陰キャが初めてライブ行って神に会って人生変わった話

本日のBGM。細川ふみえの「チェリー・ヴァニラ」。古い曲だが、甘くてロマンティックな雰囲気が好き。そして色っぽい。

私は音楽が好きだ。

昔から本当になんでも聴いた。

最初はテレビの音楽番組を録音して繰り返し聴き、次はFMラジオを録音して聴くようになった。やがてウォークマンを買ってCDレンタルの曲を入れるようになる。まだサブスクなんてない時代だった。

初めて好きになったバンドは相対性理論。いわゆる真部サウンドというものの虜になり、タルトタタン、ハナエ、集団行動など色々聴いた。

そしてPerfumeでエレクトロ系の音楽に目覚め、Aira Mitsuki、saori@destinyなどにどハマりしてCDも買った。今でも好きでたまに聴いている。CANDLESも良かったなあ……多分私が今まで挙げたアーティスト、Perfume、相対性理論以外は知らないって人がほとんどじゃないのかな。

ほんとになんでも聴いてたし、今でもなんでも聴いてる。パスピエ、サカナクション、さよならポニーテール、ダフト・パンク、アーバンギャルド、ヤプーズ、フィッシュマンズ、笹川真生、恋竹林、溶けない名前、group_inou、ハルカトミユキ、幽閉サテライト、sasakure.UK、夏目間風、レトロな少女、ラブリーサマーちゃん、口寄せ、ヤミアガリ、Liberal&Cripple……きりがない。まだまだいっぱいある。好きなの多すぎて挙げきれん。

でも一番聴いてるのはART-SCHOOLかな。恋の痛みや儚さを描いた歌詞も美しいし、苦しみ、孤独、曲から感じられるどうにもできない叫びのようなもの、愛着障害を抱えた私のような人間には刺さる歌詞が多い。特にサッドマシーンが好きだ。

とりあえず何聴いていいか分からない時はART-SCHOOLばかり聴いてたから、AppleMusicのトップ100リスナー?とやらに入ったことがある。要するにあんたはこのアーティストをめっちゃ聴いてる人だよってことらしい。

ART-SCHOOLもいつかライブ行きたいと思うくらい大好きなんだけど

ほんとにほんとを言うとね、いっちばん好きなバンドが更にいる。

でもそのバンドは言っても99パーセントの人は知らないようなどマイナーバンドだし、好きすぎて文章に起こすのすら憚られるレベルなのだ。なんだか好きすぎると秘密にしておきたくなってしまうのだ。

もう解散してしまったから、あの伝説のバンドのライブに行けたことは私にとって子々孫々まで語り継ぎたいほど誇らしい体験となっている(私が子孫を残すことはないであろうが)

私は元々引きこもりだったし、一人で遠くの駅まで電車に乗るのも人が多いのも怖くて、ずっと地元に引きこもっていた。それにライブなんか陽キャが行くもんだ、私のような闇の住人が行ったら蒸発して消えてしまう、死ぬ、くらいに思っていた。

しかし、私はこんなに音楽やバンドを好きになったということが今までの人生でないというくらい彼らの音楽に惚れ込んでいたし、何年もずっとその謎のバンドの音楽をもしCDなら擦り切れてるだろうというくらいに聴いていた。歌詞カードもないのに歌のレパートリーに入るレベルになってきていた。

私の真っ暗な人生の中で青春と呼べる音楽があるとしたらあのバンドの曲だ。

これを逃したらもう一生チャンスはないんじゃないかと思い、チケットを取った。そのバンドはとても気まぐれで、何年もライブをやらなかったかと思えば突然やるという告知を出すようなバンドなのだ。

引きこもり&対人恐怖の私は死ぬ思いで都会に出た。今日は祭りか?と田舎根性丸出しの感想を抱くほどの人、人、人の波。

駅で迷ったり、ライブ会場に辿りつけないのではないかと思う瞬間さえあったが、ライブに行くっぽい格好をした人について行ってなんとか時間に間に合った。

どマイナーなバンドだというのに、会場は超満員で、一体どこにこんなにファンがいたんだろうと思った。必死に物販に並んだがほとんど売り切れて新作のCD一枚しか買えなかった。

しかしそんなことより、「あの」何年も憧れ続けたバンドが目の前にいる、ずっと謎の人だった人は本当に実在していて、人間で、生きていて、あの声と音を出すんだ。

自分が生であの音を聴いていて、全身を演奏の振動で震わされている、そのことが信じられなくてずっと夢を見ているようだった。神とか天使に会ったレベルの感覚だった。なんでそんなものすごい体験が、幸運が、私なんかに降り注ぐのか分からず、もうすぐ死ぬのかなとすら思っていた。

人生初ライブで、私はライブの作法とかさっぱり分からなかったが、とりあえず他の人たちのように体を揺らしてみた。ライブは音源を聴くのとは全然違っていて、全身で音を感じられて、振動が骨にも内臓にも、どこにもかしこにも響き渡って、「自分がここにいる」「生きている」という感覚があった。いつも生きている感覚がなく、虚無感を抱いていた私には鮮烈な体験だった。

ライブ後、私は何日か放心したままだった。その後もチャンスに恵まれ、何度かそのバンドのライブに行くことができた。解散ライブにも行けたし、メンバーからサインをもらうこともできた。

私はもう一生分の運を使い果たしたんだろうか?と思った。私の人生において数少ない幸せな思い出だ。解散ライブでは踊り狂いすぎて終わった後吐いたけれど。それもまたひとつの思い出だ。

同じバンドを好きな人と少し話もできた。Twitterのそのバンドのファン垢で繋がった人と現場で会ったのだ。私がコミュ障すぎたのと、踊りすぎて吐き気がすごかったのとであまり交流することはできなかったけれど……

知らない人と好きなこときっかけで関わって話をできたことは感動的な体験だった。

本当にヤバいほどコミュ障で、悲惨な感じではあったが。それでも全体的にその時私は恵まれすぎていた。

もちろんその後もずっと放心状態だった。そのバンドが解散したことについては今でも立ち直れているとは言えない。でも多分ずっと好きなままだと思う。いつか戻って来てくれる日を、希望を捨てずに待っている。

私はあのバンドのおかげで電車で遠出できるようになったし、都会も前ほど怖くなくなった。彼らのおかげなのだ。

私の小さな行動が人生を動かすという体験をしたのは初めてのようなものだった。あの時勇気を出してチケットを取っていなかったら、私は今でも地元から離れるのが怖い遠出恐怖症だったかもしれない。

正直今でも怖くないわけではないけど、怖いながらも知らない土地に行けるようになった。

私にとってあのバンドの思い出やライブは、恋のようなものだったと思う。

感謝している。

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