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#創作

詩 日、晴る

詩 日、晴る

梢でゆれる
目覚めたばかりの若葉

巣作りの場所を決める前の
いっときを遊ぶように
近くをいったりきたの雲雀が
それをつつく

遠く離れた水のせせらぎ
匂いを絡めた風の道
本当に
うららかとは
そこに居る者のこころが見聞きし
映り込んだ絵図に相違なく

春の雲雀

やがて
子のひとり立ちを見送るのは

日、晴る時



ひばりは雲雀と書きますが、「ひばり」の語源は「日晴る」との事。
良く晴れた空

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詩 花の吹雪く下で

詩 花の吹雪く下で

桜の枝先につくほどけた花びらに
去年の花を思い出す
風の揺らぎ
いくらか水を含んだ空気の重さ
霞の切れ切れからのぞく空の色
ヒダにしまった傷のいたわり
こうしてそれらを引き連れて
来る年来る年にやってくる
積み重なった去年の花

桜の枝先につくほどけた花びらに
思いもつかない次の年の花

しばし時が止まる

ひとひらふたひら
ほどけゆく桜の木の下で
わたしはいつかの

吹雪く花の中に身を預けた

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詩 雪の足跡

詩 雪の足跡

手の平で受けるでもなく
 ただ甲に触れる雪

さして冷たくもなく 
 気にするでもない雪

わたしの歩みは何処まで来て

何処に向かうとしても

振り返る霞の中の記憶のきれぎれは

やがてひと肌のぬくみに
 溶けてゆく淡雪

いくらか後ろ髪を引かれても

それは雪が残した
 微かな水滴に似て

忘れてゆくとは恐らく

そういう事



ここの雪柳はもう少し先のようです。

しっかり咲いてから花テ

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詩 因果な夜

詩 因果な夜

乾いた空
はだけた心を晒す星々の影
震えて膝を折る少女の嘘を
寝床を追われた夜の鳥が
笑う
おののきは
こわばる石の像

手に入れ損じた安堵は
もとより
拒んだものだと
往生を諦めた言葉が
罰を下す

因果な夜にひれ伏すまで
#詩 #創作

その一葉

その一葉



取り残された一葉が
風に吹かれて身を離す
この時に抗うわけでも
ましてや待つでもなく
ただ落ちる

小川の水面をゆらゆらと
役目を終える葉を抱え
水の流れのその先にあるものは
恐らく次の春

少し眩しい日の光に
手を翳したわたしは
運ばれるままの一葉を

見送った



短歌
#詩 #短歌 #創作

詩 ある言霊の行方

詩 ある言霊の行方

艶やかな黒のしじま
繰り返し地を這う吟詠
沈む事を拒絶した
いくつかの言霊が
枯れ枝の間をすり抜ける 

空を貫く星の影
凍える北辰は
眠らぬ詩人を諌める番人と化し
喉元を貫く

それでも
その意思を持たぬまま
野生と化した言霊を救うのは
緩んだ頬を伝う涙と
白くなってゆく月の姿
我に返った詩人は
途方に暮れて膝を折る

東雲の空
雁がゆく

・・・・・・・・・・・・・・

例えばですが、夜書いた

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詩 違和感

詩 違和感

季節の狭間
早いの遅いのと
挨拶代わりの愚かさに
季節を外れた花は
何を思う

水辺を歩く迷い鳥
枯野を彷徨う山の主
暦通りにはいかぬものを

ふと向けられた
違和の視線に気付いたのか
花は
花は粛々と
下を向いた

蕾をつけながら、綺麗に咲いていました。10月上旬くらいまでとされる芙蓉です。
そして今、我が家の沈丁花の花木に一箇所蕾を発見。
でも、そんな事があるのも自然な事だと思ったりします。

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詩 もみじ

詩 もみじ

「秋の夕陽に照る山もみじ」

夕陽に照り映える山々を
白くか細い髪の背中越しに眺める
目を凝らせどもかすむ頂
峠の景色は何処へ行ったか
歩むほどに
静まるものを目の奥に流して
やがて散る彩りは
路傍に刻まれる時の影
幾分小さくなったその背中を
いたわるように進める歩み
夕陽に照り映える山の木々

