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#小説

我喜歡你(下書き供養)2019/11/23

「おまえのこと好き」
ごめん、なんて愛の言葉の次に謝罪がついてきて、驚いてしまった。
”まあ、いつものことか。”なんて、無理やり腑に落とした。
この人は自己肯定感が欠乏しているから、自分自身のことを受け入れられない人間なのだ。
だからきっと、戸惑っているのだと思う。
自分を愛せないのに、他人を愛するというのはとても複雑だと、わたしは考える。
自分自身を愛せないから、自分が愛しているひとから好かれる

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落ちて生く

落ちて生く

元通りになることはない。
壊れてしまったものは、元通りにはならない。
頑張って作った砂の塔は思ったよりもあっけなく、人差し指で触れただけでさらさらと崩れていった。

ーーーーー

熱を持ったノートパソコンのように、頭がとても熱くて、バグを起こしたかのように頭が回らない。

コップに注いだ液体を一気に飲んで、体を冷ます。

睡眠導入剤を4日分ほど、アルコールで流し込んだ。
あとは眠るだけ。
ここ最近

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よみもの「鍋底の焦げでも食ってろ」

よみもの「鍋底の焦げでも食ってろ」

喫煙所。隣は非喫煙者の女友達。
吸わないのになんでここにいんの。外で待ってればいいのに。

彼女は突然、軽く音を立てて息を吸って、なにか深刻そうな顔して
「さいきん、貧血がひどい」と、ゾンビみたいな顔して嘆いた。
うん、おまえ明らかに貧血って顔してるよ。

「なんで?夜ふかしでもしてんの?」
「いや、わかんないけど」

心底どうでもいいような気もしているけど
なんだか放っておけない彼女に
「明日さ

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尖った芯

尖った芯

先がつん、と尖っていた鉛筆の芯は、絵を描くごとにどんどん丸くなっていく。カッターナイフでまた削り、尖らせて、また描き始める。
しばらく描いていれば、また丸くなる。さあまた鉛筆を削らねば。と、その繰り返しで白紙を埋めていく。すこし余白を持たせると雰囲気が出る。
歌を作るのもたぶんそれと同じようなことだと思った。

わたしは「幸せは途切れていく」と、「ゆうやみ」という歌の歌詞に書いた。
その曲はまだ製

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ワインレッドの艶、指先に。

あの娘の爪はいつも派手。
ネイルアート、とかナントカ。あぁいうのしてる子は大人に見える。
わたしもああやって、爪に色を乗せれば大人になるのかなぁ。なんて考えて、コンビニで血豆みたいな色?多分ワインレッドというもののネイルを買った。
コンビニ袋をガサガサ言わせながら帰宅する。
心はなんだかほくほくしている。

ブラックコーヒー

ブラックコーヒー

喫茶店、奥の席。ついてすぐに注文。

アイス…えっと、ブラックでお願いします。

すっきりと、苦い。少しだけ酸味があって、そして奥が深い味。
この琥珀色の飲みものはいつも、アイスの無糖と決めている。
と、彼は言う。

「苦いな」
「なら飲まなきゃいいじゃん」

「いや、いいんだ」

「じゃあ文句言わないでよ」

「文句じゃねえよ」

わたしのは、お砂糖たっぷりで、ミルクもたっぷりだ。

この男のい

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