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KS3PJ:トップランナーの走り解析

「世界のサノアツ」さんが面白い動画をアップしてくれた。さすが私の「外部脳」だ。トップランナーの、大迫、鈴木亜由子、キプチェゲの走りを動画で比較できる。

これを、マラソンのド素人である三河屋幾朗が、メカニカルエンジニアとして解析して見せよう。


まずは3人の走りを見る

スローで見るのが分かり易い。どこを見るかと言うと、シューズの底だ。その軌跡を見る。脚の動きなど見る必要は無い。(「脚」と「足」の違いを分かっているよね?足は踝から下だ。)

脚の動きはゴールではない、結果だ。

もう一度言う、フォームを決めて走るのではない、決めたゴールを目指して「走った結果がフォーム」なのです。

目的と方法を入れ間違えてはいけない。あさってのゴールに向かうので、これだけは間違わないでください。

さて、できればPCで、それもブラウザーは二つ広げて見て欲しい。片方は「世界のサノアツ」の記事にある3人の動画、もう一方がこの私の以下の記事だ。

三人三様の走り方だが、「シューズの底の軌跡」を追う。変形三角形であることが分かる。いや、違う。足が後ろに回った時に腿に引き付けられるから、鋭角カットピザ形だ。円形に足が折りたたまれて、前にすっと投げ出される。

その鋭角の部分の角度が、3人とも違う。また、カットピザの縦方向の寸法が大きくなると、滞空時間が長くなる。つまりカットピザの大きさが大きくなるので、結果的にストライドが伸びる


大迫の走りを解析する

大迫の軌跡は縦方向の長い大きなカットピザ形を描いている。つまり、跳ねているのだ。従来のシューズだと、底が薄いからダメージが大きいし、跳ねるのに脚の脚力でやらねばならない。

ところが時代は厚底だ。大迫は厚底シューズの衝撃吸収を、カーボンプレートによる反発のタイミング(ここが重要!)をドンピシャで合わせて跳ねているのだと推察する。

分かり易く説明すると、衝撃吸収後のフォームの反発による伸び(これは数値的にはバネに置き換えられる)と、カーボンプレート(これもバネだ)のばね係数がマイクロ秒レベルで同期して、大きなエネルギーに変換されて跳ねる。つまり二つの異なるバネを組み合わせ、それをシンクロ(位相同期)して使っているのだ。

文科系ランナーの諸君、付いてきているかな?

この同期タイミングは合わせるのが極めて難しいと思われる。なぜなら、フォーム部のバネ条件とカーボンプレートのバネ条件のばね係数とダンパー係数の組み合わせは無限にあるからだ。プロだから出来る、世界の頂点を狙う故の技量なのだろう。

大迫は練習によって、その同期タイミングを体に刻み込んで跳ねていると推察する。シューズもNIKEによって大迫用にチューニングされているに違いない。彼のレベルになれば、セッティングを変えたシューズから、その日の条件によって選ぶことが出来るだろう。

追記:「世界のサノアツ」さんからメッセージがあり、「Nikeシューズは選手毎のカスタマイズはしないらしいです。最近のルールもそうなった」ということで、大迫スペシャルは無いそうです。と言うことは、大迫選手はNIKEから与えられたシューズに合わせて、自分の走りをチューニングしている、そう考えられる。


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う~ん、大迫選手のアタマは、明らかに理科系だ。

彼の言う通り、マラソンは「数値管理」だ

バネのシンクロ(同期)が見事に功を奏する例が、自転車のピスト(トラックレーサー)だ。それも鉄フレームで同じ効果が得られる。ピストは固定ギアで変速機が無いので、速度を上げるにはクランク回転数を上げるしかない。そこで回転練習だ。下り坂を利用して「もがく」。常人では危なくて回せない。150回転以上を回すスキルをトレーニングで獲得する。

鉄ゆえに、たわむ。つまりバネだ。このたわみを利用する。踏んでたわむから、力が逃げる。それを高回転で回していった時、回転位相を意識して半回転遅らせると逆位相になって、たわみ方向が圧縮方向に変換されるため、ペダルが逃げるのではなく、ペダルの方にフレームが寄ってくる。つまりたわみがパワーに変わるのだ。

ノイズキャンセラー付きのヘッドホンを使っている人も多いだろう。あれはノイズの逆位相を出して雑音を消しているのだが、ここでいう逆位相はノイズを倍にするというのに等しい。これは極めて高度なペダリングなので、普通の人は真似できないし、失敗するとと、固定ギアゆえに脚がクランクに持って行かれて、下手をすると膝を破壊するか骨折する。

