実はわたしは映画が好きなので、今年公開の映画ベスト10を考えてみました。川柳とはあんまり関係ありません。あしからず。 10位 『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』 監督: ウェス・アンダーソン 偶然性を丹念に排除していくと、映画はカラクリ装置に接近するんですね、という。可愛さに騙されそうになるけれど（そして積極的に騙されるという見方ももちろんあるんだけれど）、むしろ生理的な危険を感じる映画です。 9位 『私ときどきレッサーパンダ』
最も強い水を水鉄砲に つきあたりのあたりで孵化をくり返す 神さまが新たに贈る『光 2』 寝耳が水平飛行に移る ゼリーとしてどうすることもできないな 赤本はまず赤紙に前ならえ ひっぱると霊園がはがれるしくみ 画面の奥の扉の奥の森の奥 号砲ののち散ってゆく脳機能 すううっと翼かすめて破水する ご利用の一環として身を寄せる 仮象すぎるお前のためにフラダンス とろんとにあるとききますとろろんと ［原注※］ビデオデッキのぬくもり。 では円になってくださいちく
マダガスカル句会、翠川蚊の全投句です。 題「バイオリン」 バイオリンくべてどこまでバイオリン 生焼けだからこそできるトウループ ヴィオラならきっと食べてくれるよ 題「アトム」 北米版からは削除された光 原子雲 きょ/う/はめ/がねが/くも/るひだ ・ ・ （まず点と点をゆっくり遠ざけて） 題「カレンダー」 海と同時に割れるアザラシ ラ・バンバを遠因として墓じまい 魚類感覚ぐちょぐちょになる 題「オムライスみんなこわくはないのかな
投句作品を放出します！ 1．星月夜 ここ 見てて ロバが立てなくなるシーン 満天の木馬をひとつずつゆらす 月光はうその裏技だった ぱり んぷ せすと （ほし を ありがと） （自分用）1:02 星月夜 2．エノケンの笑ひにつゞく暗い明日／鶴彬 もういいよのもで黙とうがくる バタフライ・オピニオンまで聞きにゆく ひよこ部分をほぐしつづける 地下牢をつけ合わせたらできあがり ヴォーカルが猫年齢を受け入れる 3．オーストラリアのアーティスト、パトリシ
これは十七音もある黙字です 原曲を思い出しつつカムアウト 経たいまもマヨビームずっとマヨビーム ねあんでるたーるの果てのねるねるね アンメルツヨコ横軌道ユモレスク ウサギなら夢のつけねにいるじゃない ひよこゆえトリッチ・トラッチ・ポルカめく 旧ドイツ／斜めうえから愛猫家 真夜中のテスト・パタン ぱたん、ぱたん リビングにじっと佇むヨタグラム ヨタグラム／翠川蚊
目一杯おそくして空いっぱいのバブルガム 爆発のすずしい虹に撒かれるだろう 杏仁豆腐に性感帯がなくてどうする 行きずりの未来派に攣るおまる ぶぼぽぼばぷぼばぷばぱぷ（敬称略※） 水銀に溺れる舌が/まの/び//す///る 網状Girl（, you really got me now） ひとりだけエポキシ樹脂に受粉して 贖罪の続きを再生しますか？ bubblegum-9 / 翠川蚊
*******っ！ *******っ！ ※センシティブな内容が含まれています 暴力がときどき聞こえてくる花屋 啼いている鸚鵡は穴ではないか 隕石のせいなのに僕の席がない わんぱくな生態系だピザでも食え 父の手をすごく簒奪してるもの オーギュスト、妖魔を漉すのはやめなさい unsynchronizedlight 道化論 夢のそのあたりが濃くてばちあたり 脱兎を追うサーチライトのオーバーヒート escalated / 翠川蚊
あの、 どっちが非常線のなかですか ベランダに累乗で増えてゆくうさぎ ぼく 燐光アシカ （嫌なら見ないでね） 言えないな水中メガネだったこと beef or fish それとも、海をよごします？ 天蓋がないなら出撃しないから えらいねえ鰺にもやさしくするなんて 創世をしちゃえば、あとは ねぇ、どっちが非常線のなかですか、って あなたに聞いてるんですけど 非常線 / 翠川蚊
いちおう替えのテロルも持って 猫足の椅子のなかでも逆張り派 クロワッサンは降板を言いわたされ 蝟集するポストのためのセレナーデ 頽れた帝国の背を撫でてやる まちがえて猫が孕んだ二面鏡 「月育ちなの そ 感情が足りないの」 「剥製にしておいてその言い草？」 どしゃぶりのミルクのなかで乗りこなす 蝶 君は頻りに低温調理する と、ジェロームは言った / 翠川蚊
※はじめて一首評をしてみました。はじめてなので（せっかくなので）いちばん好きな歌集から選びました。 穂村弘の『手紙魔まみ、夏の引越し（ウサギ連れ）』について、いまさら何を言えるというのだろう。 これら代表歌に関しては、すでに幾度となく引用され語り尽くされているし、私がそれに何か新しい読みをつけ加えられるとも思えない。 そこで本稿では、彼の（キッチュでかわいくてこわくてかっこいい）歌集『手紙魔まみ、夏の引越し（ウサギ連れ）』から、比較的語られることの少ない作品を掲出歌に選
ホワイトノイズ 少しだけ長く海を見た 都市光が照り返される巨像の背 荒廃の什器にふれる隙間風 無軌道なテーマパークの2周年 円のかたち伝わらなくてユートピア 無限小のショッピングモールを仮定して これを最後に尖塔を摘む すさまじきクイックメニューの蛸の照り 桟橋に横たわる白き白きもの ダリのごくつるつるとした油画だった erehwon / 翠川蚊
うつくしい誤解がアジアを軽くする 処刑場ははるか下流のバースデイ 軽薄でいいのにたとえば終末や 皮膚科の待合室に軍事演習 一人称決めた日からもうだめだった 登校日 作られたての陰謀論 でもゴジラは打ち切るすべを知らなくて 不謹慎な夢を見て舌足らずなビーチ しくみがそりゃっと走って行った ゆるぎなく/ゆるぎなくなく立っている pot-au-feu 完全体になれたかな misunder/standing / 翠川蚊
感覚が先にあって、それから、螺旋状の犬 敗戦がコーヒーカップを廻している 八月の電気羊の膨張と ビニールの、カバのショッキン' ピンク色 書道家はそっと右傾化して逝った 屠殺場のささやかなマライアのクリスマス 恋愛論 警察来るからしまってよ 精肉店でホッとしている私の身体 現像 ゆっっっっくり進みゅ自己嫌悪ぅ♡ はじめます まず 鯨のことだけ考えて 誰も気にしない国 / 翠川蚊
