アイドルグループは10年で「強制解散」ってことにしませんか?

その昔、アイドルグループというのはどんなに絶大な人気を誇っても10年までには解散していた。

女性グループの代表格で言えばキャンディーズが5年(1973−1978)、ピンク・レディーも5年(1976-1981)。Winkは8年(1988-1996)と比較的長かった。おニャン子クラブに至っては2年(1985-1987)であったが、今でも語り継がれるほどの伝説のアイドルグループである。

一方男性グループで言うとずうとるびが8年(1974-1982)、男闘呼組
も8年(1985-1993)、あの伝説的人気だった光GENJIですら同じく8年(1987-1995)だ。
ジャニーズ事務所の礎となった「ジャニーズ」は5年で(1962-1967)で、そのバックダンサーだったフォーリーブスは結成で数えると11年(1967-1978)だが、CDデビューは結成から1年後なので実質は10年である。
チェッカーズは12年(1980-1992)だが、アイドルグループと呼ぶかはお任せしたい。

そんな10年の壁を突破した(実質的な)アイドルの元祖はやはり少年隊だろう。
少年隊は1981年結成、1985年CDデビューだが、現在も解散には至っていない(事務所こそバラバラになったが)。
しかし結成から9年経った1990年の15thシングル「封印LOVE」まではオリコン5位以内だった彼らも16thシングル以降は10位以下となって、明らかにアイドルとしての人気は落ちていることは伺える。

ただ少年隊の存在により、ジャニーズファンの中に「10年超えても解散しなくてもいいんだ」という空気が立ち込めたのは間違いない。
その後デビューするSMAP(1988−2016)、TOKIO(1990-)、KinKi Kids(1993-)、V6(1995-2021)、嵐(1999-(現在休止中))、はいずれも根強いファンに支えられ20年以上の活動をすることとなる。

一方女性アイドルグループの潮目が変わったのはハロプロの存在が大きい。
オーディション番組によって誕生したモーニング娘。(1997-)は最初は5人組だったが「オーディションと卒業でメンバーを入れ替える」というスポーツチームのようなやり方で長期政権を作った。

時代錯誤と言われるかもしれないが、やはり男性アイドルファンというものはより若い異性に目がいってしまうもので、それがすなわち女性アイドルの弱点でもあった。
そこをリカバーするこのやり方を確立したのはアイドル界のエポックメイキングであった。

そこを参考にしたかしてないかは不明だが、過去に伝説的アイドルグループであるおニャン子クラブを作った秋元康も反撃に出る。
AKB48(2006-)はオーディションによるメンバーの入れ替えに加え「地域密着」「握手券」「総選挙」という新たな仕掛けをプラスすることで、ハロプロの勢いを止める時代の寵児となった。
さらに自らで公式ライバルである乃木坂46(2011-)を誕生させ、アイドル同士を競わせる、さらには交換留学という形でメンバーをトレードするなど2つのグループでシナジーを生みながら、現在3つまで増えた坂道グループは現在でも高い人気を誇っている。

これらの活躍もあってか、ジャニーズや秋元康プロデュース以外でも、Negicco(2003-)やももいろクローバーZ(2008-)、でんぱ組.inc(2008-)等、男性でもBOYS AND MEN(2010-)、超特急(2011-)等10年以上の活動をするグループは枚挙にいとまがない状態となった。

しかしながら、活動を長期化することが必ずしもいい効果ばかりを生んでくれるわけではない。

男性アイドルの例を挙げよう。
昭和の感覚なら「そこまでメンバー抜けたら解散した方が…」と思われてもおかしくないKAT-TUN(6人中3人・2001-)、関ジャニ∞(8人中3人・2002-)、NEWS(9人中6人・2003-)も解散という踏ん切りがつかずグループという形態を留めている。

嵐だってそれぞれメンバーに才能があり、やりたいことがある中で一人が活動休止となれば、解散だって頭にチラついたに違いない。


結果(これはメンバーが抜けていないグループにも言えることだが)、俳優や文筆家、パラエティの司会などソロでの活動が増え、そこまでグループでいる価値がない仕事が増えていることも多々ある。



語弊を恐れずに言えばこれらのグループは結局「縛り付けられた」のである。まるで「他のグループも長くやってるからウチらも続けよう」という呪いのようでさえある。

対して女性アイドルはやはり人気の凋落が顕著になってくることだろうか。
前述のモーニング娘。も初動(発売第1週)売上10万枚を結成から5年が経つ2002年を境に切り始め、 更にデビューから続けていた「1年に1枚はシングルでオリコン1位を獲る」という記録も2003年に途絶えてしまい、しばらく苦難の日々が続いた。
その後2006年「歩いてる」、2009年に「しょうがない夢追い人」がそれぞれ1位を取ったものの初動売上は相変わらず4〜5万枚程度だった。

