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和×現代×学園ファンタジーの傑作〜荻原規子『RDGレッドデータガール』

夜が長くなると、大好きな小説を読み返したくなります。

荻原規子『RDGレッドデータガール』(角川書店)は、もう何度読んだかわからない、和風ファンタジーの傑作です。

主人公は、熊野古道の神社で生まれ育った引っ込み思案の女の子、泉水子(いずみこ)。
実は秘められた力を持つ彼女が、謎の多い高校で学園生活を送ることになり……という設定だけで、もう白ごはんが3杯くらい食べられるのですが、泉水子の脇をかためる登場人物たちがまた、とびきり魅力的。

泉水子の幼馴染で、何でもそつなくこなす優等生の少年、深行(みゆき)は羽黒山で山伏の修行をしているし、
ルームメイトで泉水子の親友になる美少女、真響(まゆら)は戸隠の、忍者の家系に生まれている。

ファンタジーなので、ストーリーは現実からどんどん飛躍していくけれど、泉水子や周りの子たちがあくまでも等身大で、高校生らしい感情の揺れや成長を経験するから、どんどん引き込まれてしまうのです。

生徒会の人間模様があったり、学園祭の日に「事件」が起こったりと、学園小説としての魅力も満載。
中でも5巻『学園の一番長い日』のクライマックスで深行が泉水子にかける一言は、繰り返し読みすぎてほぼ暗記しているのに、何度読んでも心がふるえ涙がこぼれます。

いったいどうしたら、こんなに魅力的な人物を生み出せるんだろう。
酒井駒子さんが描く表紙も、泉水子の魅力を増幅させていて、とても好きです。

ストーリーを知っていてもページをめくる手が止まらない本と出会える幸運は、そうたびたび訪れるわけではないので、これからも大切に読んでいきたいです。
ことあるごとにいろいろな人におすすめしているのですが、特に本好きな10代の女の子に、ぜひ読んでほしいなあ。
そして魅力を語り合いたい。

あっという間に最後まで読んでしまったので、今夜からまた1巻に戻って読み直します!

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