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河内長野のある川を見ながら浮かんだ短歌

咳をしても金魚...… 彼女がいつもそんなことを言っていた。彼女は本当に金魚が好きで、小さいころから金魚すくいで手に入れた金魚を飼い始めた。最近では、スイホウガンと呼ばれる顔の横に袋をつけたような珍しい金魚を飼育している。

だけど僕は金魚よりもメダカが好きだ。僕の故郷、河内長野は山に囲まれた場所でとにかく水が奇麗。どこにでも元気にメダカが泳いでいる。僕が大学進学で故郷を離れる前に、市内にある延命寺というお寺でメダカの稚魚を分けてもらったこともあった。今も僕の実家にはメダカがいる。

僕が故郷を離れてから数年が経過したが、今年彼女をはじめて故郷に連れてきた。GWの後半こどもの日のことである。
「へえ、河内長野って歴史のある街ね」僕は彼女が歴史や和歌にも興味があるのを知っていたので、歴史のある所を案内した。河内長野駅から続く高野街道を僕がいろいろ説明しながら歩いていった。

「この先はあまり何もないけど」僕は本当は三日市町駅でこの散歩を終えようとしていた。だが好奇心旺盛な彼女は高野街道を説明した地図にある気になる場所を見つけて、ここに行きたいと言い出す。

「この通行不可って気になる、何があるのかなあ?」僕も知らなかった通行不可の場所。見ると石見川に架かる橋のあたりだと知った。「近くだと思うから行ってみよう。この石見川ってすごくきれいな川なんだ」そういって彼女を石見川近くの通行不可と書かれているスポットまで案内した。

「この川が石見川だ。この川の上流は奈良県の五條市あたりから流れているんだ。でも僕は小さいときに河内長野に住んでいたのに、そっちのほうには行ったことないけどね」そう言って僕は照れ笑い。

彼女は興味深く川の流れを見ていた。「確かにこの川に金魚は泳いでいないだろうね」そう言って眺めている。暫くすると彼女が何かを見つけたらしく「あ、あれ、道が切れている」というのを見つけた。

「お、あれか、地図に書いていた通行不可というのは」僕も初めて知った。高野街道の中にあった通行不可の場所。今は普通に歩いているところとは別に街道があったのだろうか?僕は久しぶりに故郷河内長野に戻ったのに知らないことばかりで驚いた。すると彼女は突然短歌を声に出して詠んだ。

「子どもの日 歩く川先 道がない 高野街道 かつての名残(こどものひ あるくかわさき みちがない こうやかいどう かつてのなごり)

「どう、即興で読んじゃった」そう言って彼女は軽く舌を出した。僕はその彼女の表情を見て、また彼女のことが好きになったようで、彼女の暖かい手を両手で握りしめた。

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今日はいつもとは趣向を変えて、こちら小牧幸助さんのシロクマ文芸部という企画に参加しました。

こちらの本日の記事をモチーフに創作しています。

なおトップの画像は、本日延命寺で行われていた青葉祭の境内で行われていた金魚すくいの模様です。今年も早い時間から大盛況でした。

今日の延命寺

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