#夏の思い出
『夏の終わりに思い出すのは君のこと。』(10)完
花屋「フローリスト スドウ」は、会社から徒歩 5分程の場所にある。
女性オーナーがお店に居て、仕事で花の贈答が必要な際に、社会のいろはをよく分かっていない私の相談に乗ってくれた。
仕事を終えた夜 8時でも、「フローリスト スドウ」は開いている。
お店の柔らかな光に吸い込まれるように、お店の扉を開けた。
「いらっしゃいませ。」と、
迎えてくれたのは、男の人の声だった。
オーナー以外にもう一
『夏の終わりに思い出すのは君のこと。』(9)
あの夏から、10年が経った。
私は大学を卒業して、今年の春、食品会社に就職をした。
まだまだ、先輩に教わることばかりだけれど、同期の翠月と桃華の頑張っている姿に刺激をもらい、何とか出来ることを少しずつ増やしている。
今年の夏は、猛暑だった。
営業のため、外周りをしていると、何度も意識が遠のきそうになる。
それでも、いつもの夏と同じ様に空は青く、蝉も鳴いていて、
私は毎日ガリガリ君を食べていた
『夏の終わりに思い出すのは君のこと。』(2)
ビーチサンダルを脱ぎ、裸足でベンチに体育座りをする。
描くのは、ここから見上げた、クヌギの木のあるの風景。
私は、膝の上にスケッチブックを抱えるように持ち、
ベンチの空いたスペースに、色鉛筆のケースを広げた。
青色の色鉛筆を手に取り、木の輪郭を書き始める。
木だからといって、茶色で書き始める必要はない。
今年の私の夏は、涼しいこの場所。
だから、青色がいい。
私は、クヌギの木の肌のゴツゴツ
『夏の終わりに思い出すのは君のこと。』(1)
8月も終わりに差し掛かった頃、
秋めいた空を見ながら、蝉の声を聞く。
思い出すのは、あの夏のこと。
私が、中学一年生の夏休み。
「夏の風景を描く」という宿題があった。
両親は忙しく働いており、家族でどこかに出掛けるという予定がなかった私は、
家から行ける範囲で、描く対象を探していた。
夏休みに、区民プールへ一緒に行ったクラスメイトは、
祖父母宅へ帰省した際に、絵の宿題を済ませてしまったと言