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短編小説「ウォシュレット」

短編小説「ウォシュレット」

やばいやばいあかん漏れる。スーツ姿の中年男は開く扉の隙間に体をねじ込むようにして、勢いよく電車を飛び出した。「思えば、この駅には一度も降りたことがなかったか」車掌のアナウンスから聞き馴染みはあるが、ルーティン化した生活の中から捉えれば各駅も急行も変わらない。飲みはいつも会社近辺でやる。ときたま行きつけのママの愛想が尽きるので、そうなったら電車で遠出をする。と言ってもふた駅離れた飲み屋街へ移動するだ

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短編小説「私は嘘をついている」

短編小説「私は嘘をついている」

毎週水曜日の6時間目にある「学級」の時間。ここ1ヶ月はこの時間を使って修学旅行の計画を立てた。行きと帰りのバスで何をするのか、クラスのみんなでレク決めをした。その結果、行きはカラオケ大会、なぞなぞゲーム、絵描きリレー、風船テープ剥がしレースをすることに、帰りは映画をみんなで一本観たあとは自由時間にすることとなった。小学校の敷地に入ってすぐにある駐車場。大きなバスが2台停まっている。今日はランドセル

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短編小説「おっぱい」

短編小説「おっぱい」

わたし思うことがあるんです。女だけがおっぱいを突出させているのは不利ではないかと。不利というとなんだか誰かと勝負をしてるように聞こえるけど、男子と比べて平等じゃないなーって思うんです。おちんちんの大きさはズボンのたるみでいくらでも隠せるじゃないですか。でも女が制服を着たらもう抗いようなく突出してしまうんですよ。ダボダボのスウェットを制服にしてくださいよ。いやそれはちょっとダサいか。叶わないなら男は

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漫才『将棋』

漫才『将棋』

A B はいどうも〜

A おれ将棋好きなんだよ

Bおおそうだっけ

A 最近すごいじゃん、あの人
B うん
A 藤井四段

Bいつの話だよ、藤井八冠ね。藤井竜王とか名人とかなって、最近8冠を達成したんでしょ。

Aあそっか。俺も小さい頃から将棋やってればなーって思ったよね。
B あなに、将棋習ってたりしたの?

Aたしなむ程度に
Bなんやそれ
Aちょっとやってみるか
Bいいね

(三八マイクを

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短編小説「おデブ人狼」

短編小説「おデブ人狼」

「トーナメントを勝ち抜きし5人の大食いファイターの入場です!!」白タンクトップにカラフルな半ズボンを着たマッチョ男の司会が、白熱した会場をさらに盛り上げる。ギャルメイクを施した小柄な女性。力士並みに横幅の広い男性。身長190越え高身長の爽やか男。BIGポテチを食い歩くぽっちゃり女。トータルテンボス藤田と見紛うるアフロ髪の男。それぞれが魅力的な空気を放ち、横並びになった席についた。私は壇上からすぐそ

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短編小説「おでん屋さん」

短編小説「おでん屋さん」

「アツアツな感じでしてくれん?」

酔いが回って呂律がまわらない。

千鳥足でベッドに向かい、背広ジャケットをしわくちゃにして仰向けになった。

スタンドライトの薄灯りに照らされ、赤ら顔がぼんやりと黒に浮かんだ。向かいには行儀良く女性が座っている。

「じゃあ、いただきます。」

ほっほふほふぉ、あっつーい!汁だくだぁ!ジュボボボ出汁が効いてる〜!

下顎を小刻みに揺らし、一滴も残さず頬張

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短編小説「お呪い」①

短編小説「お呪い」①

目を閉じて。

考えるのをやめにして、視界をまっくらにしよう。胸のうちに溜まっている、いろんなものを吐き出すよ。鼻から大きく吸って、空気を取り込む。想像しよう。深々と青く、どこまでも続く海原を見下ろして。まっ白な羽毛のカモメとなり、悠々と羽ばたこう。口臭なんか気にせず、ふーっ!と力強く息を吐くよ。上下の歯の隙間から、つーっと音が出るくらいに。肩の力が抜けてきたね。

もういちど、深呼吸。

鼻から

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