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学会と先生:4月前半の進歩

あっという間に4月半ばだ。2週間前まで雪が降っていたアイオワでも一昨日昨日と25度以上の夏日になり、生ぬるく湿った風はどこか日本の春 (というか初夏) を思い出させる。

学期末まで30日を切り最後の追い込みモードに入っている訳だが、長い旅路の一時点、その時にしか見えないものがある。だから私は今日も書く。いつか今見えているものは見えなくなるから。

*学会

ミネアポリス、アトランタ、と出かけたばかりだが今度はアイオワ州都デモインで開催された中西部社会学会 (MSS) に行ってきた。
ASA (アメリカ社会学会) に行くのはコスパが悪い (遠い (今年の夏はなんとモントリオールである、なぜアメリカ社会学会がカナダ開催なのか誰か教えてほしい) 高いそして相殺できるくらいのtakeawayをとれる状態に自分がまだなっていない) と思ったので、車で1時間半のところで学会があるなら行くしか、というモチベーションだった。

アメリカの学会に参加するのはこれが初めてだったが、前参加した国連会議で本会議と並行して色々なパネルディスカッション / ポスターセッションが各部屋で開催されていたのと同じ空気だなと思った (ただ中西部学会なので、こちらの方がちいちゃくて可愛らしい感じだったが)。学部生も一生懸命発表していたり、コミュニティカレッジで教えている先生方が特にteachingにフォーカスしたテーマで発表をしていたりして、カジュアルでローカルな雰囲気だった。

一つ面白かったのは、目立つ大きな"集団"があり、それはどうやらある同じ大学の人々の"群れ"だったのだが、"対抗"する訳でもないがこっちもこっちで群れようぜ、的にうちの大学の人々 (結構来ていた - 発表したりセッションファシリをやったり、何か受賞している人もいた) も"群れている感じ"を出している感じに、いや別にhostilityとかは一切ないのだけれど、in-group / out-groupってなるほどこういう集団ダイナミクスの中で発生するのか…と思うなどした。

近くでやっているから覗いてみようくらいのモチベーションで飛び込んだ割には思いがけないtakeawayがあり、ideaが半煮え状態の時になんとなく面白そうなセッションに飛び込みプレゼン・トークを聞くとヒントが沢山得られて案外いいものだな、と思ったりした。本屋を徘徊してピッときた本を手にとりセレンディピティに出会うのと同じとは思うが、本よりもっと”ライブ”感がある。

*先生

最近よく話をしにいく先生たちのことだが、実に”コンサル”が上手い。
質問へのyes/noだけならchat GPTでもいい。大局観を持ったアドバイスというのは必ずしも質問にyes/noで答えることではなくて、感想を言うとか、質問によって誘導するとか、そういうことなんだろうと思った。
自分に本当に必要なことをニーズとしてクリアに言語化し求めることができる人は中々いない ー というかその状態なら相談に来る必要が多分無い。
研究というのがexploratory artなのだとしたら、探索的で自由でそれは同時に少しとっ散らかった形になりがちな問いや対話が許される心理的安全性が担保されているかどうかという点は、すごく重要だと思う。

それでいて押し付けがましくない、「…って思うけどね、わからんけど」(意訳) という締めくくりを忘れない物言いが、私もこういう先生になりたい、と思わせるものだった。

頭の中にウォーターフォール / アジャイルという考え方自体はあったが、研究においては気づかないうちに理論を組み立て終わらないと始められないというウォーターフォール的な考え方をしてしまっていた。

まぁデータ収集がとても大変な場合 (質的インタビューなど) はそういう発想になるような気がする。でも今データは最初から手元にあり、分析に突っ込むことはすぐできることだ。こういう研究タイプにおいてはアジャイル的アプローチが効果的なんだ、と新しい視点を知った。同時に、会社でやってた"分析"ってでもこういう感じだったな?というデジャヴもあり、(新しく習った)点と(持っていた)点がつながり、パーっと視界が開ける感覚になった。

もちろん後で振り返れば「なーにを初歩的な統計分析をかじったくらいで何かがわかるような気になってるんだか」となるだろうことはわかっている。でもいきなりその段階に変身できるわけでも無いので、階段の一つ目の踊り場にたどり着いたことを素直に喜びたい。

そう、先生も、テストするのは大事なんだけど、本当に面白い研究っていうのはもうちょっと、パズルみたいな感じでね、と話してくれた。
ただその話の終わりにやっぱり「でも今分析の初段階をデータを整えてできるようになったことはすごい進歩で、you should be proud of」としっかり褒めて締めてくれて、つくづくいい指導をする先生だな…と瞠目した。

数週間前には全然サイエンスとしての形に関心を落とし込めない自分の不甲斐なさに腹が立って研究室でボロボロ泣き出してしまった私だったから、これは実際すごく嬉しい進歩なのだ。

ちなみに先生は慌てることもなくティッシュを差し出しながらウンウンと話を聞いてくれて、静かに色んなアドバイスを話してくれた後、まぁ今日は帰って昼寝するといいよ、と穏やかに言ってくれた。感情コントロールを失ったことなど休職時ぶりだったので自分で自分にびっくりしてしまったのだが同時に先生のあまりに落ち着いた(しかし暖かい)対応ぶりにこれまたびっくりした。多分、泣き出すPh.D. studentが珍しくないんだと思うよ、という意見をその後聞き、あぁ…なるほど…と苦笑した。

***
さっきまで快晴の春の陽気だったのに書いている間に雷が鳴り出したのでつくづくこの地域の天気の不安定さには驚かされるが、サマータイムも始まり日照時間が明らかに増えているのでこのままメンタルを快調に保ちつつ駆け抜けたい。

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