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魚が捌けないわたしと翁とお姫さま

昼過ぎまでは、すごく天気が良かった。
夕方からゴロゴロ鳴り出してきたから、慌てて洗濯物を取り込んだ瞬間に嘘みたいな豪雨。

間一髪だった。

**

スーパーに買い物に行ったら、
美味しそうな“ち鯛”があった。

プライスカードには『鯛めしにどうぞ!』とか書いてあるものだから、ついつい手を延ばして買ってしまったけど、

わたし...魚とか捌けないんだった...。

慌てて、YouTubeで捌き方を勉強しました。
北海道出身なのに魚とか捌けないなんて!
と、よく言われるのですが、大抵は父が捌いていたので、それに甘んじていて、教わることもしなかったという。

そんな後悔の念を抱きながら家に帰る途中、
おじいちゃん(らしき人)とお孫さんが何やらはしゃいで歩いているのを見かけた。

天気が良く陽が照っていたので、おじいちゃんがお孫さんに帽子を被せようと、お孫さんの頭に帽子を乗せると、お孫さんが笑いながら、風に吹かれたフリをして頭を降って帽子を落とし、それをおじいちゃんが『被せ方が悪いのかなぁ』と言って、また頭に被せると、お孫さんがまた笑いながら頭を降って、

落とす→被せる→落とす→被せる→落とす

というのを繰り返してて、最後はおじいちゃんにバレて、

『あーわざとだなぁ~』

と言われていた。

そんな光景を微笑ましく見ていたが、
わたしも昔似たようなことをお祖父ちゃんにしていたことを思い出した。

田舎育ちのわたしは、よくお祖父ちゃんがリアカーを引っ張って近所の知り合いの人の家に薪をもらいに(お祖父ちゃんの家には暖炉があった)行くのに一緒について行っていた。

リアカーの荷台に乗って一緒に薪を運ぶのを手伝っていたりしたのだか、リアカーの荷台に乗っていると、なんだか、馬車とか篭とかに乗っている、
“お姫さま”のような気分になってすごく楽しかったのを覚えている。

そんな浮かれた気分で乗っていると、お祖父ちゃんが、

『危ないから、ちゃんと起きてなさい』

と、後ろのわたしに向かって注意するのを
ふざけてわざと無視して寝たフリをして、
小さくクスッと笑うと、振り向いて起きているのを確認したりしていた。
それがなんだか面白くて、

寝たフリ→振り向いて注意→寝たフリ→振り向いて注意

というのを繰り返していた。

今となっては何が面白かったのか謎。

ある日、また同じようにそんなことを繰り返して、お祖父ちゃんをからかって遊んでいたら、
ホントに眠気が差して、いつの間にか寝てしまっていた。

起きたら、辺りは真っ暗で全く知らない所にいた。

お祖父ちゃんの姿もなく、ポツンとリアカーの上に乗ったわたしだけ取り残されていた。

急に怖くなって、置き去りにされた!という思いと、もしかしたら、捨てられたのかもしれない!という恐怖が一気に押し寄せてきて、怖いのと悲しい気持ちがごちゃ混ぜになった状態で、うるうるしていたら、お祖父ちゃんが笑いながら出てきた。

安心と騙された悔しさとなんだかわからない感情の爆発が押し寄せ、びゃーびゃー泣き叫んだという切ない思い出がある。

今日見かけたあの子には、

からかいすぎると、
わたしみたいに痛い目にあうよ!(笑)

ということを教えてあげたい気持ちを胸に秘めつつ家路につくのであった。

おしまい。

<今日のうた>
耳に入りやすい声質。


hiro (島袋寛子)「in season 」

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