余談だが、筆者も最初は回せず、坂道で怖い想いを何度もした。脚が付いて行かず高回転のクランクに跳ね上げられるのだ。ある時コツを見つけた。膝の先行動作だ。回そうという意識で回すと、スムーズに回らない。それを足を回すのではなく、膝を上げることだけを意識して脚をそれに従わせたら、うまくいった。ランニングの前振出しの、「膝による先行動作」のヒントになる。これもクロストレーニング。

話しを大迫に戻そう。

大迫で見て欲しいのは着地点だ。体の前にあるが、それが骨盤重心からどれだけ前に進んでいるかを見る。見た?見たね。ではその慣れた目で、キプチェゲを見る。

どうだ、着地が体に近いだろう。もう目が慣れたはずだ。次は亜由子を見よう。


亜由子とキプチェゲはこうだ

亜由子はピッチ走法だ。回転数で稼いでいる。それはこの画像が駅伝であり、中距離走であるから、それを加味した方が良さそうだ。

亜由子はキプチェゲに近い。つまり亜由子とキプチェゲは似た走りなのだ。ゆえに、キプチョゲはピッチ走法だと言える。

亜由子の特徴は、足を蹴った後の動作にある。腿に引き付けたあとに前に蹴り出す、つまり路面をキャッチする。彼女が3人の中で最も足が腿に近い。これはその慣性力を使って足を前に送る、超効率的なフォームだ。足を二人よりは縦方向に下ろしている。つまり重力を利用しているのだ。エコランニング的には彼女が一番優れている。

足の慣性エネルギーを利用する。これがエコランニングだ。

恐らく亜由子は、腿への引き付け動作を意識して行っていない。練習を繰り返し、最適化したら、こういう軌跡になったのだろう。軌跡を作るためにフォームがあるのではないからだ。

私はド素人なので、駅伝である中距離と、マラソンの長距離の差によるフォームや条件の違いが良く分からないが、昨日、エルワンさんがその違いを語るのを聞いて、なるほどと思った。聴いて欲しい。(あ~、エルワンさんの優しい声に、癒されるなあ)


以上が、ド素人の私がメカニカルエンジニアの知識で、世界トップクラスのランナーをビデオ解析した。何度も言うが、自転車は一家言あってもマラソンはド素人だ。

ランナー諸君、感想を聴かせてもらおう、このド素人に。

ランニング解析は面白いが、重要ではない

大切なのは、ここから何を学び、自分の走りに活かすかだ。アタマで考える。考えて走る。巷の溢れるマラソン講釈は全部信じない。推論と仮説と実証。PDCAを回す。感覚は排除する。数値で管理する。

速いシューズは値段は高いが、アタマを使うのはタダです。


追伸:バイオメカニクスを語る

この記事は速攻で書いたので、完成度が低い。もっと解析できる。メカニカルエンジニアだから、ここは突っ込みたい。追加で記事を増やすつもり。例えばこれだ。

ケニア人長距離選手の生理学的・バイオメカニクス的特徴の究明

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追伸2:「世界のサノアツ」さんも走りを解析する

さっそく「世界のサノアツ」さんがこの投稿に呼応する記事を書いてくれた。併せてお読みいただくと、より濃ぃい~内容になります。

「世界のサノアツ」さんは、ピッチを取るか、ストライドを取るか、というランナーの永遠の悩みに考察を与えています。

・トップランナーのピッチ回数
・ピッチは180歩/分が理想
・トップランナーのフォームを振り返る

面白くなってきました!


ここまでのストーリー

「還暦サブスリー」への挑戦① 宣言
「還暦サブスリー」への挑戦② トレーニング方針
ランナー諸君、チャリダーは次元が違うのだ
体幹トレーニング考
日々のボディケア
達成率0.0054%の意味
外部脳を使う


付録

三河屋幾朗という生き方
Quoraで回答:閲覧数150万回の三河屋幾朗
ダブルインカムからシングルインカムへ:2012.11.23
ダブルインカムからシングルインカムへ2:2013.12.14
快感:社会の鎧を脱ぐ:2014.2.1
シュフ主夫ばんざい:2013.12.17
妻への感謝:2018.7.23
3時ラー なるもの:2012.11.1
英語は40歳を過ぎてから:2018.3.28
日本縦断16日間:2010.6
Mt.富士ヒルクライム:2008.6
全日本Mt.サイクリング・乗鞍:2008.8
自転車でのトレーニング
自転車へのこだわり

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