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義務感しかなかった「毎朝の掃除」を「私のお店のオープン準備」と定義し直したら、心満ちる習慣に変わった話

ある日の夕方のこと。子どものヘアカットに同行しました。

そこはかつて取材したことのあるお店。取材した瞬間にファンになり、プライベートで通い始めて、気づけばもう3年。

何がいいって、とにかく「私」を大事にしてくれる感じがたまらない。そもそも美容院って、ホスピタリティがあって当然。でも、そこの声掛けやさりげない気遣いは、特別に絶妙とでもいいましょうか。

私がグッときたもの。

たとえば、鏡の前の椅子に腰かけたときに、膝の上にそっと置かれるふかふかのクッション。――人って、重い掛布団の方が安心感を得られるっていう研究結果があるんですって。それに関係するのかどうかはわかりませんが(!)、膝の上にクッション1個あるだけで、自分の居場所がグッと定まる感がある。膝の上に高さが出て、施術中に雑誌も読みやすいしね。

たとえば、じっくり丁寧なシャンプー。一般的なサロンの平均時間は10~15分ほどなのに対して、このお店は25分がデフォルト。シュワシュワした炭酸泉(?)で汚れを落としてくれたり、ヘッドスパさながらの丁寧なケアをしてくれたりする。

たとえば、グリーンに満たされた空間。ふと目をやると、風にそよそよ揺れる観葉植物たちがあちらこちらに。ヘアスタイルを整える「作業のための空間」ではなく、心の内側から解放されて「よし、がんばろう」というエネルギーをもらえる場。

ほんの一例だけれど、たとえばこういう小さな小さな瞬間が散りばめられたひと時は、ものすごく心地いい。「自分のことを大切にする」って、具体的に行動しようとしてもどうしたらいいのかよくわからない。けれど、このお店で過ごすと「あぁ、こういうのが自分を大事にするってことなんだなぁ」って思う。そして、「自己肯定感が上がるって。これね」とも。

閑話休題。

そう、そんな大好きな空間に子どもの付き添いで足を運んだ先日のこと。

子どももこの美容室が大好きですっかりご機嫌なので、「付き添い」と言っても送迎が私の役割。施術中はレセプションスペースでの一人時間です。しかも時は夕方。窓の外もちょっと静かになって、まるでシェルターの中にいるよう。俗世間とのほどよい断絶感!本を読み手帳を書く合間に、両手を天井にグーっと突き出して伸びをしながら、ぐるりと店内を見回しました。

そこかしこにレイアウトされたグリーンたちはどれも瑞々しい(私は枯らす名人)。決してモノが少ないわけではないのに乱雑ではなくて、センスのいいアイテムの隣には、子どものお絵描きや折り紙。

ちゃんとしつらえられた空間っていいよねぇ。
植物まで大切にお手入れされている感じ。
毎朝オープン前に、お客さまを気持ちよくお迎えするルーティーンがあってこそだよねぇ。

そこではたと閃いた。「私も毎朝の『お店のオープン準備』をしてみたらいいんじゃない?」と。

「オープン準備ごっこ」というラベルを貼ったら、プロの目線で思いを込めた作業になった!

数年前からインスタで飽きるほど目にするようになった「キッチンリセット」という言葉。そこに透けて見える「丁寧な暮らし」。

――こそばゆい。こそばゆいんです、私!!!

家族に「剛腕」と呼ばれる私は、じっくり丁寧に、が苦手。「丁寧な暮らし」って、全然私に馴染まない!!!私らしくなくて恥ずかしい!!!!!

そんな性格に加えて、あれこれやりたいことをさっさと始めたい人間。故に、毎朝の掃除は最低限。掃除機をかけるのは必ずではあるものの、あとは時間があったら&気が向いたらやる(でも大抵気が向かないからやらない)というレベル。

が、美容院の閃きで、私は生まれ変わった。
「私のお店のオープン準備ごっこ」という全く違うモチベーションで、毎朝の片付け&掃除にとりかかると、日々あちこちきれいになっていく。しかも、楽しくそれができるからすごい。

キッチン、洗面所、トイレといった水回りはこれまでも最低限掃除していたけれど、毎日必ず、それまでよりもう少し広く、丁寧に磨くのが完全なるルーティンに。

さらに、「ごっこ」を始めて加わった目線がこちら。

 OKYAKUSAMAはなんて言うかな?

※注:「YAZAWAはなんていうかな?」のイメージで再生いただきたい!!!


「家事」だと義務感に満ち満ちる。「丁寧な暮らし」は全くしっくりこない。そんな私が、「お店のオープン準備ごっこ」を始めた瞬間に、「いつものここも、もう少し丁寧に磨きたい」「きょうはあそこをもうちょっときれいにしたい!」に変わったのです。

ここまで聞くと、「来客に備えて掃除する」あのイメージに思われるかもしれません。でも、違うの!違うですよ!!

来客の予定もない架空の店。お客さんは、言うなれば、私(そして家族)です。で、それをそのまま「私のために」と思えば、ここまででいいかと妥協する、人間だもの。

でも、普段の私ではない私が「OKYAKUSAMA(=普段の私も含めた誰か)を思って掃除をする」となると、「喜ばせたい、気持ちよく過ごしてほしい」という思いと程よい緊張感につながる。それまで風景と化していた汚れも、「お店の経営者というプロ」の目線で見ると見逃がさなくなる。

そして、結果的に、そこに迎えられたOKYAKUSAMA(=私)は、幸福感と自己肯定感に満たされるように。

だって、それまで気にも留めなかった、けれど事実として乱れていた部分が1か所きれいになっているんですもの!自分では気づかなかったけれど、確かにそこに存在していたモヤモヤが1日1か所拭い去られることで、自分でも笑えるくらいハッピーになるのです。

先日効果てきめんだったのは、ほぼ私しか触らないキッチンコンロのスイッチ。何年も放置されて油が貯まっていました(そしてそれを気にすることもなかった)。そしてある日「OKYAKUSAMAはここがきれいになっていたら気持ちいいだろうな」とふと思い、ちょっと丁寧に拭き上げてみた。すると、その日の夕方からそのスイッチを操作するたびに、ものすごくうれしいんです、私が。掃除したのは私なんだけど、まさに別人格にもてなされた気分。

ある日は、ウォシュレット付きの便座を根こそぎ外して、隙間に溜まった汚れを久しぶり(いや、初めてなのか!?もはや記憶が曖昧)に隅々まで掃除した。
またある日は、壁紙についた小さな汚れを一つ一つ拭いた。
また別の日には、巾木の汚れを拭った。

一つ一つは小さいし、毎日たっぷり時間がとれるわけでもない。それでも、OKYAKUSAMAのことを思ってその日にできる限りの100%で掃除できるようになったのです。しかも楽しくて、うれしい!


そんなこんなで、この「ごっこ」が続くこと1カ月。もう胸を張って「私の新習慣」ということができます。そしてそんな自分が、前よりちょっと好きだ!

まだまだ散らかった我が家ですが……それでもこのひと手間を、新しい喜びに変えながら。今日も今日とてぶつぶつと。

OKYAKUSAMAはなんていうかな?

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