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花束みたいな恋をして

映画「花束みたいな恋をした」を観た。
主演:有村架純、菅田将暉。脚本:坂元裕二。
好きな俳優さんと脚本家さんのコラボ、オリジナル脚本のラブストーリー。
発表された時から、楽しみで仕方なかった。
映画の特報や予告を何度も見て、あたたかいラブストーリーを想像しながら、その日を待った。
そしてついに公開2日目の夕方、私は一人で地元の映画館へ向かった。


(以下、本編の内容に触れます)


結論から言うと、最高に苦しかった。
初めから二人の結末を察していたから、運命的な出逢いからずっと苦しかったし、幸せそうな二人を見ても苦しかったし、その幸せの「現状維持」のためにだんだん二人の歯車が合わなくなっていくのがとにかく苦しかった。
途中から涙が止まらなくなった。私以外に一組のカップルしかいない劇場で、嗚咽しそうになるのを何度も抑えた。
終わって、劇場を後にしてからも、思い出しては涙が流れた。ひたすらに引き摺った。
でも、観られてよかった。そう思う。
確実に、私の好きな邦画No. 1の座を射止めた。

どうしてこんなにも引き摺ってしまったのかと言うと、それは間違いなく、二人に対する共感と感情移入による。
私はあまりサブカルに明るくないので、二人が好む本や音楽に対する共感は正直少なかった。
けれど、長い時間を共にすることで、大切だった自分の気持ちがだんだん分からなくなること、仕事が忙しくてすれ違ってしまうこと。ありがちな話とは思うけれど、そこに対する共感はやはり大きく、深いものだった。
そしてそのすれ違いが、「二人の好きなもの」を通して描かれる。あまりにもリアルで秀逸だった。

レビューを読んでいると、同じように「共感」で涙を流したという人が、本当にたくさんいた。同じように共感する人が沢山いるということは、恋愛が得てしてこういうものなのだということを暗に示していると思う。
それなら、恋愛なんてあまりにも苦しい。
でも、恋愛はあたたかくて優しくて、きゅんとして、幸せな気持ちにもさせる。そんな側面があるから、人は何度も懲りずに恋をするのかな。
恋ってずるいなあ。

ちょっとした自分語りになるが、私には、付き合って1年3ヶ月と少しになる人がいる。
私が人生で初めてお付き合いをしている人だ。
ちょうど3週間くらい前、付き合ってから初めて、どうしようもなくすれ違った。今回ばかりは本当に別れるかと思った。
きっかけ自体は本当に些細な考えの違いだったが、きっと自分たちでも気付かないうちに、ボタンの掛け違いのようなズレが、これまでにいくつもあったのだと思う。
結果的には二人で真剣に話し合い、別れない選択をしたけれど、そんな経験をしたからこそ、映画の中の二人がすれ違っていくさまがあまりにもリアルで、心に突き刺さった。観ていて、苦しくて苦しくて、仕方なかった。私たちもいつかまた、こうなるのだろうか。次は修復できるだろうか。違う人を選んだ方が、もしかしてお互い幸せになれるのかな。きっとまたそんなことを思うけれど、でもやっぱり、「別れよう」の一言がなかなか言えないと思う。
「別れよう」で済むのは、付き合って半年以内のカップルだけでしょう。
そんな台詞に、深く頷いてしまった。
二人で過ごす時間が長くなればなるほどに、割り切れない感情が募れば募るほどに、その一言はどんどん遠のいていくのだろう。

私が今まだ誰とも付き合ったことがなかったら、きっとこんなに泣かなかったんじゃないかと思う。また、いつか誰かと結婚したとして、その時もう一度この映画を見たら、きっとまた違った風に見えるのだろう。普遍的なテーマだからこそ、その時々の自分の置かれた状況によって見え方が変わってくる。そんな映画だ。

「人生最高の恋をした、奇跡のような5年間」。
このキャッチコピーからして、あまりにも苦しくて切ない。
奇跡のように幸せだったのに、どうして上手くいかなくなっちゃうんだろう。別れてもなお、あれが「人生最高の恋」だったと言えてしまう。だったらなんで、別々の道を選んだんだろう。
そんな浅はかな感想ばかり出てきて泣いてしまうのは、きっと私がまだ恋愛経験が少ないからだ。私がいつかこんなふうに思い出すのは、きっといま付き合っている彼。だけど、それでも今は、まだこの恋にしがみついていたい。できれば、もう一生他の人を知りたくなんかない。この恋を完全な「思い出」になんて、したくない。

小さな小さな幸せの一つひとつが積み重なって、大きな幸せになるもの。それが恋だとするのなら、あらゆる恋はきっとみんな「花束みたいな恋」なんだと思う。
でも、その美しさはそのままの状態で保存できたりはしないから、私たちはきっと、それをそっと心に抱えて、これからも生きていくんだね。

絹ちゃんと麦くん。二人にとっての最終的な幸せってなんだったんだろう。
あのまま付き合い続けること?結婚すること?
やはり、別れて別々の道を歩くこと?
そんなものは、分からない。なにが幸せかなんて、結局は自分で決めるものだ。
だから私も、この二人に影響されすぎずに、自分の幸せを探し続けたいと思う。
今ここにある花束を、大事に抱えながら。


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