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【読書】ミステリーしか読まない人にも保坂和志を読んでもらいたい。「ハレルヤ」

あらすじだけ切り抜いたら、よくある、泣ける動物ものみたいだけど違います。
がんになった猫の花ちゃんにリスクのある治療を受けさせようか迷ったら、花ちゃんは「ニャア!」と鳴いた。
「花ちゃんがやるって言ってる!」
と、飼い主の夫婦は治療を決めた。

保坂和志短編集「ハレルヤ」

ペットが死ぬ話だけど、飼い主はずっと深刻になるわけじゃなくて、猫に関連する昔のことを思い出したりどうでもいいことを連想したりする。そのずーっと何かを考えている流れみたいなものが文章になっている感じ…。こういう感じで自分なりの解釈を書いても、なんか小説に試されているような気がする。

これまでに看取った猫たちが仏壇からパワーを送っている。リスクもある治療だったけど、花ちゃんの具合は一時的にでも良くなり、
あのときに「ニャア!」と鳴いたのは本当はこう言っていた、と猫の発言?を修正する。
今の行動が未来を変えるのは当たり前だけど、過去を変えることもできる。
そもそも過去、現在、未来、一直線に並んでいるものか? 
そんなことに話は移る。

谷崎潤一郎について書いたエッセイ「こことよそ」では、急に作者の顔を「三宅裕司に似てる」って何度も言うおばちゃんが出てくるけど別に意味はないのが面白いし、「細雪」を読んでいたころを思い出すうちに、若い日の記憶からべつの記憶に連想ゲーム形式でうつっていき、最近youtubeで聞いているサチモスというバンドがいるが、当時知り合いだった暴走族の尾崎と言う男がそのボーカルに似ている、という話になってしまった。ファミレスとかで会話してたらぐるぐる話が変わって、「最初何の話だっけ?」ってなる、あの感じ。

ぼくは保坂和志を読むと、小説そのものよりも作者に興味がわく。世間で話題になっているいろんな音楽や芸人についてどんな感想を持つんだろう。

こちらの小説の書き方講座みたいな顔をした本が、他の作家でいうエッセイ。
だいぶ昔に読んだけど、みんなが理解できずに否定する抽象画を「色だってきれいじゃん」っていうところが好きで、何度も読み返した。

読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。