「自分に合う仕事」って何だろう?迷ったときこそ、仕事をめぐる旅へ

「今の仕事を辞めたい」「転職したい」と思っていても、なかなか一歩が踏み出せない。求人情報とにらめっこしても、やりたい仕事が見つからない。そんな方も多いのではないでしょうか。

そんなときは一度立ち止まり、改めて仕事と向き合う時間を設けてみるのもいいかもしれません。給料、休暇、福利厚生…と求人欄の「条件」に目を奪われてしまいがちですが、少し視点を変えて仕事と向き合うと、思ってもみなかった仕事や働き方に出会えるかもしれません。

固定概念を外し、さまざまな仕事の可能性を探る

私は求人に関するライティングの仕事をしており、これまで板金加工のものづくりから、林業、IT、建築士などさまざまな職種の人にインタビューをしてきました。

特に印象深かったのが、林業の仕事。以前は家業や地域に住む人たちが従事していた業界ですが、近年は移住者や20代から30代の若い方が林業に携わることも増えています。中にはコロナをきっかけに自分の仕事を見直し、林業家に転身したという女性も。都会で昼夜逆転の仕事に追われるよりも、大好きな自然に携われる仕事につきたいと、転職を決意したそう。

実際に話を聞くまでは「林業」というと、太陽の下、雨の中、自然を相手にする大変な仕事。力仕事も多く、女性にはとても厳しい仕事だと、「とにかく大変だ」というイメージばかりが先行していました。でもそれは、あくまで室内の仕事しかしたことがない私の目線でしかありませんでした。

休憩中には、切り倒した木々をクッションにして昼寝をしたり、伐採した木を使って木製のスプーンを作ったり。「もちろん大変なこともたくさんあるけど、自分の求める暮らしと仕事がマッチしていることが、私にとって重要なんです」と、その方は教えてくれました。

最近は製造業に従事する女性も増えています。板金加工業でCADオペレーターとして働く女性は、もとは大学で心理学を学び、カウンセラーとして働いていたそう。しかし就職先が閉鎖されることになり、ものづくりの世界へ。「自分には細かな作業をすることが向いている」と自分の特性を鑑みた上での転職だったそう。

一般的な職業へのイメージや、職業欄の言葉だけでは、どんな仕事なのか知ることができていないかもしれません。ですから、一度自分が持つ先入観を外して、どのような仕事が世の中にあるのか、そしてそれはどのようなものなのかを見てみる。そうした中でふと湧いてきた好奇心が、あなたを新しい道へと導いてくれることもあるかもしれません。

自分の可能性を広げる場と出会う

自分ひとりで求人情報とにらめっこしていると、つい自分を過小評価してしまい、可能性を閉ざしてしまうことも。実は世の中には、働くことをサポートしてくれるユニークなサービスがたくさんあります。

大阪府にあるNPO法人「HELLOlife」は、「働くこと」で人生を豊かにできる人がひとりでも多くうまれることを目指し、さまざまなプロジェクトを実施しています。HELLOlifeが運営する求人サイトで、私も福祉施設のスタッフ、メンズアパレルのECサイトのデザイナーなど様々な職種の求人記事を書かせていただいています。

HELLOlifeの支援の仕方は、本当に多種多様。結婚や子育て、病気など女性のライフスタイルに合わせたキャリアやお金に向き合うプログラム「ソナエルキャリア」や、就職氷河期世代の就職、定着、住宅の支援までをサポートする「チャン巣」など、企業や地方自治体とともに就労に関する支援を多角的にサポートしています。

私も以前、HELLOlifeが携わるイベント「言葉で遊ぶと自分らしさが見えてくる! 「beの肩書きワークショップ」に参加したことがあります。自分の過去の経験を振り返ってみたり、好きなことやしたいことを書き出すことで、自分だけの肩書きを見つけるという内容でした。

面白かったのは、フィードバックの時間。3人1組ほどになり、テーマに沿って自分の仕事や生活にまつわるエピソードを話し、聞いている人はその人がどんな人か感じたことを言葉にしてプレゼントするというもの。初めて会った人から自分の印象を言葉にしてもらうことで、新たな自分を発見することができる機会となりました。

自分の好きなこと、したいことを掘り下げることで、履歴書の上だけでは表現できない自分を見つける。自分の魅力を再発見することで、仕事を探すヒントにつながったり、面接などの場で自分をアプローチできる要素を見つけることができるかもしれません。

兵庫県神戸市にある「おかゆホテル」は、休職中・離職中など、人生の岐路に迷った人のための場を提供しています。人生の転換期を迎えた方がゆっくりと休み、自分と向き合い悩み、次の方向性を決めるために滞在するホテル。現在準備中のようですが、離職・休職している人をはじめ、人生を立ち止まって考えたい人同士で対話をする「おかゆのつどい」などのイベントを開催しているそうです。

次の人生のステップに悩んでいる時に、小さく一歩踏み出す場を提供しているのが、一般社団法人NIMO ALCAMO が取り組む「しごとの間借りプロジェクト」。店を間借りし、数人で一緒に運営に取り組むことで、自分のやりたいことを小さく試すことができたり、店の運営を通じてさまざまな人と触れ合うことで、次のステップに踏み出すきっかけをつくっています。

離職をするとすぐに「次の仕事を探さなくては」と焦る気持ちになります。けれど、そこでもう一度自分と向き合ってみたり、他者とコミュニケーションをとることで自分では見えていなかった気づきをもらい、少し立ち止まる時間を設けてみるのも良いのではないでしょうか。

気になる仕事をリサーチしてみよう

今回私がご紹介した仕事やプロジェクトはほんの一部。日本全国を見渡せば、もっと多種多様な仕事や「働くこと」に関する取り組みがあります。まずは、仕事をめぐる旅へ出かけるような気持ちで、仕事や働き方についてリサーチしてみてはいかがでしょうか。

三重県内にも、就職氷河期世代を対象に、さまざまな状況やニーズに合わせた就職活動に役立つ情報を得られる「マイチャレ三重」や、自己分析セミナーでどんな仕事が自分に合うのか知ることができたり、応募書類の書き方を学べる「ハローワーク」があります。

まずは可能性を閉じずに、身近にある情報へと手を伸ばしてみてください。これまでとは違う視点や気づきを得ることで、あなたにぴったりと合う仕事と出会えるかもしれません。

文・三上由香利(OTONAMIE)


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