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スピンオフ小説・憧れの初恋相手、M先輩(前編)

第 1 章

アタシは小学6年生の、福本朋子。

もうすぐ中学生になるんだ。
友達はみんな、中学校に入ったら怖い先輩がいて、何か部活に入らなきゃいけないって、ちょっと中学生活に怯えてるんだけど、アタシは早く中学生になりたいって思ってるんだよ。

実はね、アタシの住んでる社宅の、隣の棟に、アタシが進学予定の中学校に通ってる男子の先輩がいるの。

もう分かっちゃったかな?
うん、アタシの初恋の人なんだ。

それまで、幼稚園の時とか、小学校のクラスとか、好きな男の子はいたにはいたけど、こんなに胸がキューンってなった恋は初めてだったの。

なんでかっていうと、アタシは児童会の役員をやらされてて、時々小学校から帰るのが遅くなる時があったのね。

先輩を見掛けたのもその時。

アタシは1人で帰ってたんだけど、先輩はアタシのちょっと前を歩いてて、その時は「あ、隣の棟に住んでる中学校の男の人だ」くらいしか思わなかったの。

だけどその時、先輩がビックリするようなことをしたんだよ。

道端で、車に撥ねられたのか、スズメが飛ぼうしてるのに飛べなくて、羽をバタバタさせてたの。

そのままだと絶対にまた車に轢かれちゃって、今度は死んじゃう…。

可哀想って思ってたら、前を歩いてた中学校の男子の先輩もスズメに気付いて、車の流れのスキをついてスズメを助けに行って、ハンカチで包んで、絶対車には跳ねられない草村にそっと置いたんだ。

ちょっと先輩の声が聞こえたんだけど、
「ごめんね、スズメは飼っちゃいけないから、助けてあげることしかできないけど、ここなら安全。君の餌になるものも多分いるだろ。頑張って元気になってね」
とスズメに優しく話し掛けて、何事もなかったかのようにまた社宅へと歩き始めたんだ。

アタシは電柱の影に隠れて、そんな先輩の行動をずっと見てたの。

もう、アタシの心は一瞬で中学校の男子の先輩に持って行かれちゃったよ!💖

『なんて優しい人なんだろう💖』

先輩の姿が見えなくなってから、アタシはスズメの場所へ行って、スズメがどんな様子か確認したの。

そしたらハンカチはそのままスズメの座布団みたいになってて、スズメは羽を休めて、キョロキョロ周りを見てた。
割と元気そうだったから、きっと治ると信じて…。

だけど先輩、ハンカチをスズメのために1枚犠牲にしたんだ!

お母さんに怒られちゃうんじゃないのかな?

でもそのハンカチをスズメのために1枚あげちゃう行動を見たら、アタシの心はますます中学校の男子の先輩に持って行かれちゃった~(⋈◍>◡<◍)。✧♡

その日以来、アタシの心の中は、先輩で一杯!

寝ても覚めても…って感じだったの。

これが、初恋なんだろうねっ💖

アタシに、小学6年生で、胸がキュンとなる初恋が来てくれた♬

どうせならもっと先輩のことを知ってから、中学校に入りたいな♪

第 2 章

アタシの友達が色々と教えてくれて、アタシの隣の棟の男子の先輩は、今2年生で、吹奏楽部で部長してるってことまで分かったの。

友達は、
「えーっ、年上の男の人を好きになったの?!」
とか、
「アタシも中学校に入ったら、彼氏ほしい~」
とか言いながら、協力してくれたよ。

大体、中学生のお兄ちゃんかお姉ちゃんがいるお友達が調べてくれて教えてくれたの。

名前は、Mくん…いや、M先輩。

実はちょっとホッとしたの。もし3年生だったら、アタシが中学に入ったら入れ違いで卒業しちゃうところだったから💦

だからアタシは、中学に入ったら、吹奏楽部に入ろうと決めたの。
楽器なら少し興味があったし、ピアノも習ってたし。

ただお友達が調べてくれた情報では、先輩がどんな楽器をやってるかまでは分かんなかったのね。
だから体験入部ってのがあるらしいから、その時にM先輩がどんな楽器してるか見てみたいな♪

