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【読書記録】たゆたえども沈まず
2020年12月27日の読書記録
今年の始め、ゴッホ展へ行った。
ゴッホの絵を見たとき綺麗どうこうよりもっともっと言葉にならない、圧倒されるような衝撃があった。
雲も風も木も川も夜空も動いていて、麦畑からはいまにもざあっと音が聞こえてきそうな
凍結した静止画の美とは正反対の、生きてる絵。
心を奪われ作品の前で立ちすくんで
ゴッホについてもっとちゃんと知りたくなり
3冊の本を読むことにしました。
まず1冊目
ゴッホ研究者、圀府寺司さんの
「ファンゴッホ 日本の夢に懸けた画家」
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ゴッホにまつわる書籍はたくさんあってとても悩んだけど、圀府寺さんの本は幼少期から最期までが正確に記されていて、カラーで絵の解説もあってわかりやすく楽しく読める、
まさに「ゴッホ入門編」という本。
手始めにこれを選んだのは正解でした。
國府寺さんの本でゴッホ知識を入れたところでさらに読んだのが、ずっと気になっていた
原田マハさんの「たゆたえども沈まず」
率直に、素晴らしい小説だった…
圀府寺さんと違う点はやっぱりフィクションということ。あくまでもこちらは真実ではなく小説。
だけど「真実」ではあまり描かれない登場人物の心理描写がとても細かくドラマチックに描かれているので2冊読むとより楽しめる気がします。
「ゴッホのあしあと」は原田マハさんがゴッホゆかりの地をめぐりながらゴッホを考察する「たゆたえども沈まず」のあとがき的な本なので、
一番最後に読むとより「たゆたえども沈まず」の世界、余韻に浸ることができます。
ゴッホと原田マハさんと一緒に旅している気持ちになれる、とても楽しい本でした。
そうして3冊読んでどの本でも涙が止まらなかったのはゴッホが「アーモンドの花咲く枝」という絵画を描く場面。
すごく好きなエピソードのひとつでした。
ゴッホの絵画「アーモンドの花咲く枝」は弟のテオと妻のヨーから生まれる新しい命へゴッホが出産祝いとして贈った明るくて幸福に満ちた絵ですが
この絵を描いているときのゴッホはすでに度重なる発作や幻聴に襲われていて苦しんでいたに違いないとき。
だれにも評価されない絵を「兄さんすごい!天才だ!」と評価し、家族であり親友であり、
一番の理解者でもある弟が家庭を持つことはゴッホにとって幸せで喜ばしい反面、とても孤独だったと思います。
もがき苦しむ中で愛する人たちの幸福を願って描き上げた、ゴッホから新しい命への精一杯の贈り物が
「アーモンドの花咲く枝」なのです。
この絵を描いてるときのゴッホの気持ちを思うとどうしても切なくてこみ上げてくるものがあり、涙を流しながら読みました。
「狂気の天才」「耳切った頭おかしい人」として描かれがちなゴッホですが知れば知るほど、そうではないんじゃないかと思わずにいられない。
あまりにドラマチックな人生から「気が狂ってるやばい人」というイメージが先行しがちですが、
ただただ人より真っ直ぐで、あまりにも純粋すぎただけではないかと思う。
その真っ直ぐさを頭がおかしいととるか、情熱的だと捉えるかは人それぞれな気もするけど、繊細で純粋で敏感すぎるが故の生きづらさは現代人にも通じるものがある気がしてならないし、ひとりぼっちのゴッホに共感し、涙する場面がたくさんありました。
アーモンドの花咲く枝だけでなく、ゴッホのひとつひとつの作品に、ゴッホやゴッホを支えたたくさんの人の愛情や苦しみ、想いや願いが詰まっていて暖かくて切なくて、胸がいっぱいになる。
いま改めてゴッホの絵を見たらどう思うんだろう。なにを感じるだろう…
落ち着いて海外に行ける日がきたら世界中に散らばるゴッホの作品を追いかけてみたい。
ゴッホの絵に導かれる旅がしたい。
アルルの輝く太陽、星と月と夜。糸杉。オーヴェールの教会。麦畑。種を撒く名もなき人。
海外旅行へ行きづらい世の中だけど一冊の本の中にたくさんの世界が広がっていて、ゴッホと一緒に旅をしているような気持ちになりました。
この本に出会えてしあわせです。
いまの読書ノートはゴッホ展で購入した薔薇のノート。
来年もたくさんのすてきな本に出会えますように。
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