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翠川蚊が選ぶ2022年の映画ベスト10
実はわたしは映画が好きなので、今年公開の映画ベスト10を考えてみました。川柳とはあんまり関係ありません。あしからず。
10位 『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』
監督: ウェス・アンダーソン
偶然性を丹念に排除していくと、映画はカラクリ装置に接近するんですね、という。可愛さに騙されそうになるけれど(そして積極的に騙されるという見方ももちろんあるんだけれど
と、ジェロームは言った(川柳10句)
いちおう替えのテロルも持って
猫足の椅子のなかでも逆張り派
クロワッサンは降板を言いわたされ
蝟集するポストのためのセレナーデ
頽れた帝国の背を撫でてやる
まちがえて猫が孕んだ二面鏡
「月育ちなの そ 感情が足りないの」
「剥製にしておいてその言い草?」
どしゃぶりのミルクのなかで乗りこなす
蝶 君は頻りに低温調理する
と、ジェロームは言った / 翠川蚊
【一首評】まみの髪、金髪なのは、みとめます。ウサギ抱いてるのは、みとめます。/ 穂村弘
※はじめて一首評をしてみました。はじめてなので(せっかくなので)いちばん好きな歌集から選びました。
穂村弘の『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』について、いまさら何を言えるというのだろう。
これら代表歌に関しては、すでに幾度となく引用され語り尽くされているし、私がそれに何か新しい読みをつけ加えられるとも思えない。
そこで本稿では、彼の(キッチュでかわいくてこわくてかっこいい)歌集『手紙魔
erehwon(川柳10句)
ホワイトノイズ 少しだけ長く海を見た
都市光が照り返される巨像の背
荒廃の什器にふれる隙間風
無軌道なテーマパークの2周年
円のかたち伝わらなくてユートピア
無限小のショッピングモールを仮定して
これを最後に尖塔を摘む
すさまじきクイックメニューの蛸の照り
桟橋に横たわる白き白きもの
ダリのごくつるつるとした油画だった
erehwon / 翠川蚊
misunder/standing(川柳11句)
うつくしい誤解がアジアを軽くする
処刑場ははるか下流のバースデイ
軽薄でいいのにたとえば終末や
皮膚科の待合室に軍事演習
一人称決めた日からもうだめだった
登校日 作られたての陰謀論
でもゴジラは打ち切るすべを知らなくて
不謹慎な夢を見て舌足らずなビーチ
しくみがそりゃっと走って行った
ゆるぎなく/ゆるぎなくなく立っている
pot-au-feu 完全体になれたかな
misun
誰も気にしない国(川柳10句)
感覚が先にあって、それから、螺旋状の犬
敗戦がコーヒーカップを廻している
八月の電気羊の膨張と
ビニールの、カバのショッキン' ピンク色
書道家はそっと右傾化して逝った
屠殺場のささやかなマライアのクリスマス
恋愛論 警察来るからしまってよ
精肉店でホッとしている私の身体
現像 ゆっっっっくり進みゅ自己嫌悪ぅ♡
はじめます まず 鯨のことだけ考えて
誰も気にしない国 / 翠川