ミナベシオリ

詩と小説を書きたくなりまして。だいたい妄言。詩はnoteのマガジンにまとまっています。…

ミナベシオリ

詩と小説を書きたくなりまして。だいたい妄言。詩はnoteのマガジンにまとまっています。ココア共和国2023年3月号投稿傑作集に詩が掲載されました。アイコンイラスト/ノーコピーライトガール

マガジン

  • ミナベ2.0

    半年くらいサボって後また書いてる詩集。基本恋愛しか興味ないです。

  • MNB連続詩集『遠景脱妄症』

    連続投稿詩。今月のテーマは「記憶」「恋」です。遠くを見たら、遠くから見たら、大体そんなものだとわかるものたち。

  • MNB連続詩集『放課後ホーロー』

    毎日投稿する詩集です。月ごとにテーマがあります。今月のテーマは、「恋愛」「過去」「他者」です。

  • MNB連続詩集『さよなら恋愛個人商店』

    毎日投稿の刺繍です。月ごとにテーマがあります。今月のテーマは「他者理解」「水」「自覚」です。

  • MNB連続詩集『加熱される生活者』

    マガジン第二弾です。2023/03末まで更新します。テーマは「具体性」「学生」

記事一覧

掌編小説「感情布」

それはまず、第一に布だった。 頭が白い気がする。膝を縮めると、膝裏の皺の部分に柔らかい感触があった。 (ここで言う柔らかさには棘が少しあって、決して滑らかな布面を…

8

もっと昔、医療も支援も充実していない中で少しずつ弱っていくような病を患った人、それを看る人はどれだけ心細かっただろうか。今もそういう境遇にある人はいるかも知れない。この秋は大きめの病を罹患しているので(そしてまだ病名も不明だ)、そういう人々の人生を思っている。

ミナベシオリ
2週間前
4

詩「けっかん かん」

けっかん けっかん けつ かん けっか かん かん けっかん けっかん かん かん けっか けっか けっかん けっかん けっかん けっか けつか けっかん けっ けっかん?…

ミナベシオリ
3週間前
4

詩「うきわの話」

世界の悲しみの総量と 次の日の総雨量は等価だ なぜ六月に泣く人が多いのか 神様もわからず五月に泣いている オレンジ色の曇天の日 ばあちゃんの声が降ってくる 通りかか…

ミナベシオリ
2か月前
5

詩「ハンバーグ美味しい」

ハンバーグ美味しい 焦げた雨の中でも フライドポテト美味しい 溺れた涙の中でも 麻婆豆腐美味しい 傷口が発酵する中でも ざるそば美味しい 飲みすぎた記憶がカサカサに…

ミナベシオリ
3か月前
2

詩「今でも校舎は」

風に甘えることなく呼吸 へっふはっふはふっふふ 隣町のあの子は古風所作 スッススススッスサスッ アスファルトは今日も素 足タッタタッタタタッタ 風吹く間がほしくて両手…

ミナベシオリ
4か月前
8

詩「まちのなか」

夜風に耳が燃えていく 後ろの街まで燃えていく 月 月 エモいか 知らないが 絵本に水着で飛び込む夜は やたらと眩しい明かり行き交う 沢山の唇が咲く街 木を手繰り寄せよ…

ミナベシオリ
5か月前
8

詩「思想史:春」

ナツメグを振る右手を思い出す石段 笑顔だった 振る右手 胸元を 遠い昔のことじゃあなかった ハンバーグ 肉 彼のことを 無責任な 白い糸 魁の肉塊 生意気な言葉ばかり…

ミナベシオリ
5か月前
7

詩「卵朝」

割れている卵がすべて 語っているような気がした朝のことです その前の夜をつたって夕方にたどり着くと ふわり 眼前の風に似た匂いが 記憶 落ち葉 その類 頬杖 榊 …

ミナベシオリ
6か月前
14

詩「いつもこんにちは」

ぼくはまたいつか 触れたこともないカンカン帽を 都会の外れの古着屋で 手に取りながら思うのだ ぼくはまたいつか ぼくはまたいつか 帽子の手触りと街は こぞって春を鳴ら…

ミナベシオリ
6か月前
16

もう少ししたらまた書けるよ

ミナベシオリ
7か月前
4

詩「夕暮れは十五年後に見直す」

夕べに許された例がない だから朝は涙に濡れている コーヒーの湯気はもう出口がない この部屋には空中も文字だらけだ 窓を開けている ひとつ 毛布に包まりながら 下流の砂…

ミナベシオリ
8か月前
7

詩「角待ち街唄」

夕べに音を聞いたんだ あれはストリート ミュージシャンの居場所で その日は誰もいなかったのに あの角では確かに草木が揺れた 街中の言葉が流れ込むようだった 丸い耳が…