アタシの小学校とM先輩の中学校は、国道を挟んで殆ど同じ場所にあるから、卒業する同級生は、国立や私立に行く子以外は、みんなそのまま同じ中学校に上がるんだよ。

だからM先輩が小学校にいた時も、登下校で一緒になったりしたこともあるはずなんだけど、全然その時は意識すらしてなかったから、全く先輩のことなんて覚えてないの。
アタシの小学校が、集団登校してたら分かってたかもしれないけど。

無事に小学校の卒業式も終わって、中学校の制服とか体操服とか通学カバンを揃えてると、少しずつ憧れの中学校生活が実現に近付いてるって気がして、毎日ワクワクしちゃう(◍•ᴗ•◍)

あっそうそう、この前買い物に行ったら、春休みなのに制服を着たM先輩とすれ違ったの。
きっと部活に行ってたからだと思うんだけど、アタシ、勝手に照れちゃった(*ノェノ)
変な女の子、なんて思われなかったかなぁ、大丈夫かなぁ💦

そうこうしてる内に春休みも終わって、いよいよ中学校の入学式の日になったよ🏫
嬉しくて、お母さんに早く行こう、早く!って急かしちゃった(*ノω・*)テヘ

クラスに入っても、小学校の時からの知り合い、友達ばかりだから、全然緊張しなかったよ。
ただ、他の小学校から入学してくる子もいて、少し知らない子もいたけど、きっと直ぐにお友達になれるよね(^_-)-☆

入学式では、吹奏楽部の演奏が、アタシ達を出迎えてくれたの。

(あの中にM先輩がいるんだ💖)

まともに吹奏楽部の方は見れなかったけど、ちょっとだけM先輩を近くに感じられたの。
嬉しかった〜(*´ω`*)

そして次の日の昼から、部活動説明会があって、その日から一週間、体験入部期間になるの。
M先輩が一生懸命に説明してくれてたけど、アタシは説明の内容より、先輩の声を聞いてたよ(*ノω・*)テヘ
その後、いよいよ部活動体験へ。
楽器に興味がある友達と一緒に、音楽室へ向かったよ!

《M先輩だっ!》

遂に、間近でM先輩のことをシッカリと見ることができた!
アタシの初恋相手のM先輩が、音楽室にいたよ(。♡‿♡。)
何だか大きな楽器を持ってるなぁ。

「朋ちゃん、アレはバリトンサックスっていう楽器なんだよ。だから先輩と近付きたかったら、サックスを希望したら良いよ」

一緒に音楽室に来てくれた、小学校からのお友達の梅ちゃんが教えてくれたの。
そっか、サックスを選べば良いんだね🎷

…でも、サックスは人気なのかな、次々と希望者が並んでるの。
お友達の梅ちゃんも並んでたから、一緒に並んだけど、梅ちゃんはアタシよりも何だか上手そうだなぁ。

「朋ちゃんと一緒にサックスに入れたらいいねっ!」

って言ってくれたけど、どうなるかなぁ。
ちなみにM先輩はそこにはいなくて、体験指導してくれてるのは女子のY先輩だったよ。

M先輩は、部長として遠くから全体を観察してるみたい。

やーっとM先輩に近付くチャンスを掴めそうになったけど、お話とか出来るようになるのはいつなのかな、お家も近いのに、いつお話出来るかな(。•́︿•̀。)

その後もM先輩を見てたんだけど、卒業して高校に進学された先輩らしき方のお相手とか、音楽室に来てみたけど、どうすればいいか分かんない子達のお話相手してたりで、練習は殆ど出来てなかったみたい。

その日の最後に、終わりの挨拶をされたのも、M先輩じゃなくて、副部長の女子の先輩だったし。

「1年生の皆さん、楽器経験者の方は割とスムーズだったと思うけど、経験がなくても、2年生、3年生がちゃんと教えますので、明日も吹奏楽部に来て下さいね。待ってます」

うん、明日からも頑張ろう!

