舟津湊

A picture with a smile - and perhaps, a tea…

舟津湊

A picture with a smile - and perhaps, a tear. 微笑みと、そしておそらく、一粒の涙の物語 (チャップリン 「キッド」の冒頭より引用) ・・・そんな物語が書けるようになりたいと恋焦がれています。

最近の記事

ChatGPT,Gemini,Copilotの創作比較

それぞれ、同じプロンプトを与えたら、どんなストーリーを創るのか比べてみたく、やってみました。その結果の違いは、学習させるデータによって違うのか、それぞれのアルゴリズムによって違うのか・・・ いずれも瞬時に物語を作成し、ストーリー構成として成立していると思いますが、プロンプトがしっかりしていると「心揺さぶられる」物語まで作りこむことができるのか?はわかりません。でも、うっすらと脅威は感じます。 個人的には、Copilotが作成したお話が好きです。 <提示した命令文>身寄りのな

    • ベニクラゲの午睡 27.(最終話)

      夢の中のエピローグ(ぷるぷるの昇降係) 家族4人で江ノ島の水族館に行ったその夜。  寝室に射し込む月明かりを感じて私は目を覚ました。  まずは、ここが現実の世界なのかを確かめる。 間違いなく、私と夫の部屋。広さは8畳ほど。元々私が子供の時から使っている部屋なので、夫婦と子供の4人で寝るのには狭いが、何となくそのまま寝室として使い続けている。  私の父と母の寝室は12畳と余裕の広さだが、エミが居候していた時以来使われずに、家具やベッドもそのままになっている。子供達が少し大きく

      • ベニクラゲの午睡 26.

        エピローグ 1.(再び江ノ島での休日) アタシは一通り自分が勤める江ノ島のアクアリウムを案内し、4人家族と一緒に湘南の海が一望できる『オーシャンデッキ』に出た。水族館から許可をもらっている時間は、まだ30分ほどある。チビちゃんたちはさすがに疲れたようだ。女の子はママに抱っこしてもらっている。 「ねえ、休憩しない? アタシが奢るからさ・・・じゃなくて私がご馳走しますので。」  いけないいけない。この人たちと一緒にいると、つい地の言葉遣いに戻ってしまう。 「エミ、じゃなくてトリ

        • ベニクラゲの午睡 25.

          睦月の出産(二つの産声) 陣痛が激しくなってきて、いよいよ分娩室に案内された。  といっても、ずっと苦痛を感じているわけではない。  強弱のゆらぎがある波のようだ。  その満ち引きの合間に、短いけど、物語の断片のような夢をみた。    ひとつは、両親を失ったときの記憶。落雷で自分の人生が終わるなんて、誰が予想できるだろうか?  雷は、大木や周囲を燃やし尽くし、父、母の遺留品は、焼け焦げた衣類の一部だけだった。両親の遺体も遺骨もない中で葬儀が行われた。私は独りぼっちになった。周

        ChatGPT,Gemini,Copilotの創作比較

          ベニクラゲの午睡 24.

          皐月の食卓(いちごの知らせ) 最近変わったことが起きている。  冷蔵庫にイチゴのパックがいつも5、6箱備えられているのだ。  品種は、とちおとめ、スカイベリー、とちあいか、と栃木県産のものが多い。  「そうね、いろいろ食べてみたけど、今はこの3種類が好みかな?」  スミレは、そう言って、洗ったイチゴを小皿に載せてテーブルに置いてくれた。  そこそこの量のイチゴが冷蔵庫に常備されているにも関わらず、僕がこうやって食後のデザートとして食べる機会は、実はそんなに多くない。  ど

          ベニクラゲの午睡 24.

          ベニクラゲの午睡 23.

          春の宴(祝福された儀式)「大野さん、ご無沙汰しております。」 「大野様、お久しぶりです。そして娘が大変お世話になりました。」  長い黒髪の女性との会話が終わったのを見計らって、中年のご夫婦が大野店長に話しかけてきた。 「まあ! 桑子さん、お久しぶりです。・・・ごめんなさい。ご夫妻には真っ先にお詫びしなければならないことがありましたね。・・・本当にあの時は、騙すような真似をしてしまって・・・いや、ホントに騙しちゃって・・・」 「いえいえ、とんでもない! 確かに、後になって娘から

          ベニクラゲの午睡 23.

          ベニクラゲの午睡 22.

          時、場所不明(待機)あの真っ白な閃光を見てから、何度目かの目覚めだ。 私は、遠い昔、保育所に預けられていた時のことを思い出す。 微かな記憶。 昼ご飯を食べて、所庭で遊んだり、部屋の中で絵本を読んだりしたあと、必ずお昼寝の時間があった。 眠くないのに。まだまだ遊んでいたいのに。 おかまいなしに先生は私達を寝かしつけた。 眠くなかったはずなのに、まだまだ遊んでいたかったはずなのに。 タオルケットの上から、先生に軽くトントンしてもらっていると、いつの間にか寝てしまっていた。 そし

          ベニクラゲの午睡 22.

          ベニクラゲの午睡 21.

          長月、新たな出発(神様のおまけ) 5月からスミレの家のリビングの見せ柱には、細いマジックの線が何本も引かれた。やがて線の間隔は狭くなり、7月24日のスミレの誕生日あたりでは、ほぼ同じ場所に線が何本も引かれている。身長の伸びはほとんど止まったのだ。160㎝。スミレが若返り始める前の身長と同じだ。  そうなると、僕たちの関心は、『柱の傷』から別のものに移る。毎年スミレの誕生日に撮っていた、iPadに保存されていいる家族写真。  二人でソファに座り、16歳から20歳前後の写真を行

          ベニクラゲの午睡 21.

