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ミナベシオリ
2023年5月31日 22:17
海を見ていた人がいた それを通して わたしもずっと海を見ていた 海を見ていた 黄金も真紅も濃紺をもまとった あなたも見ていた この海岸からは 遠くの島しか見えないはずだけれど けれどずうっと 見ていた街の人達は 車でやってきては きれいね と一言残して 街へ帰っていく 何十何百何千と 聞いているうちわたしは海になった あなたに見られている 今日も明日も明後日も あなたに 見られているわたしは
2023年5月30日 22:13
トイレの天窓から君の尻しか見えないある高さのその枠から君の尻しか見えない左の尻が揺れたあとに右は少し驚いたように見えた月が反射している君の尻は 月よりも少しふふトイレの天窓のそばにもうひとつ窓がついておりそこからは見える君の大切な人の喉が痙攣するように動き続けている喉の奥にはふふ満月はわたしの胸には小窓がありそこから皆入っては出ていく映っては消えていく身体を
2023年5月29日 23:18
どうしよう関係はあと三分で終わります!わたしはきみのてをてにすることができません ビールの泡を 口先のビールの泡を大切にする時間をかぶって照れ隠しをしているから太陽が大きく見えた今日の朝わたしたちは誰にも見られずに散歩をしたわたしはきみのあしをてにすることができません魔法使いではない代わりに 御者となろう荒野じみた路地を歩いて スキットル気分でペットボトル 口が歌う朝だ
2023年5月28日 23:51
ひとりきりでいるのが嫌なわけじゃないと思っていたが ひとりきりでいるのが嫌なようだ そう思って 夕暮れが引くのを辿って スーパーへ行く 行路であたる 湯気の数だけ 見たことのない人を感じて ポケットのチョコボールを食べた ひとりきりだったチョコボールをなめた 耳元がくすぐったく感じたひとりきりでいるのが嫌なわけじゃない 値引きの鍋セットを買った ネギを煮ながら自慰をする 気持ちの上でじゅっと泣
2023年5月27日 23:27
あなたの絶叫で終わっている土曜日 とうに終わった某落ち合いどころの営業時間のことを 思ったところで 葉は猛っては落ち続けるし わたしは英子とセックスを続ける 洋菓子店のサンシェードが緩やかに降りて 小声 低い小声は太陽よりも鈍く鋭角 も 叫ばせない 口では塞がずまあ 大味 水に這う蔦の夢を見る わたしたちを縛る精神の血管は 晩酌に浮かべれば様になる どこもそうなのに ここだけだと思ってしまう
2023年5月26日 10:46
見目麗しいだけでよかった 裏地までが研ぎ澄まされた薄さで整っていた 目に見える部分と見えない部分の境目が分からなかった 君だった手を 触れさせてくれた 血が内側に滴る舌が綺麗だった 紛れもなく熟れていた 緑の木々の間を歩く間 見える八重歯を見つめていたことを暴かれて笑われた 季節は重力を失ってバラバラに漂い始める たましいは存在するのだ欅が歌を歌ってからもう数年になるが 果たして来年は夏に雪
2023年5月25日 22:32
涙と百合がホロホロおちる 白に無色がからり重なる 恋に落ちるふりをする 衣をまとって君に抱かれる 図書館の入り口に立つ 傘を並べたカップルは 悟り気味に手をつなぎ始める はじめよう はじまる はじまった はじまっただろう はじめ! はじまりはじまり 端端の恥じらいの花弁は ぼっかりと地面に精神的な穴をほり死んでいく そのひとつひとつが 自分たちにないものを羨望する 安い弁当の包を閉じる音がして、
2023年5月24日 23:24
水仙 水仙 深く深く アーケードに人 深く深く 小波が街まで聞こえるような静けさの中で 水仙 深く 人はの赤い蔦を絡ませて それぞれの世界がにぎやか 水仙は色と数を増して 深く深く 爪裏から鼻頭までもが 不健康で自然な色味 イメージから出たいと願う女の子は 下腹部から現実を飲み込む 水仙 水仙 深く深く運転手も誰もいないバスに乗り そっと塒へと帰りゆく時に 「どうして?」と連呼する 呼び止める
2023年5月23日 23:52
火星に住むならこんな感じか こたつとラグの上で みかんを転がして部屋の明かりを見る わたしの恋は 未だ部屋を出ず からからっ風が通るだけの交差点が見える 交差点に なるはずのところに 二人手をつなぐらしい 手をつなぐらしいこたつの 天板の上で目を覚ました 小動物が空回りの遊具の中ではしゃぐ 心臓がそういうふうに動いている 酸素が薄いような気がしてくる 部屋の壁は数ミリしかなくて 外までは ふれる
2023年5月22日 21:57
歴史があった中で きみが倒壊した 時間が用意した釉薬は 真ん中で滲み出した そういう瞬間だった 笑う目尻が口角と混じり合っている 絵画とはそういうふうにできているのかもしれない きみは 毎日欠かさずに筆を入れてきた 入れる必要がないと誰もが思うところに 目を開いたり 閉じたり その中間だったりを保ちながら やっぱり必要がないと自らも 水鏡 そうやって歴史は崩しながらより強固になっていく きみの尻尾
2023年5月21日 23:10
ふたりで生活をしながら 遠くの山を登る 生活ルートは自然 二手に別れながら伸びていく 片方が目に入れば もう片方は透明な土台 すべりだいみたいな 稜線 撫で下ろす輪郭の内側に 見たことのないものが眠っている 仮面の芽の多面的枝分かれ山が前景に来るとき 夢中になってしまうのだが 途中からは白い峰の奥に更に白い峰があり お茶でも飲みたくなってしまう 同棲は 同じ家に住むというのは 長い死のはじまりで
2023年5月20日 18:39
シャボン玉を飛ばそう 生協の二階に百均ができた 寝間着にカーディガンをはおって向かおう 単位ごとシャボン玉を飛ばそう 今みんな机に向かっている きみはわたしに向かっている だからわたしも きみに向かおう あとはふたりで空を向き 落ちた単位の数 シャボン玉飛ばそう 必死さを覆い隠して笑うより 困り尽くして霧雨の中 目に目をためていよう 溢れる迄左手を尖らせる 口でお菓子を持っていく 耳元で秘密を破
2023年5月19日 10:16
粥を煮る どんなロジックもとけてゆく あなたの粥を煮る 塩をふる 天気の加減をみる 夜の予定をすり合わせる 朝が好きだと思うわたしを 昼のわたしがたしなめるわたしはあなたをなめるあなたはわたしをなでるなめているあなたをなめているわたしをなめているあなたを とか なんとかとかして 粥を煮る 雨宿りだから水気が多い やまない雨がないなんて なんて寂しい世の中か 大きな吹き出しにため息を
2023年5月18日 23:00
白けるときには親の顔 もしくはそれに 近い顔 君の顔は? 萎んで見える朝顔に水をやる昼の 一番高いところから涙が降ってくる わたしの世界の 外側からの涙 殻に包まれたわたしに質感で挨拶をする ぴとぽと と 視線で殻の裏側に走る 光のゆら幕を絡め取ってわたしは君に指を挿入しながら 起きたこの部屋の外には大きなトラックが何台も走っていく 得体のしれないものを運んでいく 常にどこかが揺れている 家ま