第 3 章

体験入部期間が終わって、正式入部になったけど勿論アタシは吹奏楽部に正式入部の届を出したよ♫

お友達の梅ちゃんも、正式に入部してくれて、心強かったけど、アタシはサックスパートに入れなかったんだ…(╯︵╰,)
人気が高くて抽選になったんだけど、抽選に外れちゃったの。

代わりに選んだのは、ホルンって楽器。
カタツムリみたいな楽器で、吹き口が小さくて難しいんだけど、先輩2人は優しいから、何とか頑張ってM先輩に名前を覚えてもらいたいな♪

ちょっとムッとしちゃったのが、お友達の梅ちゃんもサックス吹きたいって応募して、サックスを吹けるようになったの。
梅ちゃんの方がM先輩に近付けるなんて、複雑…(。ŏ﹏ŏ)

でも梅ちゃんに聞いたら、M先輩のことは特に気にしてないって言ってたから、アタシの初恋はまだ可能性があるよね!

しばらくは大きな大会もないから、先輩たちはアタシ達の練習に付き合ってくれる感じだったよ。

結局サックスには、梅ちゃんと、もう一人女の子が入ったの。
Oちゃんって女の子が入ったんだけど、アタシ、Oちゃんと小学校の時に一緒のクラスになったことがあって、あまりいい印象がないんだ…。

なんかね、ぶりっ子って感じなの。

先生や男子の前では凄いいい子なんだけど、女子の前では言葉が乱暴だったり、いじめやすそうな子に先生にばれない程度の嫌がらせしたり。

中学に入って性格変わってたらいいけど…。
OちゃんとM先輩が付き合ったりしたら、アタシ、ちょっと許さないかも。

それで、新1年生部員が12名ってことで確定したんだけど、M先輩はちょっと暗い顔してるの。

2年生の男子の先輩たちと話してたけど、1年生部員に、期待してた男子が入らなかったみたい。
M先輩の前の部長さんの弟で、トランペットを吹いていて、体験期間中も確かにアタシも見掛けた男の子。

その男子が吹奏楽部じゃなくて、陸上部へ正式入部しちゃったみたいなの。

期待してた1年生男子が入らなくて、M先輩は落ち込んでたみたい。

でも1年生が正式入部して、今年度の吹奏楽部のメンバーが決まった最初の日、部活始まりの挨拶を副部長さんじゃなくて、M先輩がしてくれたの。

「改めて、皆さん、こんにちは。1年生の皆さん、正式入部してくれてありがとう!僕は部長のMです。皆さんには、部活説明会でお会いして、どれだけの新入生が来てくれるかな~って期待してました。12人の1年生の皆さん、楽器やってた子もやってなかった子も、みんな一緒に頑張りましょう。夏休みの終わりに、コンクールがあります。そのコンクールで金賞を取るってのが、一番の目標です。その目標に向かって、頑張りましょうね。何か悩みとかあったら、何でも僕に言って下さい。相談に乗りますからね。では今日から仲間として、頑張りましょう」

ワーッと拍手が起きて、M先輩は照れながら自分の席に戻ったよ。

アタシ、ずーっとM先輩を目で追っかけてたけど、気付かれたかな?

その後、顧問の先生が初めて挨拶されたの。
音楽の授業を何回か受けてたから、楽しい先生だって分かってたけど、改めて顧問の先生も、楽しい挨拶されてたよ。

「皆さん、こんにちは!僕が顧問のYです。1年生のみんな、吹奏楽部へようこそ!大歓迎しますし、更にお友達を連れてきてもらってもいいですよ。さてさっき、部長のMがエラソーに話してましたが、なんとMは、去年の今頃、1年生の皆さんと同じ立場でした。そう、2年生になってからの途中入部で、しかも楽器初心者だったんです」

えーっ、とか、1年生がザワザワしてた。
アタシも知らなかったから、ビックリしちゃった。

「でも、部長としてみんなの前でエラソーに挨拶しとったじゃろ?それだけMは、毎日物凄い熱心に練習して、あっという間に先に入っとった同級生に追いついたんよ。だからみんなも毎日部活に来て、一生懸命練習したら、先輩にすぐ追いつけるし、追い抜けるかもしれない。2年生、3年生もウカウカしてたら、1年生にすぐ抜かれるぞー。まあとにかく、みんなで毎日、楽しく明るく一生懸命に練習しよう!よろしくな」

アタシ、ビックリしちゃった!

