Week 2-1 マインドフルネスと身体(ボディスキャン)
<身体にマインドフルな注意を向ける>
身体に注意が向けられるようになってくると、実際に今経験していることに深く繋がることができるようになります。
また、自分自身の肉体的、精神的状態をリアルタイムで知り、ケアすることができるようになります。
ボディースキャンのプラクティスについて:
身体に注意(attention)を向けていくことについてお話ししたいと思います。
多くの人は、忙しさや何かに夢中になっている時には、身体をどれ程酷使して、体力は有限であるということを忘れてしまいがちです。身体の一部が痛みを発している時でも、それに気づかず、不調感が増していたり、気づくことを恐れて、詳細に感じることをしないことで、心に影響を与えてしまうこともあるのです。
身体へ注意(アテンション)を向け、各部位の感覚や状態を丁寧に観察していくことは、今の自分の体の状態に気づくだけでなく、緊張を解きゆるめ、過敏な感覚を鎮めることに繋がります。
ボディースキャンのエクササイズは、座っていても、寝たままでも行うことができます。このプラクティスによって、リラックスできたり、眠気を感じたりすることもあるかもしれません。もし、あまりにリラックスしすぎたり、眠くなったりした場合は、そのまま眠りに入っても良いでしょう。
そのために、このプラクティスを行う際は、時間や他からの介入を気にしないで良いように、安心・安全な場所を見つけておこなうことをお勧めします。
最初は、緊張が「緩む」ため、極度の疲労感や眠気が出てくることがありますが、毎日、繰り返すことで、最後には、程よい緊張感が出てくるようになるはずです。
次のプラクティスオーディオを聞いてみましょう。
[オーディオ 2-1] ボディスキャン(約15分)
身体にリアルタイムで注意を向けることができるようになると、身体の声をもっと深く受け取ることができるようになってきます。
直感力も身体の深い所からの声から起こってくるのを感じたことがあるでしょうか。
私たちは、自分自身について、自分の環境について、自分の人間関係について、体の声を深く聞くことにより洞察を得ることができるのです。
身体に注意を向けるということは、気分や感情にうまく対応するチャンスを得るということです。では、感情が身体に現れるメカニズムを少しみていきましょう。
<第二の脳>
コロンビア大学医学部の解剖学科長のマイケル・ガーション教授の「第二の脳」という著書によると、「心臓、肺、消化器系、肝臓などの五臓六腑の周辺には神経細胞のネットワークが張り巡らされている」といいます。
これらの臓器は一般に内臓器官として知られていますが、これらの臓器の周辺を走る迷走神経は、身体の情報を収集して前頭前野に送り、前頭前野において、他の脳の領域からの情報と統合されています。
この情報が前頭前野に送られる際に、身体の状態を常に監視している脳内の島皮質(とうひしつ)と呼ばれる領域を通過しています。
誰かが「直感を信じなさい」などと言うのを聞いたことがあるでしょう。
もともと科学的な根拠はなかったと思われますが、実はこの表現は文字通りの意味を表しているといえます。私たちの胴体は身体的、精神的な状況を情報として多く発しているということが科学的に分かってきたのです。
これらの迷走神経の感覚にアウェアネスを注ぐことの効果としてダン・シーゲル博士は次のように概略しています。
迷走神経の感覚は感情や衝動の高まりに対して警告を発する。従って、アウェアネスを高めていくことができれば、反応のパターンの構造を途中で断つことができる。つまり、これまでとは異なる対応を選択する力が備わるということである。
迷走神経に生じる感覚を感じ取るのは右脳が主要な役割を果たしている。感情が身体で感じられると、まず右脳が「認識」する。
左脳がラベル化(=言語化)する。すると前頭葉は脳の辺縁系の統制を助ける働きをする。
マシュー・リバーマン博士の研究によって、このような認識とラベル化の過程で感情が弱まるということが明らかになっている。
身体への「気づき」によって自分の感情を読み取りやすくなると、次のような効果も同時に得られることになる。
それは、他人への共感力が高まるということ。誰かが強い感情(落ち込みや興奮)を経験している時に、相手と同じような気持ちを、自身の過去の経験から想像して感じることができるという力を共感力という。
<参照>
Gershon, M. The Second Brain. New York: Harper Collins, 1998. [Link]
Lieberman, M. D., Inagaki, T. K., Tabibnia, G., & Crockett, M. J. (2011). Subjective responses to emotional stimuli during labeling, reappraisal, and distraction. Emotion, 3, 468-480. [Link]
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