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【ゲームレビュー】異文化はおもしろい。と信じてないと作れない「Venba」

「Venba」短編映画のようなゲームでした。南インドからカナダに移住した家族の会話を通じて、言葉の問題で就職がうまくいかないつらさ、広い世界を知る喜び、息子が世界に羽ばたいていく半面で、故郷の忘れていく寂しさ…。
そういう、ちょっとした喜びや困難を体験する。

「移民生活ゲーム」と聞くと興味を持つのは難しいけど「料理パズルゲーム」として出したのが面白いところ。

人生の節目節目に、欠けたレシピとおばあちゃんが作っていた記憶をもとに、家族はインド料理を作る。
大変な人生の合間でもラジオからボーカル入りの陽気な曲を流し、揚げ物の音や食材を切る音も心地よい。
現代的でシリアスなテーマでも、ゲームである以上は問題提起だけではなく、シンプルに気持ちいいところがあるのが嬉しい。

ゲーム好きなら、料理が題材のゲームを見たことある人も多いでしょう。
1.水を沸騰させている間に…
2.食材を切っておいて…
3.パンにはさんで素早くお客さんに提供したら高得点!
そんな感じ。プレイヤーが食べたことあるもの、知っているものをいかに効率よくつくるか。

それが、実在の料理を作ることそのものが面白いと信じてゲームにした判断がすごい。
知らない料理名とボウルに入った水、なじみのない香辛料が並んだテーブル。
とりあえず水にスパイスをいれてみたら
「違う気がする」
って戻される。レシピの図を見ながらトライ&エラーで正解に近づこう。

「異文化は面倒くさいものではない。おもしろいものだ」
と信じていないと、こんなゲーム作れない。

日本に滞在した外国人の本に、肉うどんは肉だが「きつねうどん」はきつねの肉ではない、とマジメに書いてあったのを思い出した。
スタッフにインド系の人がいても、自国の文化を、これは珍しいんだ、面白いんだ、と思えないと作れない。

米をミキサーにかけたり、知らない野菜を切ったりして、できたものは、ちゃんと美味しそうに見える。
このゲームをきっかけに世界が大きく変わるわけじゃないけど、
もしかしたら旅行先で「あ、この料理知ってる!」とか、隣の外国人一家をあやしむんじゃなくて挨拶するようになった、ぐらいの、ささやかなアップデートはあるかもしれない。

ニンテンドースイッチやプレイステーション、XBOXで遊べるが今のところ日本語訳はされていない。
日常会話レベルだから、だいたいの意味はつかめた(と思う)けど、ゲーム中の親子の会話でも、お母さんが、早口の子供の英語が聞き取れず「タミル語で話して」という場面があって、言語と格闘するところでも一家に感情移入してしまった。



読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。