「濃いも薄いも数ある中に」

最後のひと葉を
見送るまでは



「紅葉」の一節を二箇所で引用してい

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詩 浮き雲よ遠く遠くへ

詩 浮き雲よ遠く遠くへ

いつのまにか
薄く伸びた雲は
まるで綿菓子の最後のひと巻き
たおやかな風は
熱と匂いのある景色を忘れ去る

わたしの歩く道が途切れるように
なにかと空を見上げる癖は
いつついたのだろうか

色付く前の落葉樹は
移ろいゆくものの躊躇いを
見逃す懐
ならば教えて欲しい
後ろに置いた荷物を
再び背負うか
置き去りにするか
この身はどちらを許すのか

今も耳に残る季節の残響
浮き雲の遠く遠くへ
ひぐらしよ

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散文詩小説 弱き心天空に燃ゆ

散文詩小説 弱き心天空に燃ゆ

note神話部3周年記念祭のための作品です。
今回のお題は選択制。指定された文言を作中に入れるか、指定された写真を見た上で、発想を飛ばした作品を仕上げるかの二択です。
わたしは写真を選択しました。また、作品に写真解釈の正誤は無いとの事です。
写真は創作部分の最後に掲示しますが「廃墟の神殿」を思い、妄想散文詩小説に仕上げました。

◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇

散文詩小説 
弱き心天空に燃ゆ

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詩 nostalgia

詩 nostalgia

ラジオから流れる
古いレコード盤の音はトンネル
燃え上がる事を恐れた熱が
行き場を探す事なく
燻った若い日々

綺麗になりきれない音は
ノイズを許し 
ひとつひとつの足跡は
歩みに迷い
行ったり来たりを繰り返す

気が付けば
早すぎた夕空の月が時間を止めた

トンネルを引き返せば
そこに広がるのは恐らく星空
手の届かない
遠い遠い星空

*な〜んとなく、いつもわたしの気持ちにとって絶妙なタイミング

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詩 遠吠えの獣秋一天に星

詩 遠吠えの獣秋一天に星

遠吠えの獣秋一天に星

顔をあげれば漆黒の緞帳

自ら選びとった孤独に
慰めは要らぬ筈と
澄み渡る夜空を
吹き抜けた一陣の風

迷い巡る人の手にかからぬようにと
古人は物語の神々を宙にあげたのか
赦しを乞う者達を
裁く事すら放棄させた神々の
脈々と流れる終わり無き時間

弱さを語る相手を星と決めた夜
満天の星空に向かって
遠く遠く獣は吠える

◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇

10月の句会に出した破

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詩 押し花

詩 押し花

古くなった名作文学全集の
黄ばみの入った頁をめくる
そこにはさんだ一輪の押し花が
結局季節を見送った
夏に始まり夏に終わらせた
ひとりの少女の純欲は
年月を閉じ込めた古本の匂いのように
か細い糸に絡みつく遠い出来事

花の汁跡が残る紙を外せば
挿絵から立ち上る
アルト・ハイデルベルクの
青臭い約束が胸に沁みる

できあがった押し花を
どうしようと考えていたのか
窓の外
まだ強い影を作る欅が葉を揺ら

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詩 深く沈みて

詩 深く沈みて

苔の上で目を閉じた一羽の鳥に問う
足元で踏み固められた
大地のひと掬いに聞く事が叶うかと

赤さびの土
褐色の土
黒ぼくの土

腐った枯れ葉が混ざり合う
それよりも
遥かに深く深くまで沈み込む
輪廻のうめき
化石と化した地肉
天よりも地を選んだ神々は
いつ
土に還ると決めたのか
それならば何故人間は
天を仰ぐのか

見上げれば
若い木の葉があおくひかる隙間から
無垢な鳴き声が上がり
一羽の小鳥が飛

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