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#これが私の移住生活 case3.南三陸で「家族時間の最適化」 阿部和也&阿部楓子

妻と子どもより一足先に
実家の漁業を継ぐためにUターン

和也:2020年に勤めていた会社を辞めて、家業の牡蠣やわかめの養殖業に従事するために、南三陸に戻ってきました。特に両親から漁業を継いでほしいって言われたことはなかったんですよ。好きなことをやれって言ってくれていたんです。移住前は仙台でサラリーマンをしていて、同じ職場で働いていた妻と結婚し、2人の子どもにも恵まれました。ある時、今後の生き方を考えたときに、もっと自然な生き方がしたいと思って…。そして選んだのが漁師だったんですよね。突然継ぐって言うもんだから、両親はびっくりしてましたが(笑)
ただ、娘が仙台の保育園を卒園する時期が移住を決めた年の1年後だったんです。1年間だけ転園させるより、娘の卒園のタイミングに合わせて移住した方が娘にとっていいんじゃないかと妻と話し合いました。だから、最初は私1人だけで南三陸に来たんです。1年間、私は南三陸で、妻と子どもは仙台で、離れて生活をしていました。月曜日から金曜日は、妻が1人で子育ても家事もしてくれて、週末には南三陸に遊びにきてくれる、もしくは自分が仙台に行くようにして、週に1回は会う、そんな生活をしていましたね。

1年間の漁業修行中の様子は南三陸研修センターの研修映像
【Changing】東日本大震災から10年間の変革」でご覧ください。

離れて過ごした1年は
移住に戸惑っていた子どもの準備期間に

楓子:娘に「南三陸に移住する」と伝えたら、最初は戸惑いがありました。私自身、移住っていうのは勇気がいるなって感じていたんです。だから、夫に遅れて移住するまでの1年間を、準備期間にしようと思ったんです。週末は南三陸に通って、夫と子どもと一緒に過ごして、「家族みんなでこの町に住むんだよ」って声かけしていくことで、徐々に理解していったようでした。夫が先に移住していましたし、毎週通うことで、『まったく知らない場所に行く訳じゃない』っていう安心感が少しずつ生まれていったんじゃないかと思います。私も移住への不安は少なからずあったんですけど、娘が少しずつ受け入れていった様子を見て、ちょっとほっとしましたね。娘は6年間通っていた保育園を卒園できたので、自分なりに気持ちを整理できたんじゃないかなと思いました。
私も引っ越しのために荷物を整理したり、仙台で住んでいたマンションの手続きをしたり、南三陸に来てから息子が通う保育園の手続きをしたり。やることが結構あったので、コツコツと準備をできたのはよかったですね。毎日、子育てや家事、仕事もしながら、引っ越しの準備や手続きをしていたら、わりとあっという間に1年が過ぎていきましたね。

家族で移住した記念に95歳のおばあちゃんと一緒に記念撮影。
まだまだ南三陸について知らないことは多いけど、少しずつ知っていけたらいいですね。

震災後の漁場改革で漁師のワークスタイルに変化が
家族と過ごす時間が増えた

和也:今、私が漁師として働いている戸倉地区は、震災後に漁場改革をおこなったんです。養殖筏の数を以前の1/3に減らしたことで、牡蠣1個あたりに供給される栄養が増え、生育期間を短縮しながらも上質な牡蠣が採れるようになりました。2016年には牡蠣養殖としては初のASC認証を取得するほど、漁場改革は大成功でした。そして、この改革で漁師の労働時間や働く環境が大きく変わったんです。
今、私は朝一に仕事してから家に戻り、子どもたちと朝ご飯を食べて、学校の送り迎えもできて、夕飯もお風呂も一緒に過ごすことができています。移住前は、子どもが起きる前に出社、寝てから帰宅の日々で子育てにほとんど関われなかったんです。私が単身で南三陸に来ていた時だって、妻がワンオペで仕事と両立しながらやってくれていたと思うと、本当に頭が上がらないですね。以前にも増して、妻に感謝するようになりました。移住後も慣れない田舎暮らしの中、仕事も家事も子育ても続けてくれているので、私ができることはこれからもやっていきたいです。

子育て奮闘中のパパとして、南三陸町公式のYoutube、南三陸なうにも出演しました。
当時の子育て点数(評価:妻)は「お風呂上がりのケアは80点、それ以外は100点」でした笑

地方でも好きなことを仕事にできる
そんな背中を子どもに見せたい

楓子:夫が南三陸町に行っている間、私もアロマの企画や製造、販売をする会社に転職しました。移住した今も、仙台や石巻を行き来して、その仕事を続けています。南三陸でも選ばなければ仕事はあるんだろうけど、それが私にはピンとこなくて。田舎に移住するからって、自分のやりたいことや興味のある仕事を辞めるのは違うなって思ったんです。いつか子どもが大きくなって、「南三陸でこういう仕事をしたい!」と思ったときに、ここは地方だから、とか、女性だからとか、環境のせいにして諦めて欲しくないんですよね。私が楽しそうに働いている姿を見せていくことで、「地方でも諦めず、好きなことを仕事にできる環境をつくれる」ということが子供に伝わればいいなと思っています。将来的には今やっている仕事を南三陸でもできるようにしたいなというのが、1つの夢ですね。「楽しく働ける場所づくり」はいつか実現したいと思っています。

町外の会社、株式会社グリーディーで働いています。
夫が家事や子育てをしてくれることで、私も自分がやりたい仕事に力を注げています。

身近な遊び場は・・・やっぱり海!!

和也:学校や保育園に迎えに行った後、公園に行ったり、カエルを探しに行ったり、道に絵を描いてみたり、シーグラス拾ったり。移住してから、子どもと過ごす時間が増えました。夏休みなどの長期休暇は、子どもの暇な時間をプロデュースしてみたり、お手伝いポイント制度をつくったり、創意工夫して過ごしています笑
やっぱり、海に遊びに行くことが多いですね。趣味の釣りを一緒に楽しんだり、SUPに挑戦してみたり、南三陸だから気軽にできることもあるなぁと思っています。娘と2人で泳ぐ練習をしようと海に行った時は、怖がって膝までしか入れなかったのに、友達と海に入ったのをきっかけにびっくりするくらい泳げるようになったことがあって!そういう日々の成長やちょっとした変化を間近で見られるようになったことも嬉しいんです。

牡蠣の浄化槽に海水を入れてプールにして遊ぶことも。
身近にあるものを使って遊ぶっていう工夫が楽しいなって思います。

南三陸で「家族時間の最適化」

和也:移住を考えるようになったのは、長男が産まれたタイミングでした。家族との時間を大切にしたいと思ったんです。だから、毎日家族とゆっくり向き合える時間がある南三陸での生活は、とても充実しています。子どももすっかりこの町に慣れてくれて、楽しそうに小学校や保育所に通う姿や日々の成長を間近で感じられることが嬉しいですね。
楓子:夫と子どもの成長や日々の変化に向き合えていることをありがたく、頼もしく思っています。ただ、夫には家族とちょっと離れてひと息できるコミュニティも必要だと思うんです。私は町外で働いているので、家族以外の人と話す機会があるんですけど、夫はそういう機会が少ないんですよ。だから、夫がオンとオフを切り替えられるコミュニティスペースみたいな場所をいつかこの町に作りたいですね。