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羽生善治さんに学ぶ勝ち負けということ

今朝 3時であったろうか。
トイレに目が覚めてしまい、ついでにツイッターの通知チェックをしようとパソコンの電源を入れた。

いちおーWindows10ではあるが、Windows7から強引にアップデートした旧型機種なので、ういいーんういいーんと立ち上がるまでに時間がかかる…。

以下は、長い前書きと短い考察です。

長い前書き

パソコンが立ち上がるまでの手持ち無沙汰なあの時間、ふと見ると本棚に将棋の本が…。( U_U)

いちおう詰将棋というものをご存じない方のないために説明しますと、実際の将棋盤の盤面を模した、棋譜というのがあります。音楽でいうところの楽譜みたいなものです。

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楽器が弾ける人が、楽譜があると実際に頭の中で音楽をならせるのと同じです。将棋の心得のある人はこれを見ると、なん手か先まで頭の中で読んで楽しむことができます。

棋譜というのは正確には投了(対局終了)までの記録ですので、詰将棋とはちょっと違うのですが、同じような縦に漢数字、横にアラビア数字が振られています。詰将棋は、対局終了部分からテープの巻き戻しをするように3手、とか5手前に再現するのです。

巻き戻し終わった局面から、あと5手指すと敵の王様は降参ですよ、というのを五手詰めといいます。3手なら三手詰めですね。私が手にしたのは、初心者用の三手詰めの本です。

余談ですが、私の棋力というのは、将棋の駒を正しく並べられる+アルファ(爆)。でも、これも音楽と同じなんです。

ピアノが上手に弾けなくても、譜面を最低限読めるようになって、家族に冷やかされながらも休日ピアノを弾くってとても素敵だと思います。いわゆる大人のピアノというやつですね。

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わたしも駒を並べて勝負すれば必敗のくせに、深夜詰将棋の本を手に取るくらいですから、そのピュアな心はよく分かります。

つーか、そもそも女子の仕事用の書斎机の上に詰将棋の本があるというのが、これはすごい光景だという気もするが…。( U_U)


私は将棋を真剣にやる人からすると、邪道だと思います。

なぜならば将棋そのものよりも、羽生善治さんのファンだからです。よく分かりもしないくせに、テレビで中継をやる時には、解説者の人の解説を聞きながらは羽生マジック(羽生善治さんらしい、奇抜に見えながらも最善手であると事後的に気がつく美しい手)が早く出てこないかなあ、とわくわくしてます。

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また、羽生さんは文章もとてもうまいので、羽生さんの書いた将棋以外の本も大好きです。読むと思考がしゃっきりするし、対談集など見ているとこの人は、なんてまあ、いい人なんじゃあああ!と感動します。もう、文面からお人柄がにじみ出てます。

将棋を指す人って個性的な人が多くて、羽生さんじゃない人もけっこう好きです。ひふみん九段などは、またこれが(笑)。

はい…加藤一二三九段の本たくさん持っています。

本題

そんなヘボ将棋のわたしが詰将棋の話をしてもしょうがないので、羽生さんが茂木健一郎さんと対談した本の中から、とても印象的な言葉をご紹介します。

茂木健一郎さんの八面六臂ぶりはみなさんご存知だと思いますが、将棋も囲碁もされるそうです。それもあって、話の絡み合いがとても濃くて、ついつい一気読みしてしまいそうな本です。

この中にこんなくだりがあります。

茂木 (大事なのは)そもそも勝つ、負けるとは何なのかという大命題になってきますね。何なんだろう、勝ち負けって。

羽生 勝負をつけるだけなら、あまり将棋をやる意味がないと思うんですよ。

茂木 ですよね。サイコロ振ったっていい。

羽生 本当にそうなんです。じゃんけんでもあみだくじでも何でもいいじゃないかということになっちゃう。 P121(カッコ)内はみこちゃん付加

これはなかなか新鮮なやりとりです。

国のゆとり教育の鳴り物入りの導入と、その大失敗による反動を端にする行き過ぎた実力主義。金で買えないものはない、勝ったものが一番偉いし負けた人間に発言権はなし、みたいな生きにくい環境で生活することを、私達は残念ながら余儀なくされています。

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この羽生善治氏の発言でさえもが、羽生だからこう言っても許せる。羽生みたいにかっこつけたかったら、永世七冠達成してから言え。みたいに言い出す人がわんさかいます。

それも一理あるんでしょうけど、その考えを推し進めると、こうなってしまう。

学歴をバカにするんだったら東京大学を3回卒業(茂木健一郎さんがそうですね)しろ、バカに学歴社会に文句付ける権利なし。

人間顔じゃないよ、こう思いたくても、そんなセリフは美人だけが言えるということになってしまって、わらわは困るじょー。やだぞそれは。

お金だってそうだ。お金だけが人生じゃないよって、いいたくても、貧乏人の負け犬の遠吠えだとか言われそうだしなあ。

考え方としては間違っていなくても、あまりに寂しい気がするな、これは。

負け惜しみじゃなくて、もし私がハーバードとケンブリッジとソルボンヌ出ていて、ミス・ユニバースではグランプリで、IT長者と結婚していたとしても、これはいいたくないなあ…。

