小室プロデュースからASAYANまで。歌姫やハロプロアイドルたちのパワーに救われて
なにをやっても上手くいかなかったあの頃、テレビで生き生きと笑顔を振り撒く女性たちに魅せられた。
あれは、確か20〜30年前のことだろうか。世は小室哲哉プロデュース全盛期。
私の友人はガチのTMNファンで小室さん推しだったが、周りの人の多くは「小室さんがプロデュースする女性」たちに魅せられていった。
当時は、ハイトーンボイスやダンス系の曲が人気の時代。
当時人気のオーディション番組ASAYANでは、毎週のようにオーディションが開催されていく。
番組では、人気プロデューサーである小室さんの隣でキティちゃんのぬいぐるみを抱く可愛らしい女性の姿があった。どうやら今度、彼女は小室さんにプロデュースしてもらえるらしい。
プロデューサーが、彼女をプロデュースするんだ。凄い時代になったものだと、あの時思った。
別に私は、歌手になりたかった訳じゃないのだけれど。画面に映る彼女を見るなり、有名プロデューサーが彼氏だと、素直にいいなぁと感じた記憶がある。
まぁ、あの頃は画面越しにイチャイチャする2人を見るたびに、一体テレビでなにを見せられているのかという気持ちになったのは、嘘ではない。
その後は、なぜか彼女が作り出す不思議ワールドに引き込まれていき、アルバムも何枚か購入してしまった。
華原朋美さんは、歌の上手い下手では言い表せない、独特の魅力がある。イチゴのように甘くて愛らしい一方で、ガラスのように脆い部分。ケラケラと健気に笑う彼女を見る度に、どこか見守りたくなってしまう。
プライベートと作品は、別物と言うけれども。彼女の場合は、その脆さと儚さ、健気さも。全てが作品に繋がっている気がした。
華原朋美さんの作品に「タンブリンダイズ」という曲があるが、中毒性が凄くて一度聞くと病みつきになるので、気になる方はぜひ聞いてみて欲しい。
今の時代では、到底考えられないことかもしれないが。あの頃は、華原さんのようにプロデューサーに選ばれて歌手デビューするというシンデレラストーリーも少なくなかった。
あの人にプロデュースされれば、絶対に売れる。そんな夢物語に憧れ、私たちは魅せられていく。
「歌手がプロデュースされていく過程も、視聴者にとってコンテンツになるのではないか」
そのような需要に応えていったのが、ASAYANというオーディション番組だ。
ASAYANではオーディションの様子だけではなく、歌手になってからの苦悩や葛藤も余すことなく放送し続けた。
女性グループの場合は、新メンバーに対して威圧感を醸し出す方の姿も……。
今となっては、それも視聴者向けのエンターテイメントだったのかもしれないけれど。その様子が実にリアルで、ついつい見入ってしまった。
番組からは、モーニング娘、鈴木あみさん、ケミストリーなどのスターが数多く誕生する。
あの頃の女性歌手たちは、体中にあるすべての高音を出し切ろうと、必死にもがきながら歌っているようにも見えた。
視聴者として、彼女たちがいつか声を出しすぎて壊れないか。密かに心配でもあった。
絞り出すように声を出す姿を見て、なんとも言えない気持ちになったけれど。
同時に、懸命に歌う彼女たちの姿を見て「頑張ろう」と思える自分もいた。
あの頃、色々あった華原朋美さんがふたたび歌手として復活した時は、心の底から嬉しかった。朋ちゃんおかえり。知り合いではないけれど。
今まで寝込んでいた親戚のお姉さんがようやく復活したような、そんな気持ちになった。
全盛期より歌唱力がアップしているのも感じて、すごく努力されていたんだろうなぁと思う。
その後も、あの頃の小室ファミリーや活躍されていた女性たちがYouTubeチャンネルなどで歌ったり、思っている姿を見ると、ぐっと来るものがある。
歌手の世界は、一発屋で終わる人も少なくない。歌の世界をやめて、他の業界へ渡る人もしばしば。
そんな中で、色々な経験を経てもなお「もう一度、歌ってみよう」と、マイクの前に立つ彼女たちの姿を見ると、嬉しさのあまり胸が震える。
今度は、誰かの支えを頼りにするのではなく。自分たちの足で、しっかり踏ん張らなきゃ。そんな彼女たちの姿を見るたびに、私は勇気をもらっている。
【おわり】
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