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甲状腺乳頭癌の話2 癌宣告

専門病院で検査をして、その結果を聞くというお医者さんとの診察の順番を後回しにされまして、ようやく診察室に入ることが出来たのは、病院で受付してから4時間程経った頃でした。

40代くらいの爽やかな男性の先生が「たいへんお待たせして申し訳ございません。」と迎えてくれました。
明るい雰囲気でとても感じの良さそうな人でした。
そして、私が椅子に座ってからも、すぐには話そうせず、一息置いて、でもニコニコしながら、というより笑いながら

「検査の結果なんですけどね、いや~癌なんですけどね、ha、ha、ha(笑)、でもね、そんなに心配しなくても大丈夫なんですよ~。」

一瞬思考が停止しましたが、
「えっと、すみません…私、癌なんですか?」
「ええ。甲状腺乳頭癌と言いましてね、他の癌と比べると、進行が遅くて、転移する可能性も低いので、癌と言っても特殊な癌になるんですね。」
「えっと、でも癌なんですよね?進行が早くて、転移することもあるんですよね?」
「そうなんですけどね、このままでずーっと変わらない人が多いんですね。切除するという選択肢もありますが、経過観察していく人がほとんどなんですね。」
「えっと、切除って喉を切るんですか?」
「まあ、喉というか、首の左側の付け根の少し上くらいですね。でも腫瘍の大きさが6mmと小さいので、経過観察でもいいと思うんですよね〜。この後、より詳細な検査として、細胞を採って調べる検査があるので、その結果が出てから、考えてもらうのがいいと思います。」

ということで、後日細胞診検査を受ける予約をし、この日の診察は終了しました。

情報量が多すぎて、頭が処理できませんでした。
最も重要な事は当然、「自分が癌に罹っていた」ということですが、
「こういう時、お医者さんて笑って話すものなんだな」ということが新鮮すぎて、そちらに気を取られていました。
そして、「まいったな〜」という趣旨の独り言を言いながら、なぜか笑いながら、10月の晴れた心地よい陽気の中、病院前の賑やかな通りを少し歩きました。

そして、夫に報告する前に一つずつ整理を始めました。
診察順を後回しにされた事、なんとなく腑に落ちました。
先生の笑いながらの癌宣告、私が深刻にならないようにと、先生なりの気遣いなんだろうと、好意的に受け止めている自分に気づきました。
そして、肝心な検査結果、先生も笑いながら言うくらいだし、特殊な癌なのだから、心配しなくて大丈夫なんだろうと、理解しました。
でも、とはいえ、癌か…。
経過観察でいいなら、様子を見ていくというくらいのものなのだろうと納得しました。
でも、とはいえ、癌か…。
「癌」。なんて強烈な言葉なのでしょう。
癌という言葉で、頭の中に重石を置かれたような感覚です。

結局、夫にどう伝えるか、整理がつかないまま、電話をしました。通じませんでした。留守電を残しました。
このまま家に帰ろうかと思いましたが、両親と話したい気分になって実家に電話をしたのでした。→ 続く

お読みいただき、ありがとうございました。

追記:見出し画像は、いらすとやさんからお借りしました。ありがとうございます!

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