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#恋愛小説

私的生活

私的生活

やってしまった。

恋愛は楽しい。
誰かが、さほど美人でもない私のことを優しくしてくれて、かわいいと甘い言葉をかけてくれて、会いたいと思ってくれて、寒い日も、そうでない日も、温もりが欲しい時に寄り添ってくれる。

別れた後も、会う約束をしているのに、会いたいと思う。寂しくなる。

恋愛は楽しい。
しかし、のめり込むと、自分の時間を失ってしまう。
本を読むこと。映画を見ること。何かを制作すること。

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孤独な夜のココア② その宝物、公開して大丈夫?

孤独な夜のココア② その宝物、公開して大丈夫?

愛の罐詰(かんづめ)主人公『私』は、 高校の図書館司書をしており、越後先生に片思い中。モッサリとし、あだ名はじゃがいも、体がすんぐりと、イマイチパッとしないがなぜか惹かれる。同じ学校に勤めるミキは、負けず嫌いの僻み屋。『私』が越後先生の魅力を口を滑らせると、ミキは越後先生と近づき、結婚してしまう。

友達の好きな人にあえて近づいたり、ちょっかいを出す人って、いつの時代もいるんだ!という衝撃。似たよ

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孤独な夜のココア① 恋が生まれる前がいちばん楽しい説は本当か?

孤独な夜のココア① 恋が生まれる前がいちばん楽しい説は本当か?

孤独な夜のココア 著 田辺聖子

『ジョゼと虎と魚たち』で著者のことを知った。
『ジョゼと〜』に引き続き、こちらも恋愛の短編集。
女性がとある男性を好き、という設定に絞られているが、年上、年下、社内恋愛、幼なじみ、、、と恋愛模様は多種多様。
どの恋も、甘く、ほろ苦く、あたたかい。
解説で、綿矢りさがタイトルに関して

と分析している。
どの物語も、夜、1人で飲むココアのようなじんわりとした温もりを

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ニキの屈辱②  出会ってよかった2人

ニキの屈辱② 出会ってよかった2人

前回の続きです。(ネタバレ含みます)

恋愛は、終わりよければすべてよし、と個人的に思っているが、『良い終わり方』というものはひとつとは限らず、様々な形があるのだ。
『良い終わり方』のひとつとして、《お互いを高め合う出会い》というものがある。
わかりやすい例でいうと、お付き合いし、結婚せずお別れしてしまったが、恋愛関係を築くことで、愛の素晴らしさを知った。とか。

ニキと加賀美は、出会って幸せだっ

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ニキの屈辱 おそらく2人は恋愛中だった

ニキの屈辱 おそらく2人は恋愛中だった

ニキの屈辱 著 山崎ナオコーラ

人気女性写真家・ニキと、そのアシスタントを勤める加賀美との、恋愛ストーリー。
ニキは『女だから〜』など性別を理由にチヤホヤされることを激しく嫌い、傲慢な態度で加賀美を振り回す。一方加賀美は、常にレディーファーストでプライドが低い。男と女。師匠とアシスタント。この格差で2人は大きく揺れ動く。

恋愛において、やってはいけないことは多々あるのだが、そのうちのひとつに、

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ふがいない僕は空を見た③性と温もりは似ているようで違う

ふがいない僕は空を見た③性と温もりは似ているようで違う

前回の続き。
人を好きになるきっかけというのは、本当に様々である。
顔が整っているから惹かれる、とか、優しくしてくれたから、とか、いい車の助手席に乗せてもらった、とか。
里美と斉藤くんは、体の関係から始まったが、心が全く通じ合っていない、とは思えない。
斉藤くんが里美を思って涙したり、突発的に会いに行ったり。
そして、里美も、斉藤くんに惹かれていた。

セックスの際、騎乗位で里美が斉藤くんの体に乗

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ふがいない僕は空を見た② 性欲という名の卵、恋という名の希望

ふがいない僕は空を見た② 性欲という名の卵、恋という名の希望

前回の続きです。

斉藤くんは、性欲から恋を育てたが、別の一編の主人公、七菜は斉藤くんへ、恋心から性欲の芽生えを感じる。
これ、一般的だと思う。
好きな人には触れたくなる。ただ、この触れたい、という性欲は気が付いたら膨れ上がっていることへの葛藤は、正直苦しいのかも。片思いなら、特に。
斉藤くんは七菜への告白を受け入れ、付き合うことになるが、斉藤くんは里美という主婦と体の関係を持っている。2人のセッ

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ふがいない僕は空を見た①恋は性欲、では、愛はどこから来るのか?

ふがいない僕は空を見た①恋は性欲、では、愛はどこから来るのか?

ふがいない僕は空を見た 著 窪美澄

完読後、かなり体力を使った気持ちになった一冊。
壮大なエネルギーを要するのはなぜか。
まず、短編集であるにもかかわらず、一編に起こる出来事が非常に目まぐるしい。そしてもう一つ、性描写のリアルさ。(高校生の分際で!やになっちゃうねー)
私は、多少過激な性描写に免疫はあるのだが(そもそも恋愛小説に性描写はつきものだという考え)この作品はかなり刺激が強い。ワードも直

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