もはやこれまでかと思われた矢先、EDM路線へのシフトが功を奏し2012年「One・Two・Three」で10年振りの初動10万枚を達成し、2013年「Help me!!」以降はほとんどが初動10万枚、オリコン1位を8回、それ以外も3位以内をキープしている。

とはいえ、前人たちの「ゆる面白いバラエティアイドル路線」とは全く違い、フォーメーションダンスや楽曲の格好良さを見せつける「パフォーマンスアイドル」への変貌を遂げたこのグループはEDM路線転向以前とイコールなのかと言われると甚だ疑問が残る。
事実、2014年以降はグループ名の後ろに西暦がつく(現在はモーニング娘。’21)ようになり、実質的には再始動感が強くなっている。解散をせずに飽きさせないための必死の努力で掴んだ苦肉の策と言えるだろう。

そして凋落といえばやはりAKB48だろう。
最初は苦戦したものの、ファンの熱狂的なサポートと握手券商法を従え15thシングル「RIVER」以降オリコン1位を取り続け、歌番組などを通じてお茶の間に楽曲を流し続けた彼女たちだったが、皮肉にもその活動がオリコンランキング自体の価値を下げてしまった。
みんなAKB48のシングルが出る週は「どうせ1位なんでしょ」という諦めと、「また1位取ってるわ」という既視感が、世間の「オリコン無意味説」の論調を高めていってしまった。

世間一般の認知度を図る物差しとして筆者はカラオケランキングをよく使う。単純に「歌える人が多い曲=よく知られている曲」と言えるからだ。
AKB48の楽曲でカラオケ年間TOP30に入ったのは2017年の「365日の紙飛行機」が最後になる(16位)。
この曲のリリース自体は2015年で、結成10年目のリリース曲ということになる。それ以降はオリコン1位こそ獲るものの、カラオケで歌われるほど世間一般に浸透するような楽曲をリリース出来ていないのは確かだ。

そしてそんな10年の節目を今年迎えたのが乃木坂46である。
筆者は坂道グループが好きなので俯瞰の目で見ることができないのだが、世間的に大きなスクープとしては2018年のデビュー時のセンターであった生駒里奈の卒業であろうか。
その年末には中心メンバーであった西野七瀬が抜け、ファンじゃない方からすればここら辺でついて来れなくなった人も多いのではないか。
その後2020年には白石麻衣も抜け、世間では所謂「知ってるメンバーほとんどいねえな」状態になっているかと思われる。

櫻坂(旧欅坂)、日向坂と坂道シリーズを派生させた結果、バラエティの枠を食い合いしていることも一つの要因だろう。

そして最近の話題で言えばスキャンダルだろうか。
当然昔からアイドルのスキャンダラスな恋愛報道はたくさんあった。しかし「握手券商法」により縮まったファンとアイドルの距離感のせいで、そのバッシングの大きさと「忘れられなさ」は異常なまでに肥大した。

それに伴って「アイドルだって恋愛ぐらいするだろ」という意見がも同時に出てくるが、距離を近づけて金を巻き上げるいわゆる「リアコ」戦略を取っている以上、バッシングが起きるのは仕方がないと思う(「恋愛をするな」という話とは別次元の問題が生まれているので)。

とは言えルックスのいいうら若き乙女を近辺の男が放っておくわけがないというのは百も承知だ。

そこで、だ。
「アイドルは10年で解散にしてはどうだろうか」

今まで挙げた問題点は「未来永劫続けてくれるよね!」というファンと「いつかは辞めるかもしれないしな…」というアイドルとの意識の相違で生まれている。
なかなか解散できないグループは「ファンが応援してくれる以上グループの体裁を整えないと」という意識から来るプレッシャーだろう。

恋愛スキャンダルもそうである。
当然応援している「推し」がスキャンダルを起こせば、その人が推しを続けるか辞めるかの2択をせまられるだけだろう。
しかしグループが続いていく以上、個人の問題はグループの問題となる。結果、推し担当でもない人が「こいつがいるとグループが汚れる」という理由でバッシングが肥大化することとなる。
メンバーだって「いつまで続くかわからない活動」に区切りをつけることができず、内緒で恋愛をするようになってしまうのではないだろうか。

何事もダラダラやってもいい効果は生まれないものである。
「長くても10年」という意識で活動を始め、その間は問題も起こさずプロを全うする。
10年という区切りがあればその間に解散後どういう活動がしたいかを考えやすいのではないか。
ファンもその10年間は責任を持って応援し続けられるし、それが終わればアイドルファン自体を辞めたっていいし、別のグループのファンになったっていい。

何より前述の伝説のアイドルたちを見てほしい。
10年だろうが2年だろうが、伝説になれれば後世まで語り続けられる。
パッと輝いて綺麗に散る、この儚さを最近のアイドルからは感じられない。

どこかで「長く続けること=素晴らしいこと」という価値観をリセットしないと、本当の意味での伝説のアイドルは生まれないんだろうなと、強くそう思う。

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