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人工失楽園BARからこんばんは。

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人工楽園が失われた2020年の日本にオープンした思考酩酊空間。
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#ショートショート

タイトル公募900字小説「9月に始めたい存在しない習い事」5連発

タイトル公募900字小説「9月に始めたい存在しない習い事」5連発

先日、Twitterにて「#9月に始めたい存在しない習い事」というのを募集しまして、そこに皆様からご応募いただいた架空の習い事を5つ選び、タイトルにして900字小説を書きます、と言いました。そして、昨夜無事に5つのタイトルが決定しました。さて、どんな話になったか。以下ごらんください。
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蝉の声回収講座 そろそろ何もない抜け殻のような日々から脱しなければならなかった。ミコが最後の

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ある古美術商への飛び込み営業で本当にあった怖い話

ある古美術商への飛び込み営業で本当にあった怖い話

8月の終わりなので怪談噺でも一つ、と思ったのだが、じつを言うとこわい思いというのをあまりしたことがない。

生まれつき霊感がまったくなく、そのわりに中学校まではひどく怖がりだったのだが、高校のときにふと「これまで一度も幽霊の気配すら感じたことがないということは、いるいないは別にして俺には霊感がない。それなのに、『いそうな感じ』を怖がる意味とは……?」と考えてすっかり恐怖心というものと疎遠になってし

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タイトル公募断篇小説「夕立そうめん」

タイトル公募断篇小説「夕立そうめん」

先日、断篇小説のタイトルとして使える「夏の終わりに食べたくなる存在しない食べ物」をTwitter上で公募しました。
その結果、たくさんの素敵なタイトルが寄せられました。そのなかで、とくにシンプルでピンときた「夕立そうめん」を使わせていただき、小説を書いてみようと思います。では以下が本編となります。どうぞ。
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 夕立そうめん  2003年の夏の終わりのことを久志は強烈に

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小説に向かなそうなタイトルで小説を書いてみよう

小説に向かなそうなタイトルで小説を書いてみよう

こんばんは。じつは今日、ふと思い立って、夕方にツイッターで以下のような募集をしたのでした。

急募】即興企画で「小説に向かなそうなタイトル」を募集します。採用タイトルは1つ。#小説に向かなそうなタイトル、で呟いてください。採用ツイートのみRTします。夜の九時くらいまでで締め切り、そこから決めて12時までにnoteにアップします。

本当は2,3件集まればいいかなと思っていたのだけれど、思いのほかた

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断篇小説「はじめてのかいもの」

断篇小説「はじめてのかいもの」

 少女はわずかに喉を鳴らしながら、海岸に立っている。
 弟が駄菓子屋で無事に買い物を終えて出てくるのを待っているのだ。弟にとってこれが初めての買い物になる。弟は六歳で、来年には小学一年だから、買い物くらい一人でできなきゃダメよと言った。そして少女は自分の小遣いから百円玉を与え、これで好きなものを買っておいで、と告げた。

 スカートのポケットで電話が鳴った。繁からだった。よりを戻したいという内容で

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