#それでもスポーツで生きていく・#14
~各論【第1章】
スポーツの『存在目的』に耳を傾ける旅
さいたま編 ( スポーツ施設編 )
世間はお盆休みですが、おおむねサービス業であるスポーツ界は、むしろ稼ぎ時でもあります。
僕も関東に旅に出て、今回はさいたまスーパーアリーナにやって来ました。
コンサートで使われるイメージが強そうな施設ですが、2020年東京五輪でバスケットボールの会場となり、ここ数年はバスケの試合やスポーツイベントで使用されることも多くなっています。
今回訪れたのは、夏真っ盛りのこちらのイベント。
さいたま新都心夏祭り実行委員会が主催するキッズ向けの体験型イベントで、主催者には実行委員会のほか、まちづくり推進協議会や埼玉県、施設運営会社の株式会社さいたまアリーナ、アリーナ・テナントの連絡会が名を連ねています。
これらの団体のなかで、どこが一番主導なのかまでは不明ですが、さいたまアリーナが主催にも名を連ねているのは、貸し館を主業とするスポーツ施設のなかでは異例の積極性を感じさせます。
可変式スタンドの真骨頂・コミュニティアリーナ
さいたまスーパーアリーナは、観客席が可動式になっており、一番広いスタジアムモードから、アリーナモードにスタンドを狭めた際、スタンド裏側にコミュニティアリーナという広場ができます。
このイベントの全景は上記写真のとおりですが、警察や消防など公共機関のブースをはじめ、スポーツ関係社も多く出展していました。
さいたまのスポーツ興行団体の取り組み
浦和レッズは、クラブマスコットの手作りワッペン作りの体験ブースを設け、長蛇の列が。
大宮アルディージャは、お子さま向けの鉄板遊具、ふわふわで勝負。
大宮アルディージャの親会社であるNTT東日本の出展もあり、こちらでは、eスポーツの実演ブースに大勢の人だかりが。
他にも、バスケットボールのクリニックや車椅子バスケの体験スペースも設けられ、スポーツイベントではない今回のイベントも、スポーツ好きなファミリーも楽しめるようになっていたのでした。
スポーツ興行団体とスポーツ施設の主客逆転現象
先に説明したとおり、このイベントの主催者には株式会社さいたまアリーナが名を連ねているので、通常イベントの主体となるスポーツ興行団体と、その場を提供するスポーツ施設の主客関係が、今回は逆になっていることが分かります。
スポーツ興行団体側がイベントの主体となると、どうしても来場者が、その興行のファン中心になることは否めません。
半官半民で運営されていることが多い日本のスポーツ施設ですが、今回のように施設側がイベントの主体となることで、特定のスポーツのファンにとどまらない客層を会場に迎えることができ、興行団体側にとっても、新しい顧客層との接点が生まれるメリットもありそうなのです。
さいたまアリーナの中期経営計画に着目する
こうした取り組みの根拠は、株式会社さいたまアリーナの中期経営計画に見てとることができます。
中期経営計画の概要
中期経営計画は、県が指定出資法人に対して策定を求めているものでございますが、当社としても、経営方針を明確化し目標を定めることにより、計画的な経営改善を推進するため、2019年度から2023年度までの「中期経営計画」を策定しました。
経営方針
1.人々の心に「夢と感動」を提供し、豊かな生活や文化の創造に貢献する。
2.全てのお客様を第一と考え、「顧客」、「社会」、「会社」の三つの満足を実現させる。
3.さいたま新都心の「にぎわい」を創出し、活力に溢れた魅力ある地域づくりに貢献する。
実施方策 (抜粋)
新都心のにぎわいの創出と魅力あるまちづくりへの貢献
ア:さいたま新都心のにぎわい創出
自主企画イベントをさらに成長させ地域に貢献
イ:さいたま新都心のまちづくり
エリアマネジメント活動への積極的参加により地域に貢献
あらかたのスポーツ施設は、貸し館業がメインであり、イベントの主催能力が充実していない施設運営会社(施設管理会社)も多くあります。
さいたまアリーナの場合、経営方針に「さいたま新都心のにぎわい創出」が規定されており、単なる貸し館にとどまらない事業や企画を推進する体制が作られているのです。
今回見た、キッズ向けの夏祭りイベントも、やってること自体はお盆休みのニーズに応えた、地域の一つのファミリーイベントに過ぎないかもしれません。
しかしながら、スポーツ施設業界を捉える眼で見ればやはり画期的な取り組みに思えてきます。
おわりに
全国的な視野で見て、ここまで活力ある取り組みを実行できているスポーツ施設は多くありません。スポーツ施設業界内に、イベントを企画運営できる体制が育つことで、全国各地の地域活性化にさらなる貢献をもたらす可能性も高まるでしょう。
イベントの企画運営能力を持ったビジネスパーソンにとっては、これからスポーツ施設での活躍の舞台が増えていくかもしれません。
次回の連載では、東京五輪を機に新設された大井ホッケー競技場についてお届けします。取材が二日後になりますので、明日は連載外の投稿をお届けする予定です。お楽しみに。
スポーツエッセイスト
岡田浩志
『みるスポーツ研究所』では、「それでも、スポーツで生きていく」皆さまの取り組みにもっと寄り添っていけるよう、随時サポートを受け付けております!