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ふがいない僕は空を見た③性と温もりは似ているようで違う

前回の続き。
人を好きになるきっかけというのは、本当に様々である。
顔が整っているから惹かれる、とか、優しくしてくれたから、とか、いい車の助手席に乗せてもらった、とか。
里美と斉藤くんは、体の関係から始まったが、心が全く通じ合っていない、とは思えない。
斉藤くんが里美を思って涙したり、突発的に会いに行ったり。
そして、里美も、斉藤くんに惹かれていた。

人の体にやさしく触れるということに生まれつきの才能があるとするなら、斉藤くんはもしかしたら天才なのかもしれないと思いました。
世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸 より

セックスの際、騎乗位で里美が斉藤くんの体に乗っかっている時、斉藤くんは里美の腰に手を添え、『冷やしちゃだめなんだ』と言った。
(騎乗位というワードでさえ、打つの1人で恥ずかしくなるくらいにはピュアです。つまり、この作品のレビューは大変苦労が絶えない。それでも残したい、という気持ちを汲み取っていただけると幸いです、、、)
里美の旦那は、優しく甘い言葉をかけてくれるが、里美の心にはいまいち響いていないようだ。
それよりも、斉藤くんの、さりげない気遣いの方が、里美の心を揺さぶっている。
気遣い、というワードは、ビジネス臭がするため、あまり使いたくない。数年前、仕事で気遣いができない、と注意された苦い思い出のせいか。気遣い=温もり と捉えてもらえれば。

私と斉藤くんの赤ちゃんなら、私はもっとやさしく
触れられるかもしれない。
世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸 より

斉藤くんは、里美にとって、不妊治療や姑付き合いなど、辛い日々の癒しだった。
それは、体を重ねることが癒しなのではなく、
斉藤くんの温もりが里美の生きがいになっていた。

この出会いが、まだ高校生の斉藤くんの人生は大きく変わるだろう。というか、変わってしまった。
里美との写真や動画はネットでばら撒かれ、斉藤くんは不登校になってしまう。里美も出会わなければ、こんな目に遭うことはなかった。
里美の人生も変わってしまう。自業自得と言えばそれまでだが、道を外れてしまうと、どんどん健全な人生から離れていく姿は、正直心苦しい。それでも、里美は思うのだ。斉藤くんと過ごした時間を。

ごめんね斉藤くん。私と会ったことがふいに顔に触れる蜘蛛の糸のように、あなたの人生にまとわりつくほのにるかもしれない。
私は、ばかで、でぶで、ぶすで、不妊の変態主婦なのに、今まで付き合ってくれてほんとうにどうもありがとう。
世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸 より

《蜘蛛の糸》とは、ネットに晒された、不倫をしたという事実。そのまとわりつく《蜘蛛の糸》の中で、2人で過ごした時間は永遠に輝く。

里美は、そんな悟りを開いているが、いやいや不倫してるんだよ、斉藤くん学校で大変な目に遭ってるよ(いやー、お互い様だけどね)ってつっこみたい気をグッと堪える。

社会的には孤立してしまった2人だが、強く惹かれ合う2人を見ると、ここまで誰かを愛することってなかなかできないな、、、とちょびっと羨ましくなる。

寂しさを埋め合う関係は憧れない。
互いを本能で求め合う関係の方が、よっぽど微笑ましい。
とは言っても、不倫はよくないです。ただ、不倫の良し悪しを問う話題ではない点、ご了承ください。
性と恋の厄介さを、訴えておりました。


今月、引っ越しを控えており、手続きなどでなかなかnoteに時間がとれず。せっかくの連休なのに、と思いつつ、一人暮らしへの期待が高まる一方です。

今思うのは、絶対最高のお部屋作りをしようってことと、自炊は程よく手を抜こうってことと、ベランダでほろよい飲むとか、CMみたいなことしたいなってことと(目の前は田園風景)家具など揃えるにあたってIKEA行きたくてしゃーないなってこと。(住んでる県にIKEAなんぞ存在しない)

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