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デンマークの教育と労働市場の関係。

先日デンマークの友達と話していた時のこと。デンマークの教育や就職の話になり、教育と労働市場の関係とそのリアルな実情がみえてきました。


まず、デンマークは資格社会であるため、大学で専攻したことや職業訓練で得たスキルが仕事に直結します。”仕事に対して人を割り当てる”いわゆるジョブ型の採用形式です(ちなみに日本は"人に対して仕事を割り当てる"メンバーシップ型)

そのため、何を勉強するのか?どの教育を選択するか?がとっても重要!デンマークでは高校から普通教育と職業訓練に分かれるので、その時点でどちらを選んで、その中でも何を専攻するのかが将来を左右するわけです...

近年政府は将来的な労働力不足を懸念し、より多くの若者が職業訓練に進むことを推奨しています。

友人:政府は大学の人文系の学科の定員を減らしてる。卒業しても就ける仕事がないから。せっかく大学を出ても、掃除の仕事に就くしかなくなるかもしれない。政府は学生に職業訓練みたいな、もっと労働力になることを勉強してほしいと思ってる。


また、就職に関しては、日本のような一括新卒採用ではなく、卒業後自分の好きなタイミングで就業します。逆に、卒業後すぐに職に就くよりも、一定期間、自分の教育内容に基づく現場経験やインターンシップをしていた方が就職の際に有利であるそう。これも経験やスキルが採用基準となる、ジョブ型であるがゆえですね。

友人:例えば、法律を専攻していたなら、スーパーでアルバイトした経験よりも、法律事務所の事務でインターンをした経歴がある方が、採用者にとって魅力的に映るの。

一方、現在失業手当受給者の4人に1人が教育を終えた若者というように、教育を終えて初めのキャリアが"失業者"という若者が社会問題に。

デンマークも日本同様少子高齢化が進み、高福祉を実現してきた高い労働力を維持するのが困難になっています。

こうした現状を受け、政府はこれらの教育を終えた若者が早く労働市場へ移行するよう、失業手当の減額と給付期間の削減を決めました。

友人:例えば、医学科に進んだ人は医者になりたいし、医者にしかなりたくない。そのポストが見つかるまで就職しない。だから、デンマークには教育にも職にもつかず、政府の補助金に頼って生活している若者がたくさんいる。
でも、デンマーク政府は、職につながる専門性や資格・スキルを得た者には出来るだけ早く働いて欲しいと思っている。掃除の仕事であれ、スーパーのレジであれ、どんな職でもいいからとりあえず働いて欲しいと思っているみたい。


このように教育と労働が密接に結びついているデンマーク。私は今まで、無償の教育で好きなことを学んで、専門性を身につけ、それを持って好きな仕事に就く。何より自分のタイミングで仕事に就けるのがいいなあと。デンマークのシステムをとても合理的で理想的だと感じていました。

しかし今回友人の話を聞いて、教育が無料な分、社会へ労働力として確実に還元しなければならないという大きな責任を伴うのだな。政府が教育に投資するのは、本当の意味での「人的投資」なのだと。今までの印象がガラリと変わりました。

政府の労働への圧力が高まる中、人々の動きはどう変化していくのか。今後の動向にも注目していきたいです。

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前回取り上げた新政策ビジョンの中にも、若者への教育・労働政策について書かれています。よろしければぜひ🌸


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