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秋桜の 横でだんじり 秋祭り 舞台で演じ 天誅組

秋桜が咲き誇る秋の風景、微妙に濃さの違う複数のピンクに咲く秋の花は彼岸花よりも美しいと思う。いつもならそんな秋桜をじっくり眺めて季節を感じていただけかもしれない。ここは都会から電車で1時間以内にある郊外の田舎といってもよいようなところで、秋祭りを前に頭を垂れた稲が実っているのが見える。「でも、あんなことになるとは」秋桜を眺めていた青年はまた項垂れた。あれはちょうど1週間ほど前のこと。秋祭りの準備のために今年初めて集会所に行った時のことだ。

「今度46年ぶりの俄(にわか)を復活させることにした。確か君は高校で演劇部だったな。よし決まりだ」突然言われた先輩からの言葉。青年のいる町は秋祭りとなれば突然村のようになる。地域のだんじりの集会に集まって秋祭りの田めの練習を行う。いつもならだんじりを曳くだけの役目だったが、今度は違った。
 俄と呼ばれる簡単な劇をだんじりの正面につけられた舞台で演じなければならない。それも神社の神様に奉納するので、神社の拝殿が正面にあるが、その周りには地域の人だけでなく、外部からだんじりを見学するような人たちも集まっているのだ。
「演劇は好きだけど」青年は戸惑った。舞台で演劇をするのは好きで、大学生になった今も、地域の小劇団に属していて神社近くのホールで演劇をすることがある。だが、室内のホールと神社の境内とは大違いだ。

「それも、天誅組って幕末の」青年は歴史を詳しく知らない。あらかじめ台本は用意されていたが、青年は時代物なのでそういう時代の人に演じ切らなければならないと、急遽図書館に行き本を読みながら学ぶことにした。

「違うんだよな、演劇とは」青年は本を読みながらため息をつく。リハーサルを終え、演劇の幕間で始まるのを静かに待つのと、その直前まで地域の人と力いっぱいだんじりを曳く状況、曳き終えてすぐやるのではないが、そこで2人だけで演劇をしろと言われても不思議なものだ。
「まあ、10分程度だし、セリフは知れている。なるようにしかなるまいか」

 青年は図書館の帰り秋桜を見た。時刻は夕暮れが迫ろうとしている。そろそろ集会所に行き、俄の練習をしなければならない。本番は明日に迫っている。乗り気ではないがもうやるしかない。青年はいつもと違う演劇に気合が入った。
「気晴らしに、詠もう」青年は半年ほど前に演じた演劇で短歌を詠むという役をしたことがあった。それからは短歌を詠むのが癖になる。だから今も気晴らしに頭に浮かんだ短歌を詠んでみた。

秋桜の 横でだんじり 秋祭り 舞台で演じ 天誅組
(こすもすの よこでだんじり あきまつり ぶたいでえんじ てんちゅうぐみ)

今日は、こちら小牧幸助さんのシロクマ文芸部という企画に参加しました。

こちらの本日の記事、富田林の話題をモチーフに創作しています。

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