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『バクマン。』からみる”有能な編集者”

いい編集者ってなんだろう?できる編集者ってどんなだろう?そんなことを思いながら、ライターを目指す過程でなんとなく編集の仕事を始めて早4年。

スケジュール管理ができることは最低限として、必要とされるスキルがあまり明確ではなく、必須の資格などもない(あれば分かりやすいのに)編集という仕事。人脈があると良い、なんて言われたこともあったっけ。。

先輩を見ながら現場叩き上げで学んだ(学んでいる)私は、未だに自分が編集としてちゃんとやれているのか、自分に合っているのか、よく分からないです。編集ってなにやるの?と聞かれるとコレという言葉がでてこない。

編集の仕事を2つの職場で経験していますが、職場によっても求められることはほとんど違っていました。求人の時、「編集&ライター」となっていた1つめの職場、「編集アシスタント」となっていた2つめの職場。どちらもフリーマガジンを作る仕事なのですが、ひとくちに編集といっても、別物と考えなければやっていけないくらいです。

最近、なんとなく『バクマン。』を観始めて、シーズン3全75話もあったのですが、面白すぎて1週間ほどで観終わってしまいました。

中学生の真城と高木という男の子ふたりが、週刊少年ジャック(←漫画だとジャンプみたいですが、アニメだとジャックでした)での連載とアニメ化を夢見て、仲間と切磋琢磨してジャック1の漫画家を目指していく物語です(すごくざっくりいうとですが)。原作はデスノートの大場つぐみさんと小畑健さん。有名な作品なので詳しくは省略しますね。

で、『バクマン。』が私に刺さったポイントとしては、漫画家と伴走するジャック編集部の皆さんの言葉や行動でした。編集長・副編集長をはじめ、若手からベテランまで個性豊かな編集者が登場します。これまた編集といっても、私がやっている仕事とは全く違うといっていいものでした。広告代理店や一企業が販促のために製作するフリーマガジンとは違い、作るものは漫画というひとつの「作品」です。『バクマン。』は出版社における編集のお仕事について、学ぶところが多いと思います。

作中では、できる編集者として描かれるキャラクター(漫画家から言わせればアタリの編集者)と、力不足の編集者として描かれるキャラクター(ハズレの編集者)が出てきます。今回はできる編集者の服部(哲)さんと吉田氏の「できる編集ってこういうことなんだよなあきっと…(遠い目)」と思った言動を少し書いておきます。ネタバレ含むのでご注意ください。


1、作品と人を見極めるセンス

できる編集者の服部さんは、中学生の真城と高木が初めて持ち込んできた作品「ふたつの地球」を読んで、ストーリーは漫画というより小説だし、絵も漫画というよりデッサンだ、と指摘しつつも「3年後には新妻エイジ(真城・高木の1つ年上の天才漫画家)を超える存在になる」と確信します。

その後も、真城たちの描きたいもの、やりたいことややりたくないことに耳を傾けながら、それをそのまま受け入れてしまうわけでも突っぱねる訳でもなく、実現可能なポイントを一緒に探りながら文字通り二人三脚(三人四脚?)で作品を最後まで作っていきます。真城たちの言動をみて信用に足る子達だと判断し、なるべくふたりが自由でいられるように編集部にかけ合う姿が本当に印象的なキャラクターです。

作品の終盤で「入社一年目の時、鳥島専務に言われました。会社と作家が対立した時、作家側に立つのが真の編集者だと」と編集長に言うシーンがあります。厳密には鳥島さんの言葉ですが、服部さんはその言葉を胸に刻んで編集という仕事に取り組んでいたんだと、腑に落ちたセリフでした。

2、いいことも悪いことも本音で話す

「(計算でストーリーを練っていく高木に対し)大ヒットを飛ばせるのは圧倒的に計算じゃない人なんだ」「漫画家は必ず編集の上を行かなければならない」「作品をヒットさせるのって結構博打なんだ」「個人的にだが(港浦の意見を取り入れて作ったギャグ漫画「タント」は、二人の持ち味を活かせていないから)面白くない」など名言の多い服部さん。

漫画家に対し、作品に対し、商業誌で漫画を描くということに対し、会社の思惑に対し、いつでも自分の考えを持ち、作家と真摯に向き合い、本音で話し合い(打ち合わせ)をします。作家も作品も会社も大切にして、どれも諦めたりぞんざいに扱ったりしない、本当に大人な人という印象です。

編集があちこちから板挟みになる仕事なのはどの会社でも同じだと思いますが、それが嫌になる時が私はあります(笑)。けど、時に博打を打ちながらも、うまく調整を重ねて面白い雑誌をつくることこそ、編集者がいる意味なんだと改めて思わされます。

そしてそれに必要なのは、作家ときちんと本音で話し、信頼関係を自分から築いていける力。会社には全てを話せなくとも、筋をきちんと通す力。どちらも私にはないなあ。。。。

3、「仕事と恋のスケジュールは俺に任せろ」

平丸さんという漫画家の編集担当・吉田氏の言葉。平丸は元会社員で、会社が嫌で漫画を描いてみたら1ヶ月で面白い作品を作ってしまって漫画家デビューするも、漫画もできることなら描きたくないという仕事大嫌い人間。基本的にモチベーションが低くて、目を離せばすぐサボる。でも程よくネガティブなプレッシャーを与えることでアイデアが湧くタイプで、なんだかんだ主人公たちよりも先にアニメ化しちゃったりする。

そんな平丸をうまく裏で操っていたのが吉田氏です。平丸から、蒼樹さんという女性作家のことを好きだと相談されるやいなや、蒼樹さんの秘密情報を週一で持ってくるなどして、平丸の創作活動のモチベーションを保とうとします。平丸自身も、恋心を利用されていることに少し不満げではあるのですが、なんだかんだ吉田氏のことも好きなので(?)言うことを聞いてしまう。

平丸が蒼樹さんを遊園地デートに誘い、いよいよプロポーズする日、植木の陰からこっそり見守り、結ばれたふたりを見て号泣する吉田氏。きっかけや理由はなんであれ、こんなふうに公私に渡って信頼関係を築いていた平丸&吉田のこの関係こそ、編集の仕事の鏡だなあと思います。

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これから編集という仕事を目指す人、編集という仕事で悩んでいる人、ぜひアニメでも漫画(Kindleもありました)でもいいのでみてみてください。現実にはこううまくはいかないのかもしれないけど、勉強になる部分は大いにあると思います。書籍、コミックの編集者であれば特に!

わたしもお仕事がんばります。


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