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教育や子育てのおすすめ本~教育って何だろう~

そもそも教育とは何か、教育における問題点は何か、今後の教育はどう変わっていくのか、オルタナティブ教育とは、など。主に小学校~中学校の教育について、専門家ではないけど、教育についてもう一歩踏み込みたい人が手に取りやすい本をご紹介します。

ご紹介する本の中では、様々な研究結果が取り上げられていますが、この記事では敢えて本の要点だけ紹介します。「○○する子は××になる」とネガティブな影響を示す研究結果を見て、「うちの子のこと!?」とショックを受ける方もいるかもしれませんが、個別の研究結果はあまり気にしない方が良いです。人間は一人一人違います。一つの尺度だけでは測れません。

どの本にも共通しているメッセージは、一人一人に合った学び方がある、そのために大人はどんな環境を提供してあげられるか、ということだと思っています。子どものために大人はどんな行動ができるかのアイディア集だと捉えて読まれると良いのではないでしょうか。


【教育哲学


「学校」をつくり直す

公教育の本質は、全ての子どもが自由(生きたいように)生きられる力を育むこと。自由に生きられる力を得るには、お互いの自由を認め合える土台が必要だ。現在の教育システムの「みんなで同じことを、同じペースで、同じように(一斉教育)」から、「ゆるやかな協働性に支えられた個の学び(探求/プロジェクト型教育)」への転換が求められる。また、学校教育のカリキュラムの軸が探究に向かっているなら、教員養成のカリキュラムも探究に向かうべきだ。

メモ:一人一人が自分で出来ることに気づいて行動することが、教育システムを変えるきっかけになるという点が印象に残っています。様々な立場で教育に携わる人たちが、お互いの現場の知見を持ち寄って、交換し、対話することで、理解し合えるようになる。一番根気が要るのは「対話」です。


ライフロング・キンダーガーデン

教育を、遊びながら学ぶこと(クリエイティブ・ラーニング・スパイラル)を通して、子どもたちが創造的思考者として育つのを助ける場へ。創造性は実践とともに進化する。子どもが自分のアイディアを表現できる機会を与えることで、子どもの秘めたる才能が成長する。表現力を鍛えるのに最適なのが、プロジェクト型アプローチである。

メモ:レズニックはScratchの発起人。プロジェクト型のアプローチで最重要なのは、プロジェクトが学習者の関心につながるような方法で行うこと。先生がしたいこと、ではないんですね。友だちや様々な大人と関わり合いながら、子ども一人一人が安心して力を発揮出来るようなサポートをすることが教師に求められる役割です。


「学力」の経済学

個人的な経験に基づいたノウハウではなく、発見(エビデンス)に基づいた教育を実践すべき。海外では教育の因果関係を明らかにするための研究が進んでおり、科学的根拠に基づいて教育政策を打ち出している。一方、日本の教育政策は、権威ある人の経験に基づいている。これからの時代、非認知能力(自制心、やり抜く力)こそ社会に出て必要な力である。非認知能力は子どもの人生の成功に長期的に関わること、トレーニングによって伸ばせることが研究で明らかになっている。

メモ:教員の質と教育の因果関係に関する研究が日本では進んでいないそうです。他著者の本でも指摘されていますが、教育経済学の知見からも、教員養成課程、教職採用についても大きな転換が必要だとされています。


失敗の科学

失敗を認めない環境において、人は失敗を隠すようになったり、失敗を恐れて曖昧なゴールを設定しようとする。失敗は学習の情報源である。失敗から上手く学ぶ組織は、非難を避け、トップダウン方式(仮説の検証)とボトムダウン方式(実践の失敗の選択)のバランスの取れたアプローチを取っている。また、仮説の検証においては、反証(≒批判的思考)が重要だ。

メモ:必ずしも学校教育に焦点を当てた本ではありませんが、教室運営や教育政策と重なる部分があります。全体の2/3程度が航空業界や医療業界の事例紹介になっているので、要点を把握するだけなら読み飛ばしても。