          ベニクラゲの午睡 20.

          文月のセミしぐれ(遅い梅雨明けのお留守番) 僕はこうして毎週スミレの家を訪ね、リビングの柱で彼女の背丈を計っては印をつけ続けている。  なるべく外出して食事をしたり、映画を見たり、『笑かせ屋』のイベントがある時は観に来てもらったりした。  梅雨があけ、彼女が高校卒業時のブレザーの制服が着られるようになったころ(冬服なので少し暑そうだったが)、小さな出来事があった。  スミレから合鍵を渡されていた。自由に使っていいよと言われていたが、鍵をガチャリと開けて風呂上がりの彼女と鉢合

          ベニクラゲの午睡 20.

          ベニクラゲの午睡 19.

          五月の海風(柱の傷のたけくらべ)「はしらーの、きいずは、おととーしーのー・・・」  青い瞳が僕を見上げながら、歌う。 「そんなに上を見ていたら、ちゃんと測れないんだけど。」  スミレはにこりとして、あごを引く。  僕は彼女の亜麻色に輝く柔らかい髪に三角定規をあて、柱に直角にぴたっと合わせる。  北欧風のデザインのリビングルームにオーク材の見せ柱。そこに細いマジックでヨコ線を引く。背を測られているのは、イギリス人の母と日本人の父に持つ女の子。その子が歌っているのは童謡の『背

          ベニクラゲの午睡 19.

          ベニクラゲの午睡 18.

          卯月の涙(エミの旅立ち) 僕は今、スミレの家の洗面所の化粧台を借りてメイクをしている。  あ、別にそういう趣味があるとかじゃなくて、エミに頼まれたのだ。  彼女は明日、この家を出て家族の元に帰る。今夜は最後の夜だ。スミレと一緒に、ささやかながらエミの送別会兼、中学入学祝いをすることになった。  それで主賓のエミからリクエストがいくつかあったのだ。  ケーキはもちろん、またケンタッキーフライドチキンを食べたい。どうやらこの間、僕がお土産に買って帰ったのが『初ケンタ』だったよう

          ベニクラゲの午睡 18.

          ベニクラゲの午睡 17.

          晩桜(スミレの過去とエミの未来)「じゃあ、ちょっと行ってくる。」 「本当に一人でいいの?」  玄関先でスミレが心配そうにエミに問う。 「うん。一人で大丈夫・・・っていうか一人で行きたい。」 「わかったわ。何か困ったことあったら、どんな小さな事でもスマホで連絡するのよ。」  ぱっと見、中学生の女の子に、小学高学年の妹が色々心配してあーだこーだ言っているようにも見える。  スミレと僕は、前庭まで出て手を振り、エミを見送った。 「本当に大丈夫かなあ。」  僕が心配を隠さずこぼ

          ベニクラゲの午睡 17.

          ベニクラゲの午睡 16.

          おぼろ月夜(湘南の海岸にて) スミレ(のご両親)のマイカー、ミニ・コンバーチブルでやや日が傾き始めた国道135号線を走る。  ほぼペーパードライバーの僕だったけど、スミレやエミに買い物や送迎を頼まれ、このイギリス車の運転にも慣れてきた。今日、エミは家で留守番している。  先週、大野店長は『セカンドオピニオン』だと言って、スミレが以前診察を受けた病院とは別の病院に連れて行き、検査を受けさせた。店長がツテを辿って探した鎌倉市にある病院だ。今日は検査結果の報告と診察に僕が付き添う。

          ベニクラゲの午睡 16.

          ベニクラゲの午睡 15.

          桜の季節(春のうららのすみだ水族館)「まずは、手始めに、クラゲゾーンね。」  少し列(なら)んでチケットを購入した後、エミはそう言って通路をぐいぐいと歩き始めた。  手始めに、と言っても水族館は順路というものがあるのではないだろうか。スミレと僕は、来場者の間を縫ってエミについて行く。 「ねえ、スミレ、あなたクラゲって食べたことある?」  『すみだ水族館』行きが決まったのは、エミのそんな一言からだった。 「そうね、家族で中華料理店に言ったとき、キュウリと何かで和えたのを食

          ベニクラゲの午睡 15.

          ベニクラゲの午睡 14.

          春休み(三人兄妹)「そこの君! 止まりなさい!」  これで三度目だ。夕方のタイムセールに間に合うよう、急いでいたのだが・・・  渋々ママチャリを停め、スタンドを立てた。警官が近寄ってくる。 「お兄ちゃん、どうしたの?」  前と後ろのチャイルドシートから同時に声がかかる。 「ああ、お巡りさんがお話したいんだって。」 「またー? お兄ちゃん、何も悪いことしてないのにね。」 「だいじょうぶ。すぐ終わるから。」  男子高校生が、保育所に停めてあった自転車ごと、子供達を誘拐。警官

          ベニクラゲの午睡 14.

          ベニクラゲの午睡 13.

          春爛漫(2つの卒業式)「さて、どんな感じにしましょうか?」  居間に置かれている姿見には、椅子に座ったエミが映し出されている。彼女の上半身は薄いブルーのカット用のクロスに包まれていた。背後では、スミレが女の子のいくぶん赤みがかった髪を優しく手で梳(す)いているのが見える。 「どんなって言われても、わかんない・・・いい感じでお願い。」 「それじゃどうしていいか、わからないわ。漠然とでいいから、言葉にしてみて。」 「うーん・・・じゃあ、少しクールで大人っぽく。」 「わかりまし

          ベニクラゲの午睡 13.