Week 2-7 マインドフルネス教育
<ニューヨークの学校でマインドフルネス>
クウィーンズのある小学校の年度始めの最初の日、ファリーナ先生は、四年生の子供達が床にあぐらを組んで座る静かな教室に鋭い視線を向ける。
デイヴィンダーくんが「目を閉じてください。」という。皆カーペットに円体型に座っている。デイヴィンダーは、小さな銅製のベルを静かに鳴らす。ゴーン。
「マインドフルの呼吸を三回してください。」と彼が言うと、教室に静けさが訪れた。
「自分の内側に行ってきましたか。」このエクササイズが終わると、ファリーナ先生は生徒に尋ねた。「職員室に行くように行ってきましたか。」
ニューヨークの学校のみならず、全米でマインドフルネスやその他の瞑想などの自分の内側を観るプラクティスが広がり始めている。実際の教室でどのような良い効果をもたらすかについての研究結果は希薄だが、進めている教師たちは、生徒の学習への集中や、ストレス対策に効果があるという。
ブルックリンのチャーター校では、一日の始めと終わりにそれぞれ15分が割り当てられ、生徒は瞑想をするか、机に静かに座っていなくてはならない。この中学校の創設者のローゼンベリー先生は「スケジュールの中に組み込まれています。机を綺麗に整理して、手には何も持ちません。そしてベルを鳴らします。」校舎中の10代前、またティーンネイジャーが静かに時を過ごします。
デイビッド・リンチ財団は、瞑想法を大人や子供向けに提供している。CEOのロス氏は、「普通の会社組織で少し前までは『瞑想』などとは口にすることはできなかったが、今では大手銀行、ヘッジファンドやメディア会社の職員向けに瞑想指導を行っている。企業のウェルネスプログラムの一環として我々のサービスを社内で実施しているのだ。二年前には考えられなかったことである。」と言う。
マインドフルネスのプラクティスは、子供達に吸って吐く呼吸に集中することを教える。このプラクティスの学校現場における目標は:自分自身を落ち着け、マインドをクリアにする方法を習慣として学び、そのことにより授業への集中が高まることである。
「このプラクティスを取り入れる教師を増やしている。今の子供達はストレスが非常に大きい。」とファリーナ先生は話す。
アメリカの教育省はマインドフルネスを実施する学校数を把握してはいないが、同省のスポークスマンによると、奨学金団体や、教師の研修などで、現場の教師がトレーニングを受けることを了承している。
ニューヨーク市のあるプログラムでは、マインドフルネスを始め、バランス運動やストレッチなど、教室で行うことのできるプラクティスの指導を市内の8,000校近くの学校に行ってきたという。
多くの場合、学校ではそれぞれのやり方を検討し、実施している。特にマインドフルネスに関しては様々である。
ファリーナ先生が訪れたクウィーンズの第212学校では、マホーニー先生という読み書き担当の先生が二年前から校内の日課としてマインドフルネスのプラクティスを取り入れている。同年、マインドフルスクールの一年コースを受講中であった。
昨年、同校は半地下の物置部屋をマインドフルネスの教室として使うようになった。半照明で虹色のクリスマスツリー用のライトを照明に使い、眩しい蛍光灯を使わなくて済むようにした。
このようにそれぞれの学校の中で様々に育まれていくのだ。「マインドフルネス」は学校によって趣が異なるようだ。
「これは下からの変化のプロセス。マインドフルネスに早くから興味を持つ人たちの手によって育まれている。それぞれの考えでそれぞれのやり方で行なおうとしている。」というのは、ペンシルベニア州立大の発達心理学者のグリーンバーグ教授。
中には、全体で統一したアプローチをとっている学区もある。ニューヨークのママーロネックでは、学区内の六つの学校全てに教育委員会が全面的に支援を行い、教師と保護者向けにマインドフルネスのトレーニングを提供している。そして、生徒の社会的、情動的発達の支援を促進することの取り組みとして推進されている。
ルイスヴィルで来年行われる予定の無作為調査では、半数以上の公立小学校が参加する見通しで、健康とウェルネスカリキュラムの一環としてマインドフルネスを教えることになっている。
