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課題のある子どもが自ら変わるサポートナッジ(一般校編)【学校教育×行動経済学】

サポートナッジとは??

不良行為をおこす恐れのある子どもたちが
集まった特殊な学校で、
「こわく、きびしく、面白く、楽しく」
「信頼関係に頼る」
生徒指導は一切通用しませんでした。

日々、生徒指導問題で格闘するなか、
上越教育大学:赤坂真二先生の
アドラー学級経営で有名な
「できていないとき」ではなく
「できているとき」に着目する指導を
定量化したいと考えるようになりました。
さらに、できていないときですら、
価値あるものに変えることはできないか。
そして、ゆるやかによい意思決定ができるよう、
ナッジすることができないかと考え、
「サポートナッジ」が生まれました。

前回は、児童自立支援施設の子どもへの
実践内容でしたが、
今回はいよいよ一般校編となります。

まだ読まれてない方はぜひパート1を
ご覧になってください↓


サポートナッジ一般校編〜序章〜

小学2年生。
昨年度から、
朝と帰りの用意がどうしても
間に合わない子どもがいました

子どもの視覚優位な特性を考慮し、
行動を示すカードを作成しましたが、
1週間もするとその効果は薄れてしまいました。
低学年という発達段階では、
仕方のないことと割り切り、
指導を続けていました。

しかし、時々ですが、
子ども自身で準備できる日がありました。
この変化に対し、準備できない日を
「子どもの怠慢」と感じてしまい、
ストレスを溜めている自分がいました。
そこで、ナッジ理論を応用して、
支援が必要な子どもにも効果的に働く
サポートナッジを実践することにしました。

サポートナッジ開始〜6月〜

ナッジ資料おなじみの合言葉
「手軽に、すぐに、ゆるやかに」

6月、
シートの導入を対象児童(Aさん)に
伝えたところ、
当初は興味を示さず無反応でした。
しかし、Aさんも課題は自覚しており、
徐々に口にすることができました。
そこで、
「朝の準備ができた」
「帰りの準備ができた」
「授業の切り替えができた」

という項目を設定し、
帰りに振り返るようにしました。

1週目、
Aさんの意識も低く、成果が出ていないため、
自己評価を自らすることはありませんでした。
声をかけてもわざと反応しないように見えました。
そこで、「応援している」ことだけを伝え、
教師側で評価を行うと児童に伝えました。

また、1週目の様子を観察したところ、
全ての項目がAさんにとって
敷居が高いと感じました。

小さな成功を体験し、
シートに前向きな感情をもてるようにするため、
本人の承諾を得てから
「授業で切り替えることができた」の項目を
「わすれものをしなかった」という
Aさんにとって達成しやすいものに変更しました。

2週目の後半、
友だちの助けを借りながら
朝と帰りの準備を進め、
スムーズに取り組めた日がありました。

その際、教師に
「今日◎だよね」とシートの話をしにきました。

Aさんの頑張りを認め、
自分で評価を書くよう促すと、
嬉しそうに◎を書いていました。

Aさんはシートについて
気にしていないふりをしていましたが、
できていないことをしっかりと自覚していました。


3週目、
まだまだ気分に波はありましたが、
Aさん自らシートに
自己評価を書き込む習慣がつきました。

自身に甘い評価でしたが、
評価をしようとする姿勢を認め続けました。

4週目では、
自身の評価が現実とリンクしてきました。
△を適切に書けた日には、
自身と向き合えていることを価値づけました。

適切な自己評価ができはじめたと同時に、
準備できる日が増え始め、
2枚目のシートでは全て◎を獲得することができました。
クラスの子どももそのシートを見て
喜びあっていた姿が印象的でした。

私が口うるさく指導することなく、
少しのフィードバックのみで、
Aさんは自らよりよい意思決定をすることが
できるようになりました。

サポートナッジの伝染〜9月〜

9月、シートを作成し直すため、
Aさんと他に頑張りたいことはあるかと
話し合いをしていたところ、
複数の子どもが一緒に取り組みたいと申し出てきました

これは予想外でした。
できていないことと向き合わなければいけない
「サポシー」に自ら志願する子がいるとは
思いませんでした。
理由を尋ねると
「頑張っている姿がなんかいいと思ったから」
「私もなんか挑戦したいと思ったから」
「できていないこと、なおしていきたいから」
とのこと。

Aさんが嫌々サポシーに取り組んでいたら、
きっと誰もやりたがらなかったでしょう。

自身から課題を出し、
自ら振り返ることで、
忘れ物が多い児童、
名札をなかなかつけない児童、
廊下をつい走ってしまう児童など

取り組んだ全員
緩やかによい意思決定ができるようになりました。

Aさんの頑張りを間近で見ることで
「ブースト」効果が働き、
教師が課題を提示せずとも、
子どもが自らよりよい意思決定をしたいと思う
力が自然と上がる、複利的な効果が
一般校の大きな発見となった。
ブーストに関してはこちら↓

サポートナッジは教室ナッジで一番実用的

みなさんのクラスにもきっと
どうしても何かがうまくやれない子どもがいて、
教師があの手この手を尽くしていること、
ないでしょうか?
このサポートナッジは、
そんな課題を解決してくれました。
中学校では、染髪登校に対して
応用いただいている先生もいらっしゃいます。

できていないときばかりに目を向けず、
できているときを定量化していく。

ぜひ興味をもたれた方は
ご一報ください。
ではまた次の記事で。


あいさつナッジ↓



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