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課題のある子どもが自ら変わるサポートナッジ~学校教育×行動経済学〜

「サポートナッジ」の始まり

不良行為をおこす恐れのある子どもたちが
集まった特殊な学校で、
「こわく、きびしく、面白く、楽しく」
「信頼関係に頼る」
生徒指導は一切通用しませんでした。

日々、生徒指導問題で格闘するなか、
上越教育大学:赤坂真二先生の
アドラー学級経営で有名な
「できていないとき」ではなく
「できているとき」に着目する指導を
定量化したいと考えるようになりました。
さらに、できていないときですら、
価値あるものに変えることはできないか。
そして、ゆるやかによい意思決定ができるよう、
ナッジすることができないかと考え、
「サポートナッジ」が生まれました。

このナッジは、私の中で大きな財産となりました。
生徒指導に関してお話しさせていただく時、
必ず一つの手法として
提案させていただいています。
中学校でお悩みの先生にも
成果の報告をいただいています。
もちろん強要するものではありません。
生徒指導にお悩みの先生方に
少しでも伝わるものがありましたら幸いです。

ナッジ(nudge:肘で小突く)とは、
意思決定者に判断や意思決定を自由に行わせる余地を残しつつ、よりよいと考えられる選択を後押しするための工夫を指します。
ナッジの詳細については↓を参照ください。

「メタ認知」を承認するサポートナッジ

おなじみナッジ資料の合言葉「簡単・シンプル・持続可能」
これは通常の小学校低学年の例になります

サポートナッジを行うシートを
サポートシート(以下サポシー)といいます。

子ども自身が学校生活で直面する課題を3つあげ
毎日帰る前に「◎・◯・△」のマークで
自己評価をするシートです。

どのような課題を選ぶか、
どのように自己評価するかは基本児童に任せます

自己評価が現実とかけ離れている場合は、
「本当に?」とフラットに確認だけします。
それ以外は何も言いません。
◎でも△でも、適切な自己評価ができている場合
「いいねぇ、明日も応援しているよ」と声をかけ、
常にフィードバックを提供します。

そうすることで、
できても、できなくても認められる」という
不思議な体験を子どもはします。
そして、ゆるやかに「いい意思決定をする」
機会をつくっていきます。
(本質的には心理的柔軟性を高めるイメージです)

大切なのは、ナッジの原理原則を守ることです。

このシートを
できていないことを叱責する道具
として使っては効果は得られません。
子どもの自由意志を尊重しながら
よりよい意思決定をするためのサポート

として使い、
子どもにもその意図を伝えることが
重要であり、指導の全てになります。

トラブルが多かった子どもへの実践例

どうしても自分の主張を抑え切れず、
周りの友達とすぐにトラブルになってしまう
子ども(以下Aさん)がいました。
毎回、大人が道理や対処法を伝えますが、
指導が難しい状況が続いていました。
そこで、サポシーを使ってみることを提案しました。

今回の場合、
Aさん自身が課題を捉えるのが困難でしたので、
次の手順で課題を決めました。

  1. 子どもの現在の悩みを聞く

  2. その悩みをどうしたいか聞く

  3. その目標達成のためにどのような行動を取るべきかを一緒に考える

これらのステップを踏んだ結果、
次の3つの課題を
サポートシートに記載することになりました。

  1. 楽しくない

  2. 本当は友達と仲良く過ごしたい

  3. そのために「①悪口を言わない」「②自らクールダウンする」「③学校で1日無事に過ごす」の課題を設定

今回のAさんもそうでしたが、
話がスムーズに進まないこともあると思います。
そんなとき、私が心掛けていることは、
「あなたの未来を支えるお手伝いができれば」
という気持ちで話をすることです。

定量化と承認による3週間の変化

初日、
Aさんは嫌々そうに自己評価を書き込みました。
しかし結果は、◯・◯・◎とよい結果に。
「おぉいい感じだね〜」と声をかけると
嬉しそうに「うるせぇ」と照れていました。
何よりAさんが◯・◯・◎と
真面目に自己評価したことに驚きました。

1週目、
その後△がいくつか続きましたが、
「△って自分で書けるのは成長だね」
「何かサポートできることある?」
と声をかけました。
そして、◯や◎が定量化されているので
「できるようになってることいっぱいあるね」
「この項目、得意なんだね」と
達成の瞬間だけでなく、
持続的な肯定の言葉をかけることができました。
自己評価が書けないほど荒れた日もありました。
そんな日は私が代わりに評価を記入しました。

結果として、
最初は嫌々だったサポシーに対して、
2週目からは「見て、今日全部◎だよ」と
見たことのない笑顔で
書き込むようにまでなりました。
私はAさんの担任でも
キーパーソンでもなかったため、
これは初めての経験でした。
△の日にも自ら「今日ダメだったな」と
つぶやきながら書き込む姿が見られました。

Aさんが退所し、
その後の実践を続けることはできませんでしたが、
3週間でトラブルの数は
実践前の半分以下に減少しました

その後、別の2人にも実践を試みたところ、
設定した課題に対する変化が見られました。

サポートナッジで気をつけること

サポートナッジを実践する際に
注意すべき2つの点を挙げます。

1つ目は、
「誰かを傷つける行為は認めない」ことです。
これは言うまでもなく、
誰かを傷つける行為を肯定することはありません。
傷つける行為がいけないことであると、
子どもに真剣に伝えることが重要です。
しかし、サポシーの定量化によって
承認の機会が増えるため、
指導の言葉が受け入れられやすくなる
という利点があります。

2つ目は、
「課題を教師が無理やり決めない」ことです。
これはナッジの原則ですが、
実際には守りにくいものです。
あいさつナッジや掃除ナッジに関する記事も
参考にしてください。

他人を無理に変えるのではなく、
本人が変わりたいと思える環境

いかに作り出すかが成功へのポイントです。

そして一般校でも・・・

長くなるので、
一般校での実践は別記事にまとめます。
ぜひまたご覧ください↓

ここまで読んでいただき、
ありがとうございました。

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サポシーと指導の流れをお送りします

少しでも参考になるものがあれば幸いです。
質問、疑問のコメント
いつでもお待ちしております。


そうじナッジ↓

あいさつナッジ↓


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