ルイスヴィルのハージェンス教育長は、「教室で教師が口にすることといえば、ほぼ反射的に『集中しなさい、なぜ集中できないのですか。』、だが、よく考えてみると、子供たちが集中することができるようになるためのツールを与えてきたでしょうか。」という。
学校現場におけるマインドフルネスの有用性に関する研究は盛んに行われてきている。イギリスでは、オクスフォード大学やロンドン大学で、マインンドフルネスが生徒のメンタルヘルス(=心の健康)を高めるかという研究が実施されている。同大学でも大人への健康への効果を示す研究は挙げられているのだが、学校現場における子供への有効性の有無、また、そのメカニズムに関する研究はまだ少ないといえる。
ヴァージニア大学の教育学の助教授で、「教師のためのマインドフルネス」の著者でもあるジェニング氏は「貧困への効果は期待できないので、万人に効果があるというわけではない。」と話す。
グリーンバーグ教授はマインドフルネスのプラクティスにより生徒に有効性がもたらされるとしても、研究によりそのメカニズムが示されなくてはならないと提言している。
[マインドフルネス教育の実践]
〜Mindfulness Classroom のつくり方〜
STEP1: 教師自身がマインドフルになる
もっとも大切なことは、教える側(教師や親)自身がマインドフルになり、一瞬一瞬を大切にしながら教育に取り組むことです。
そのためには、マインドフルネスの基礎を学び、マインドフルネスの本質を理解した上で、日々の実践(マインドフルネスプラクティス)を行っていくことが必要です。
教える側がマインドフルになることは、自身のメンタル状態を安定させ、教師や親の幸福感や充実感を高める効果があることも研究によって証明されています。
STEP2: 生徒との日々の関わりをマインドフルに
生徒との日々の関わりすべてをマインドフルネス実践の場にすることが可能です。
例えば、子供の行動に対して、すぐに感情的に反応している自分がいる場合、「ありのままを捉え、価値判断せずに受け止める」という接し方を取り入れることによって、マインドフルな関わりが出来るようになります。
ただ、これは一朝一夕にできるものではありません。日々の実践の中で、自分や生徒の状態や変化に「気づき」をえることに喜びを感じながら、関わりを続けていくことです。
マインドフルな関わりが出来れば、それだけで生徒たちは自然に安心して成長していけるのです。
STEP3: 生徒にマインドフルネスの実践方法を伝えていく
生徒が「いまここに心を向け」マインドフルに日々の生活を送ることは、子供たちの心と体の成長にとってとても良い効果があります。
これは、成長だけでなく、集中力を高め学業成績を向上させる効果も期待できます。何より、多感な成長過程を過ごす際の心の安定をえることができます。
そのためには、生徒たち自身マインドフルネスの実践方法を身につける必要があります。
幼児期や小学生のうちから、シンプルなプラクティスを行うことが効果的です。早い時期からマインドフルネスを実践することは、生涯のスキルとなるのです。
生徒たちにマインドフルネスを伝えていく場合、大人とは少し異なったアプローチや工夫が必要になることがあります。
アメリカの公立小学校や将来のリーダーを養成するエリート校などで実践されている、マインドフルネス教育の取り入れ方の例です。
<取り組み例❶>
1日15分のマインドフルタイムを設ける。
担任教師のガイドのもと、マインドフルネス瞑想を行う。
生徒は、床のマットの上に座り、教師のベルの音に耳を澄ませ、
教師の導入に従って呼吸に意識を集中していく。
日々の実践を積み重ね。
時に、グラウンドに出てマインドフルウォーキングや
マインドフルリスニングなどを入れていく。
<取り組み例❷>
週に1時間マインドフルネスの時間を設ける。
約2ヶ月間のプログラムで、マインドフルネスの呼吸法や
身体への意識の向け方を身につけていく。
マインドフルコミュニケーションのプラクティスも行い、
人間関係におけるマインドフルな姿勢を身につけ、
自然と思いやりや共感の心が育まれていく。
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