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月の耳 新緑にて 見える影 天邪鬼が 潜む寺より

月の耳 新緑にて 見える影(つきのみみ しんりょくにて みえるかげ)石見川という俳号を持つ川上は、昼間はめっきり暑くなっている中、新緑を見ながら一句詠んだ。
「俳句の先生は不思議な表現をなさいますね」川上の隣にいた加賀田美加は、そう言ってクスリと笑った。
「そんなにおかしいか」「だって、月の耳って変な言葉。私はパンの耳しか知りませんわ」

「ま、たとえというか、この緑の陰に不思議なものが見えたらと思ってね」そう言ってもう一度新緑の森を見る川上。
「そう、そう石見川先生、今日はこの近くでマルシェがあるんです。ご一緒しません」
「マルシェねえ」川上はあまり乗り気ではない。「そういうと思っていました、このマルシェは重要文化財の建物の中で行っているんですよ」

川上はそれを聞いて態度が変わった。重要文化財の建物には興味があるからだ。こうしてふたりは河内長野にある観心寺の敷地内にある重要文化財の建物で行われているマルシェに参加することにした。

「石見川先生、如何でした」「うむ、なかなか興味深かった。文化財の建物もだが、販売されている商品も気になったぞ」美加に言われた川上は上機嫌で、実際にいくつかの商品を購入した。
「ほう、あれは確か天邪鬼だな」川上は帰り際に、重要文化財の建物の門の上に見える人型を見た。

「天邪鬼って確か何かにつけて他人や世間に逆らうような存在ですよね」美加の言葉に川上は静かに頷く。
「あ、先生、さっきの句ですけど」ここで美加は何かをひらめいた。
「下の句を入れて短歌にしてもよいですか」「ああいいよ。何か思いついたのか?」「はい、あの天邪鬼を見て」そう言うと美加は先ほど川上の俳句に下の句を付け加えて短歌にした。

月の耳 新緑にて 見える影 天邪鬼が 潜む寺より(つきのみみ しんりょくにて みえるかげ あまのじゃくが ひそむてらより)

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今日は先週に続き、こちら小牧幸助さんのシロクマ文芸部という企画に参加しました。

こちらの本日の記事をモチーフに創作しています。

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