ミナベシオリ
9か月前
12

詩「ラテラル・デイ」

今日わたしが死ななかったなら 明日はスタバにラテ飲みにいこう 死ぬ予定があるの 特に ないよ 雪が降り続くだけ そうやって親指と 薬指で話していた十二月は 静かな知ら…

ミナベシオリ
9か月前
6

詩「そうだねえ 冬」

滅びたのは ぼく 丁寧に編み込まれた布片 のこされたもの そこらじゅうの窓辺では だらしなく煙る水滴が ワイパーによって薙ぎ払われていく ぼくのTシャツみたいだ 擬音が…

ミナベシオリ
9か月前
5

詩「水槽は実に丁寧に清掃されている」

水槽は実に丁寧に清掃されている 呼吸を続けるわたしは 手の先から水になっていく すう と ぱら と 水槽は居心地が良かった 蛍光灯の明かりがわたしを 幾重にも折り重な…

ミナベシオリ
9か月前
8
掌編小説「感情布」

掌編小説「感情布」

それはまず、第一に布だった。
頭が白い気がする。膝を縮めると、膝裏の皺の部分に柔らかい感触があった。
(ここで言う柔らかさには棘が少しあって、決して滑らかな布面を感じているわけではなかった。)

ベルが鳴り響く。
わたしを呼ぶものではない。止めることができた。昨日はできなかった。彼はいつこれを鳴らしたのだろうか。

ホテル滞在が長くなってくると、自然とこういったことには慣れてくるものだが、このホテ

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もっと昔、医療も支援も充実していない中で少しずつ弱っていくような病を患った人、それを看る人はどれだけ心細かっただろうか。今もそういう境遇にある人はいるかも知れない。この秋は大きめの病を罹患しているので(そしてまだ病名も不明だ)、そういう人々の人生を思っている。

詩「けっかん かん」

詩「けっかん かん」

けっかん けっかん
けつ かん
けっか
かん かん
けっかん
けっかん かん
かん
けっか けっか
けっかん けっかん
けっかん けっか
けつか
けっかん
けっ
けっかん?!
けっか けっかん
け け け
けっけっけ
けっかんかんかん
けけけけ け
けっ
 けつ
  けっ
   けつ
けっかんけつ


けっか

赤い空

詩「うきわの話」

詩「うきわの話」

世界の悲しみの総量と
次の日の総雨量は等価だ
なぜ六月に泣く人が多いのか
神様もわからず五月に泣いている

オレンジ色の曇天の日
ばあちゃんの声が降ってくる
通りかかった隣町で
じいちゃんが痴話喧嘩をしている

かなかなかなかな
悲しみは
しみしみしましま
下世話なはなし

セミが出てきた七日間
僕が生きてきた倦怠感
玄関先に這い寄る影に
灰 夜 灰 夜 死体と過ごす

盆過ぎも
冬の始まりも

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詩「ハンバーグ美味しい」

詩「ハンバーグ美味しい」

ハンバーグ美味しい
焦げた雨の中でも

フライドポテト美味しい
溺れた涙の中でも

麻婆豆腐美味しい
傷口が発酵する中でも

ざるそば美味しい
飲みすぎた記憶がカサカサになっても

トマトパスタ美味しい
戸惑った記憶を混ぜて

あなたの人差し指をかじる今
時はたまにとても美味しい

あなたの小指を眺める今
未来もとても美味しい

詩「今でも校舎は」

詩「今でも校舎は」

風に甘えることなく呼吸
へっふはっふはふっふふ
隣町のあの子は古風所作
スッススススッスサスッ
アスファルトは今日も素
足タッタタッタタタッタ
風吹く間がほしくて両手
間隙を切り詰めて産毛と
私達は紛れもなく高一の
かはキンコあっさふるわ
興味のない苗字透かし重
僕らの朗読は続いてく?
タタタタタ、タタタタ、
お前らに読める俺等はさ
全ヘッドラインの嘘の横

詩「まちのなか」

詩「まちのなか」

夜風に耳が燃えていく
後ろの街まで燃えていく
月 月 エモいか
知らないが
絵本に水着で飛び込む夜は
やたらと眩しい明かり行き交う
沢山の唇が咲く街
木を手繰り寄せよう
この胸に一番近いあの木を
夢にはいつも見るまちのなか
わたしの手には空気でできた
あなたの手
未来の残り香
この耳燃え続ける限り
どこまでも現実の毛を抜いて
その奥にある確かな嘘が鼓膜を
揺らせ