M先輩って、2年生から吹奏楽部に入ったんだ…。
それで部長までやってるなんて、凄い人なんだ…。
雲の上の人かもしれない…。

いや、ということは、アタシも一生懸命練習して、まずホルンの先輩と仲良くなって、少しずつM先輩に近付くんだ💕
頑張ろうっと!

「じゃあ今日からしばらくは、パート練習が基本になります。合奏は、当面週一回…でいいですよね?先生」

Y先生が頷いてる。

「合奏は、当面は練習曲として、マーチを演奏します。楽譜はパートリーダーに渡してあるので、パート練習で使って下さい。マーチは体育祭で必ず演奏するので、いつでも演奏出来るように準備してね、ってな意味もありますから、頑張って練習して下さい。まあマーチは、ホルンは後打ちが多くてしんどいじゃろうけど、そこは許してつかーさい」

M先輩はそう言って、アタシの方を見たの!((ノェ`*)っ))タシタシ

いや、正確には、ホルンパートの方を見たんだけど、アタシ先輩と目が合ったように…いや、絶対に目が合ってる!合った!

もう今日はそれだけで大満足しちゃった(*´∀`*)

そして部活後は、M先輩と帰る方向が一緒だから、いつか一緒に帰れる日が来ないかな💖

「ただいま~♪」

「おかえり~。朋ちゃん、嬉しそうな顔してるね。いいことあったの?」

お母さんがそう聞いてきたから、ついアタシ、M先輩のこと言っちゃった。

「へぇ~、朋ちゃんも好きな男の子が出来る年頃になったのね。でもいきなり年上で、しかも隣の棟のMさんの息子さんとは思わなかったわ」

「え?お母さん、M先輩のこと知ってたの?」

「知ってるも何も、お父さんの上司がMさんのお父さんだもの。2年前に横浜から来られたんだけど、とても優しい上司で良かったって言ってたよ」

「えーーーっ、そうなんだ!」

だからM先輩のことを小学校で見かけたことがなかったんだ。
M先輩は、小学校まで横浜にいたんだ。すごーい!

また一つ、M先輩との縁が繋がったみたいで、何か嬉しいなっ。

お父さん同士が知り合いなら、もし先輩とお付き合い出来て、長くお付き合いして、もしかして結婚なんてことになったら、キャーッ💕(≧∀≦*)

「朋ちゃん、何考えてるのか分かんないけど、照れてないで早くお風呂に入っちゃいなさい」

お母さんがアタシを現実に引き戻してくれた(笑)

アタシ、楽しい中学校生活を送れそう🎶

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以前、中学3年生の時の元カノさんに乗り移って、元カノさんの視点で小説を書かせて頂いたのですが、私の中3時代は、自分で言うのもナンですが、過去唯一のモテ期でした(*ノωノ)

今回、スピンオフ小説として、また過去唯一のモテ期にすがり、その後の残酷な連続失恋記録を忘れたくて(苦笑)、卒業式でただ一人、私の学ランのボタンがほしいと照れながら来てくれた、2学年年下のFさんの思い出を書いてみたいと思います。

Fさんについては卒業式後に吹奏楽部の後輩や、親経由で聞いた話などをまとめると、どうやら私が初恋相手だったようですが、残念ながら私が夏休み直前に彼女が出来たことで、告白を諦めつつも、でも忘れられない存在だった、しかし最後に衝撃の結末が!

このようなことをスピンオフ小説として、書いていきます。

また3部作になるか、後編もう一本で済むか分かりませんが、よければ読んでやって下さい(〃´∪`〃)ゞ

サポートして頂けるなんて、心からお礼申し上げます。ご支援頂けた分は、世の中のために使わせて頂きます。