さて、私は本格的にZINEの制作に取りかかります。
完成は秋を予定しています。

次回に続きます!

⚫︎この記事を書いた人
山下 めぐみ(やました めぐみ)/  L4D / デザイナー
岡山県出身。企業・地域・教育系など幅広いデザインに携わる。手書きのものが好きで書道やハンドレタリングなど挑戦中。今後地元岡山とつながりたい!
Facebook:https://www.facebook.com/megumi.yamashita25/
Instagram:@l4d_megumi





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