とかいうと、「負け惜しみじゃなくて」と、ちゃんと予防線張っているのに、負け犬の遠吠えだとか言われることを想定して、言わなかったりね…。

つーか、私の例の出し方…( U_U)。ソルボンヌ…とか(笑)。
いかにも、そんなのに自分は縁がないという、非現実で文学的とも言えるコミカルな喩え方になっていて、自分で読み返していま笑った。これなら、相手にも笑ってもらえるかな…。

【閑話休題】

思うに、どこかで日本人は、勝ち負けという言葉を過度に絶対視してしまったように思えます。

羽生善治氏と茂木健一郎氏は、同じ本のなかで、こんなことも言っていました。

茂木 勝ち負け至上主義というのはなにか変なんですよ。変であることはみんなわかっているんだけど、何が変かと言われると明快な答えがない。

羽生さんが先ほど美意識以外に、面白い/つまらないという評価をされていましたが、それは勝ち負けとはまた別の価値観ですか?

羽生 そうですね、面白い将棋と面白くない将棋というのはあります。つまらない将棋を指した時には、何か一日を無駄にした感じなんですよ。

茂木 勝っても?

羽生 勝ってもそうですね。やはり勝敗とは違う……。P133

感想と余談

休日のNHKの将棋トーナメントテレビ見てて、将棋が下手な私が、将棋は勝負だけじゃないよって明るくつぶやける茶の間が欲しい。

大人のピアノ弾いているお父さんが、下手なんだけど、家族から「お父さんの次のコンサートみんなで行くよ」と言われて照れてる家庭に憧れる。

学歴はなくても、学歴なんて関係ないよと笑顔で言いたい。

余分なお金がなくても、たまには銀座で寿司死ぬほど食って、翌朝はお茶漬けを楽しくすすりたい。

彼氏に「おまえは世界一の美人じゃないけど、世界一かわいいよ」と言われて「とーぜんじゃ」と大声で一緒に笑いたい。

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羽生さんの将棋や、羽生さんの本に触れていると、なんだかそういう世界があるなと思えるんです。だから少しでも永世七冠が何言っているのか分かりたくて『名人直伝 これぞ実力UPの近道 羽生の三手詰』を本棚に飾ってある。


パソコンが立ち上がって、ツイッターに接続した。
自分でもつぶやいた。

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「トイレに起きたついでに、『羽生の三手詰』手にとっっちまったぜー。3つ解いたら寝る」

しばしの沈黙の後。

その私のツイートには、深夜、早朝にも関わらず複数のいいねがつき、リツイートまでしてくれるひともいた。

うれしかった。いつもやりとりさせてもらっている仲間もいれば、初めての人もいた。

勝負、学歴、お金、美人。
笑い飛ばしても、負け犬の遠吠えとは言われずに、笑い返してくれるような世の中は夢ではないなと思った。

なんとなく…ね。

そんな世界が来たら、したいことがある。

私の大好きな光景に羽生善治永世七冠が、小学生をたくさん集めて将棋教室をやっているのがある。


もし、そんな素敵な世界が現実となったその時は、私がピアノかバイオリンを教えてあげよう。いっしょに弾いて楽しもう。
わたしは他はだめでも、楽器はまあまあ弾けるんだ。

羽生さんが小学生相手に将棋教室やっているみたいに…いつか。
わたしもピアノを、小学生やシニアのお父さんに教えてあげたいな。
そう思えた。

こうして私はまた、羽生先生という人間的に偉大な存在に近づくべく、深夜、詰将棋を解くのだ。

ツイッターで見かけたら、ぜったい いぢってね!

*。ヾ(。>v<。)ノ゙*。

おすすめの将棋小説

さて、ここで日本最高の将棋小説をご紹介しましょう。

江戸川乱歩賞と並ぶ、ミステリ界の最高峰の賞である「メフィスト賞」大賞受賞作家の赤星香一郎『アルゴリズムの鬼手』です。

赤星先生は、みこちゃんの小説の師匠です。先生の小説の特徴は純文学的なテーマの掘り下げと、エンタメ小説最前線の感性と手堅い本格派推理小説のテクニックがすべて絶妙にミックスされているとことです。

推理小説は推理があればいい、エンタメ小説は人間の欲や男女の関係、お金の話がダイナミックに飽きさせずに展開されればばいい。そんなイメージを持つ人もいるかも知れません。そんなイメージはこの本を読むと一掃されるでしょう。

この本が推理小説としてではなく小説として優れている。

小説の読み巧者の方は一読してそのことに納得するはずです。骨太のテーマはAIというものの本質までも抉り取り、赤星香一郎流にその可能性と限界が掘り下げられます。

そして、読者は極上のAIと将棋をめぐるストーリーを堪能しながら、いつしか本書の最奥の魅力が、AIの可能性と限界にあるにとどまらず、人間の可能性と限界にあることに気がつくはずです。

限界に気がついた時に、将棋界は、人間はどうするのか。

その描写に何とも言い表せない、形容しがたいドラマチックな説得力があります。

みこちゃん出版より好評発売中です。

ぜひお手にとってみてください。


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