この夜に
燃える耳
ただ歩くだけ

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詩「思想史:春」

詩「思想史:春」

ナツメグを振る右手を思い出す石段
笑顔だった
振る右手 胸元を
遠い昔のことじゃあなかった
ハンバーグ 肉 彼のことを
無責任な 白い糸
魁の肉塊
生意気な言葉ばかりを
思い出しついでに消していく
3歳児の世話をしている夜明けに
ギザギザの少しの歯に
当てる空想は具体的
やはり肉
ふ ふふ ふふふふー ふふ
鼻息に気がついておさめるのだ

ふん う
うううーうう う
重ねるのだ 泣き顔ばかり

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詩「卵朝」

詩「卵朝」

割れている卵がすべて
語っているような気がした朝のことです

その前の夜をつたって夕方にたどり着くと
ふわり 眼前の風に似た匂いが

記憶 落ち葉 その類
頬杖 榊 引いた籤

さざなみの中で君が言います
「ここは井戸なの とても深い」

季節の緑は濃いはずだった
忘れられてる窓際の熊

切符いらずの旅の終わりに
指をちぎってふたりで食べた

物語は喪失から始まり
失ってはいけない物語がある

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詩「いつもこんにちは」

詩「いつもこんにちは」

ぼくはまたいつか
触れたこともないカンカン帽を
都会の外れの古着屋で
手に取りながら思うのだ
ぼくはまたいつか

ぼくはまたいつか
帽子の手触りと街は
こぞって春を鳴らしている
喉にマックシェイクの質感
ぼくはまた いつか

ぼくはまたいつか
タワーの展望台で遠
くを見る親子を見ている時間にも
茎の間に生える蔓が絡まり
ぼくは またいつか

ぼくはまたいつか
旅人のような出で立ちの
東京都生まれ東

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もう少ししたらまた書けるよ

詩「夕暮れは十五年後に見直す」

詩「夕暮れは十五年後に見直す」

夕べに許された例がない
だから朝は涙に濡れている
コーヒーの湯気はもう出口がない
この部屋には空中も文字だらけだ
窓を開けている

ひとつ
毛布に包まりながら
下流の砂みたいに報告を
もう少しで息はとまる
だから聞いてくれないだろうか

ぼかす癖
氷菓子
季節外れの何もかもを
あなただからとうけとめて
冷蔵庫から卵を取り出す

わたしは
かたくなったスクランブルエッグ
弾みきらない会話
予想された

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詩「角待ち街唄」

詩「角待ち街唄」

夕べに音を聞いたんだ
あれはストリート
ミュージシャンの居場所で
その日は誰もいなかったのに
あの角では確かに草木が揺れた

街中の言葉が流れ込むようだった
丸い耳が少し毛羽立った
雑踏にはまるで
情緒を解さない人間ばかり
バスがそれを吸い込んでいき

音は 明滅した
その中には確かにてのひらを
叩く音がした
小さな男の子の手だ
それを握るお母さんの目のとじひらき

フラッシュシーンが流れ落ちてく

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詩「ラテラル・デイ」

詩「ラテラル・デイ」

今日わたしが死ななかったなら
明日はスタバにラテ飲みにいこう
死ぬ予定があるの
特に ないよ
雪が降り続くだけ

そうやって親指と
薬指で話していた十二月は
静かな知らせを待って
少し表情を変えた
いや 変えた気がした

部屋のテレビからは
関係のない笑い声が
漏れ続けているため
密かな行為の連続は
能天気な雰囲気の中

わたしが死ななかった明日
能天気なラテは
煙り続けた
私が死んでしまった明日

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詩「そうだねえ 冬」

詩「そうだねえ 冬」

滅びたのは ぼく
丁寧に編み込まれた布片
のこされたもの
そこらじゅうの窓辺では
だらしなく煙る水滴が
ワイパーによって薙ぎ払われていく
ぼくのTシャツみたいだ
擬音が入る余地もなく
きみの乳房を吸わせてほしい
指先から指先までで
ぼくらが歩いた日々をはかる
割れそうな爪が朝を呼ぶ
泣きそうなきみに生を還すが
毎朝起きれば大海が
まばたきの旅に花を添えた
そうだねえ 冬
心凍りつく 別れであった

詩「水槽は実に丁寧に清掃されている」

詩「水槽は実に丁寧に清掃されている」

水槽は実に丁寧に清掃されている
呼吸を続けるわたしは
手の先から水になっていく
すう と
ぱら と

水槽は居心地が良かった
蛍光灯の明かりがわたしを
幾重にも折り重なり
通り越していった
端っこだけ手を繋いだ

しかしこの部屋には音がない
完ぺきな音響設備が
整っているというのに
(やれ歌ってやろうか)
そそのかされずとも 声は

また清掃される
また清掃される
わたしの番はここまでだ
唾でもは

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