【国語力】


AI vs. 教科書が読めない子どもたち

AIに仕事を奪われないためには、AIが苦手な読解力を鍛えておく必要がある。著者の調査によると、中学生の半数は、中学校の教科書が読めないと判断される。将来AIに仕事を奪われない人を増やすためには、「中学校の教科書が読める子ども」を育てることが急務である。

メモ:教科書が読めない子どもは、自分で調べたり、説明したりすることが出来ないので、アクティブラーニングは成立しません。形式的なドリルばかり解かせるのも、問題を読まない子どもを作るのを助長していると言います。アクティブラーニングの前に読解力が必要な子もいますが、既に読解力がある子もいます。苫野さんの本で出てくる「協働性に支えられた個の学び」の必要性を感じます。


大人のための国語ゼミ

相手のことを考えるようになると、分かりやすく説明する力が鍛えられる。分かりやすく説明する力が身に付くと、相手のことを考える力も鍛えられる。この「正のスパイラル」が国語力を向上させる。何かを主張する際に、自分の見方を絶対視してはいけない。自分の見方が相手に共有されているか(議論の前提)を必ず確認し、言いたいことを整理してきちんとつなごうとすることが大事。議論において水掛け論にならないためには、相手の論証を検討する必要がある。そのために、相手の主張の中心を見る力、的確な質問する力が大事だ。

メモ:批判的思考や論理の初めの一歩として超読みやすい本。増強版でも無印でも差はないと思います。当たり前の内容かもしれませんが、実際この当たり前のことを言語化できる大人がどれだけいるでしょうか。そして、このようなことを国語の授業で学んできたと言えるでしょうか。


【経験談】


麹町中学校型破り校長 非常識な教え

社会で活躍するためには、非認知スキルが必要だ。大人が出来ることは、子どもが自分に合った学び方を見つけられる安全な環境を作ること。子どもが興味を示さないことを強要するのは、子どもの主体性や意欲を奪いかねない。一斉教育ではなく個別最適化された授業への転換が必要だ。子ども達が、人はみな違うと理解すること、感情をコントロールすること、対話を通して合意形成する術を学ぶことは、多様な社会を生きるために役立つ。

メモ:本書は理論ではなく、実際に行った施策(経験)に焦点を当てたものです。とはいえ、他の本と照らし合わせると、理論や研究に裏打ちされている部分が多いにあることが分かります。


私たちは子どもに何ができるのか

アメリカの貧困層の非認知能力を伸ばすためのアイディア集である。非認知能力は、子ども自身ではなく、子どもを取り巻く環境に影響される。つまり、周囲の大人がどう対応するかが重要だ。子どもと愛着(アタッチメント)を築けない親は、親自身の心に問題を抱えていることが多い。しかり、十分サポートが提供されていない場合もある。

メモ:アメリカの話ですが、貧困家庭に限らず、学力に問題を抱えている子どものサポートに役立つ事例や理論が多数紹介されていると思います。ご興味があれば、デシ&ライアンの自己決定理論、ドゥエクのマインドセットなど読まれてみては(ただ自己決定理論に関する書籍はほぼない)。


「賢い子」に育てる究極のコツ

好奇心こそが子どもを賢くする。親に出来ることは、好奇心の種をまき、子どもが夢中になれるものを見つけたら、その子に合った取り組み方を見つけてサポートすること。好奇心があれば、努力を努力と思わずに続けることができる。努力の差は能力の差となり、結果として賢い子が育つ。周囲からの評価(成績)は後から付いてくる。

メモ:著者は自身の加齢研究の知見から、自身の教育実践につなげています。脳の健康を保つためには、好奇心を持ち続けることが大事。親が好奇心旺盛でいられれば、自然と好奇心旺盛な子どもが育つのかもしれません。

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