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吉野の奥地にある和紙工房で1日お手伝いさんになってみた話。

奈良県吉野町の国栖という地域にある「植和紙工房」でお手伝いをしてきました。今回は、この「植和紙工房」とそこでのお手伝い体験についてご紹介します。ちなみに見出しの写真は和紙工房のすぐそばの風景です。

地元の人のお手伝いをすることで無料で滞在できる”TENJIKU”を利用しました。もし地方に行って地元の人々との交流や文化を知ることに興味がある方は、ぜひ利用してみてください。

この記事を読んで、吉野の和紙やTENJIKUに興味を持っていただけたら嬉しいです!

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吉野で和紙づくりを続ける、植和紙工房。

植和紙工房は、奈良県吉野町の国栖という地域にある工房です。
吉野川を目の前に山々の斜面に家々が立ち並ぶ、国栖という地域にある工房さんです。山と川の水なども和紙づくりに大きく関わりがあります。

一説によると大海人皇子の一行が当地に滞在された折に、紙漉きの技術が伝わったとされ、吉野の和紙づくりには、1300年以上の伝統があると言われています。
植和紙工房の創業は江戸時代にまで遡れるそうですが、明確でなく、
少なくとも明治22年頃、2代目から現在の土地で紙漉きをしていたそうです。今は6代目の植浩三さんが代表をされています。

ー白い和紙、塊や茶色い濁点のある和紙

吉野で漉枯れている和紙は3種類。
宇陀紙、美栖紙、漆古紙です。

宇陀紙と美栖紙は掛け軸の材料として、表層の裏に使われます。
材料となる木を煮て柔らかくしたものに残った硬い傷やシミをナイフで切り取っていく作業をすることで、白く滑らかな和紙にします。

木の繊維が綻ばず塊を残すと、和紙でよくみられるこのような凹凸になります。

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和紙と言ったら上記の写真のようなイメージですが、手で木片のシミや塊になっている部分を削る作業をすることで白くし、高級な和紙を作っていきます。

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ー長く使ってもらえるための和紙作り

「和紙と言ったらこういう白い繊維の塊が見えたりするものや濁点のあるものをイメージする人も多いけれど、手作業で素材の木片の汚れや黒い塊を削ることで和紙を白くするんよ。」(植さん)

和紙を長く使ってもらえるように、薬品は使われていません。
漂白剤で白くすることもできますが、そうすると繊維が弱くなってしまうのだそうです。

和紙が長持ちするように、手作業で素材の木片を削ることで、和紙を白く滑らかにしていきます。
これは伝統的な工法で、木を煮て柔らかくしたものを一度白抜きし、ゆっくりゆっくり小刀で削っていきます。
一連の紙すき作業の中で、この作業は3日連続するそうです。

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丁寧和紙づくりについて語りながら、素早く木片の汚れや固まった部分を小刀で削る植さんの姿はまさに職人です。

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このように木材を似て小刀で削っていったものを、さらに煮込み色を落とし、和紙の材料にしていきます。

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ー祖先から続く高い技術を守りながら、時代に合わせる和紙作り

創業以来、楮(こうぞ)を原料とした手漉き和紙、吉野和紙を作られてきました。奈良県吉野地方の伝統工芸品の一つです。掛け軸の裏や化粧用紙などとして使われていました。

時代の移り変わりにより、最近は「宇陀紙」と呼ばれる表装用和紙を主に製造されています。
こちらも、奈良県の伝統工芸品として認定されている和紙です。
昔は床の間に飾り季節に合わせて変えていくものでしたが、今は和室自体が少なくなり、掛け軸を飾る場所や文化もなくなりつつあります。
そして、掛け軸に使われる和紙も衰退しています。

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そのため、植和紙工房は色々な和紙づくりに着手されています。
近年では、宇陀紙が主力商品で、地元吉野のスギ・ヒノキの樹皮を原料とした和紙作りをされています。

また、立体の紙漉にも取り組まれています。
植和紙工房の和紙の素材を使って、照明器具などのインテリアグッズを製作しているアーティストもいます。以下の写真は、和た紙(わたし)というブランドの写真です。(以下の写真は、和た紙(わたし)のインスタグラムより)

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掛け軸の裏に使われる紙の需要は減っていますが、紙すきの技術の向上のためには一番良いため、作り続けられています。

紙漉や選別に、時間がかかり、神経も削る作業なのだからだそうです。
和紙を作る材料の用意も大変ですが、同じ厚さの紙を何キロ単位で作らないとならず、均等に作っていくのが難しいそうです。

機械で漉いてしまうと、一番最初の30枚分と最後の30枚分すく状態を比べると、中の材料の量が違ってきてしまい、厚さが微妙に違ってしまうのです。


ー吉野の旅人を歓迎、お手伝い体験も歓迎


今回は、TENJIKU吉野という無料で宿泊させてもらえるプログラムで訪問させていただきました。
無料宿泊の代わりに、地元の人のお手伝いをするというものです。
実は、植和紙工房さんには、ほぼアポなし突撃をしました。
前日夜、TENJIKUに集まってくださった地元の方に「伝統工芸に興味がある」と言ったら、その場で植さんに電話をしてくれたのです。

いきなりだったにも関わらず、植さんは温かく受け入れてくれました。
伝統的な工法の作業である素材の木片に残る塊やシミを小刀で除去していく作業をお手伝いさせていただきました。
木片が思ったよりも薄く繊維は硬いのに柔軟性があるため、小刀で一部を切り取るのは至難の技でした。

最後には、和紙までいただきました。この日だけでも非常に濃厚な時間を過ごすことができました。
草木染めで仕上げた優しい色味の和紙もあれば、
いろいろな色を混ぜたマーブル模様の和紙もあって色々な和紙を見せていただくことができます。

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和紙の奥深い世界を今後も追ってみたいと思わせてくれる場所でした。
一緒に行った友人は、和紙に魅せられ、いただいたものにロシア語の詩を筆で書きインテリアの飾りにしています。私は、アクセサリーを開発中です。

地方での活動や奈良、吉野に興味のある方には、ぜひTENJIKUという滞在プログラムをお勧めします。そして、吉野の和紙についても知っていただけたら嬉しいです!

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