精を射す｜愛に溶けていく

その瞬間
心地よさは、突然命の真剣勝負に変わる
 
思いやりも気遣いも
およそ人間の文化的なものはそぎ落とされ
生身の命が私の中に入ってくる
 
彗星のようなスピードと
ビッグバンの直前の飽和状態で
体当たりしてくる惑星のように
 
抗うことも、逃げることもできず
私の身体は歓喜する
 
命の渦に巻き込まれ
何かに完全に破壊されつくされ
なすすべのなさに
私の精神は官能する
 
どこまでも奥へと
命の中心へと侵入しようとするあなたを
私は強く抱きしめ
全てを飲み込もうと誘い込む
 
二人はもはや人間の形を忘れた
生の衝動
 
粉々に壊れたあなたと
散り散りに放たれたわたしの
生と生とが破壊の中で融合する
 
そこは何も存在しえない
完璧な愛の無空間
 
あなたが精を射す衝撃は
私の宇宙を振動させ
命が入り込む隙間をつくる

 創造の源
 
私はあなたが放った全生命を受けとめて
愛の衝動が全てを育む
 
かくして命を差し出し
全てをやり終えたあなたは
濃いコーヒーを飲みたいなと思いつつ
まだ漂っている私を抱きしめてくれる

（Photo: ガラス造形作家　狩野智宏氏の作品Amorphousより ©MikaRin）

狩野智宏氏の作品（宇宙です）

ガラス造形作家 狩野智宏 作品集 【KANO TOMOHIRO GLASS WORKS】-cosmogony-